* i'M Always missing you! *












「秀くんごめん、来週は一緒に帰れないや」


秀くんこと大石秀一郎くんが付き合い初めて13週間目。
テニス部がお休みの毎週木曜日は一緒に帰ることが私たちの約束事になっていた。
だから、「何回目の放課後デート」と数えることは
「付き合い初めて何週目」と数えることとイコールになってた。

その均衡が、今日、初めて崩れる。


「そうなのか。全然気にしなくていいよ」


秀くんは爽やかな笑顔でそう返してくれた。
もう少し不満そうにしてくれればいいのにな、って
逆に私が寂しくなってしまうくらい。

「何か用事があるのか?」
「うん。クラスの子たちと遊びに行こうって。
 その日しかみんなの予定が合わなくって……」


別に、その子たちの方が秀くんより大事というわけではないし
私も出来れば秀くんと一緒に帰りたかったし
二人の時間は何よりも大切なんだけど……
だけどそのメンバーでの集まりはたまにしかないから
他の子たちがその日しかダメっていうなら私も断るわけにはいかず。

申し訳ないな、もそうだけど、残念だな、という思いを抱えながら、
来週の木曜日は秀くんとの放課後デートが出来ないことが正式に決まった。






  **






そして迎えた翌週の木曜日。

いつもだったら
席に座って時間を潰して
3年2組のホームルームが終わるのを待って
廊下から声が聞こえたら
ケータイ閉じて
机の横に掛けた机を掴んで
教室を飛び出して
秀くんと一緒に学校からの帰り道を歩く、
ところだけど。

今日の私はホームルームを終えると
クラスメイトたちと一緒に駅に向かって待ちに繰り出して
カラオケのフリータイムで盛り上がる。

歌うのは楽しくって、
喋るのも楽しくって、
頭空っぽにして笑いあえる友達大好きだな、って思った。

楽しかった。

楽しかった。

楽しかったなぁ……。


その思いには何一つ嘘はなくて、ただ、

帰り道、一人になったら

ぽつりと。



「(秀くんは、今日の放課後をどうやって過ごしたんだろう)」



私にとっては、今日は付き合ってから初めて
秀くんに会えなかった木曜日。
秀くんにとっても、今日は付き合ってから初めて
私が目の前に現れなかった木曜日だったはず。

寂しいとか、思うことあったかな?
寧ろせいせいしたかな?
それともなんとも思わなかったかな?


私が秀くんと会えなくとも一日を楽しく過ごしたように、
秀くんだって私と会わなかったことは特筆するようなことはなくて
楽しく過ごして一日を終えようとしている、のかな。

「(そう考えると、なんか、寂しいな)」

今日は会えないと言い出したのは私で、
友達と過ごした時間は楽しくって、
自分で選んだ選択肢に
何一つの後悔はない、はずだけど。

はずだけど。

「(後悔していないことと、寂しくないことは、並列ではない)」

自分から予定を決めておいて、我ながら自分勝手だなって思うけど。
でも、いいよねこれくらいワガママでも?


「(秀くんへの気持ちは、友達との楽しいとは、次元が別なんだよ)」


ねえ今日は一緒の時間は過ごせなかったけど。
それは私が選んだことだったけど。

でも私は、寂しかったよ?

それだけは伝えてもいいよね。
ちょっとだけでも、君も同じように感じてくれてたら幸せだな。
そう思って電話を掴んでダイヤルを回した。
























あがいたところで今日は終電も通り過ぎてもうマ!は見られないけれど
見たかったけど見られなかった想いを昇華させてあげたくて…(笑)


2021/11/26