* だって、君たちはお似合いだから。 *












「あー、居た居た!」


隣の教室を覗き込んだ瞬間、
こっちに向かってくるとはち合った。
どこかへ行くところだったかもしれない、
と頭の端で思いながらも、というか思ったからこそ、
居なくなってしまう前に用事を済ませようと自分のお願いをぶつける。

「ごめん、数学の教科書貸して!お願い!」
「あ、うん。わかった」

手を目の前でパンと合わせる私の意気込みが空回りになるくらい
すんなりとは願いを聞き入れてくれた。
普段は、また忘れたのとか、いいけどラクガキしないでよとか、
なんらかのお小言を挟んでくるのが常なのに。

余程急いでる?というか心なしか元気ない?
部活が一緒で三年連続隣のクラスである大親友の変化に気付いて
私はその顔をこっそりと観察する。

するとは周囲をきょろりと見渡して、
「ちょっと」と私を教室に連れ込んで奥に追いやった。

もしかしたらさっき教室を出ようとしていたのは
私と話したかったからかもしれないと気付いた。
の頬が仄かに赤い気がして、
これは何か大きな報告があるかもしれないと私は身構える。

例えば、何度聞いても「気になる人なんていない」と
ずっと言い張ってたについに好きな人ができちゃった、とか。

、私さ……彼氏ができた」

は。
は?
は!?!?!?!?

「えっ!!ウソ!おめでとう!!!?!」

突然に報告に驚いたけど、嬉しいことは嬉しくって、
だけどハテナマークも浮かばせながら
結局嬉しくってパチパチと手を叩いて祝福する私。
はクラスメイトが近くにいないか気にする素振りを見せて
誰も居ないことを確認して「ありがとう」と顔を更に赤くして呟いた。

嬉しい。
めでたい。
これは本当。
だけど、ツッコみたいことが多すぎる!

「だ、誰!?」
「……も良く知ってる人」

実は言われる前から、目星は付いていた。
確信に変わった。
なんとなく名前は出さないべきかと思って
「3年2組の人!?」と聞いたら
はコクンと頷いた。

「やった〜!!!」
「えっ、やったーって何!?」

突然バンザイして喜ぶ私と狼狽する私。

「前二人で話してるの見てお似合いだなーって思ったの。
 ほら、付き合っちゃえばいいのにーって言ったことあったじゃん」
「あったね…」
「でも、全然興味ないみたいなこと言うから
 あんまりプッシュし過ぎるのも悪いなーと思って。
 でも心の中では勝手にこっそり応援し続けてたんだー」
「そうなんだ……ありがと」

3年2組所属のその人物は、委員会が一緒で話すことがあって仲良くなって、
いじったら面白いからちょっといじったりとかして、
今でも度々喋ったりする関係。

私から見たら恋愛対象の守備範囲外なんだけど、
一度その人物と自分の大親友が一緒に話している姿を見かけて、
おやおやお似合いじゃないか、と思ったんだ。

話してても楽しそうに見えて、私もはっきりオススメしたことあったのに。
「大石なんてどう?この前楽しそうに話してたじゃん」って。
だけどいくら聞いてもは「気になる人なんていない」という返事しかこなくて…。

「てかそうだよ、気になる人とかいないって言ってたじゃん。
 なのに私より先越して彼氏できてるの納得いかないんだが!?」
「ごめん〜」
「えでもつまり……大石から告白してきたってこと?」
「そう」

どうやって、と聞こうと思ったけど、
あの大石が、告白…?
人と付き合う…?
大石、好きな人とかできるんだ…。
その相手がだったんだ…。
もしかして「」とか呼んでるの…?
も「秀一郎」って呼んでるのかな…?

てかシュウイチロウ!?!?
フルネームでは聞いたことあるけど
下の名前だけだとなんか聞き慣れなさすぎてじわる!

「待って!!!色々面白すぎる!!
 もっと根掘り葉掘り聞きたいから屋上行こ!」
「えーもう時間ないよ」
「じゃあ昼休み!絶対ね!絶対だよ!!!」

チャイムが鳴るのに気づいて私はの方向を指差しながら後ろ向きに歩き去る。
廊下に出て、その姿が見えやしないかと首を伸ばしたけど3年2組は遠かった。

「(アイツも男だったか…)」

私はアイツを男としては見えないけれど。
、幸せそうだったな。
にとっては良い彼氏なんだろうな。

ふわりと、穏やかな笑顔を思い浮かべる。

あの大石がね。
へーぇ。
……。

「(……なんか)」

胸がぽっかり空いてしまった、気がして、
これからが一緒に遊んでくれる頻度減っちゃったりするかなーと
寂しい理由を一つ見つけて胸を納得させた。
























大好きな会社同僚が結婚するというので思わず!
私は別のその相手方に恋心は一切ないんですけど
小説に仕立てたくて無理矢理夢変換しました許して笑

まあ別に主人公ちゃんも大石のことが好きだったかもなんて
今更自覚しちゃったりなんてしてないですしおすし(苦しい)


2022/07/08-9