* bubble pubble *












手一杯のもこもこな泡を顔の前に持ち上げ、フッと吹く。
白い塊に隠されていたその後ろから秀一郎の顔が覗く。
思い切り眉をしかめているその姿に問い掛ける。

「何、怒ってる?」
「怒ってないよ」
「そのわりに眉間にしわ寄ってるけど」

そう言ってやると秀一郎は鼻の頭を親指で拭ってみせて、
「泡が目に入りそうになっただけだ」と返ってきた。
表情を観察する限り、どうやらそれは嘘ではなさそう。

「怒らせるような心当たりがあるのか?」
「いや……ないな」
「だろ」

肘を縁に掛けたまま、
秀一郎の手先はぽちゃりと湯船に浸かった。
泡で覆われて見えない水面下からその手を取る。
ゆらゆらとその手を揺すれば、
指先同士が絡め取られて、恋人繋ぎ。

くい、と手に力を込めて引かれるがまま、
私は秀一郎の側に寄る。
右腕の腕枕は硬いから好きじゃないってば、
と以前伝えたことを憶えていてなのか
私は左腕の内側に抱え込まれた。

こてんと頭を倒して、ちょっとだけ文句。

「どちらかというと怒りたいのは私」
「え?」
「休憩しようって言ったじゃん」
「ああ」
「…こんな疲れる休憩ある?」
「ハハハ」

ハハハじゃないよ。
大きく溜め息。

「本当に休憩したかった?」
「…いや別に疲れてなかったし」
「じゃあいいじゃないか」

秀一郎が右手に掬い上げた泡の大きな塊を
フーッと思い切り吹き飛ばしてやる。
ゆらゆらとライトが泡の色を染め変えていくのを
二人でぼーっと見つめて時が過ぎていく。
ずっとこのままで居てもいい、けど。

「……そろそろ、出る?」
「ああ」

ああと返してきながらも、私の肩を抱いたまま動かない秀一郎。
その手がするりと腕を滑って、
私の腰を撫でていく。

「出ないの?」
「出るよ」

口では出る出ると言いながら、
泡より上ではいつも通りの笑顔を見せながら、
水中でアレコレ色々なことが起きている。

「卑怯だよ」
「何が?」

見えないところでは、何してもいいと思ってくれちゃって。

だけど抵抗らしい抵抗をしない私も同罪だ、
と思いながら「何でもない」と返した。

そうして再び私たちは虹色の泡に溺れていくのだった。
























ポッピングバブルガチャ祈願その2。
直接的な表現をせずにえちを目指しました笑

タイトルにはなんの意味もない。音だけ(笑)


2022/06/29-30