* それもまた…青春の1ページ。 *












「どうしたの、アレ」

目線を斜め後ろの席に当てたまま隣の席の森に話し掛ける。
森は「ああ…そっとしといてあげて」と言って苦笑いをするばかりだった。

夏休み明け、新学期初日。
さぞかしテンション高く現れると思ったのに自席に着くなり机に突っ伏してしまった。
あまりにらしくない。
視線の先でその人物…神尾アキラは首を横に振って更に深く腕を顔に埋めた。
お陰で私は話し掛けるチャンスを逃してしまった。

聞けばここ数日あの様子なのだと言う。
理由を問うと「それは知らない」と答えた森の目線は慈悲に溢れていて
本当はわかっているんじゃないのかな、と勝手に思った。

「あ、そういえばどうだったの全国大会!?」
「ああ、最終的にベスト8だったよ」
「えーすごいじゃん!初出場でしょ?」

ありがとう、と森は笑ったけど、満面の笑みではなくて、
優勝できなかったことへの悔しさもあるのかな、と気付いた。

「ごめん、優勝じゃないのにおめでとうって失礼かな」
「そんなことない!すごく嬉しいよ!」

森は手を振って否定して、笑顔を見せてきた。

「去年の今頃はテニスすらできてなくて絶望してたのになって考えてたんだ」
「あー、そういえばそうだったっけ」

去年、テニス部は何かと問題を起こしていたことは憶えている。
詳しいことは憶えてないけど、
喧嘩か何かが原因で大会出場停止になったことは校内でも話題になった。
同級生たちが毎日のように怪我をしていたことも。

そこから一年しか経ってないのに全国ベスト8って、すごいことだよなぁ。
色々思うところがあるのも頷ける。

「神尾も、それで思いに耽ってる感じ?」

再び私は神尾の姿を見た。
顔は持ち上げていたけれど明らかに覇気はなく、
斜めに傾けた頭をがしがしと掻いていた。
森はそちらを見ないまま苦笑いをした。

「いや……アレは、たぶん違う」
「ふーん?」

結局、森との会話の中では神尾が落ち込んでいる理由はわからなかった。

夏休みどんなだった?とか、
宿題ちゃんとやった?とか、
全国大会おつかれさま!とか、
話し掛けられる理由はいくつもあるのに。

初めて見る好きな人のそんな姿に、
結局「ベスト8おめでとう」すら声を掛けることができないまま
例年より涼しめの新学期が幕を開けた。
























リョーマ!のEDの例のアレを見て書かずにはいられなかった。
マ!のEDを見たら書かずには居られなかった神尾夢(ただし森としか話さない)


2021/09/07