* 待つときは一人だけど *












「あれ?」


待ち合わせ場所についた私は、
あたりを一通り見回して首を傾げる。
思わずひとり言も声に出た。

あれ。
しゅうがいない。

場所間違えた?
時間間違えた?

メールの履歴を確認。
現在時刻と照らし合わせる。
うん。間違ってない。

ていうか、まだ待ち合わせ時刻の5分前だ。
いつも、待ち合わせ場所に行けば
相手が待ってるのが当たり前すぎて。

この時間になってしゅうがいないのは変だけど、
とりあえず待ち合わせ時刻になるまでくらいは待ってみて…。


(……あ)


ケータイが震えた。

メール。

……。


『おはよう、。そしてごめん!
 人身事故に遭ってしまって、今まで電車が地下から動かなかったんだ。
 今動き出して、あと20分くらいで着くと思う。
 本当にごめんな。
 着いたら連絡するから、暖かい場所で待ってて。』


地下で人身事故か、なるほど納得。
それくらいしかしゅうが連絡なしで遅れる理由が思い当たらない。


あと20分…。

それくらい待てるよ、
相変わらずしゅうは心配性。
確かに気温は低いけど、今日は風もないし日差しは温かいし。


ケータイの時計を見たら、今丁度待ち合わせ時刻になったとこ。

20分……。


辺りの景色を見回して…
流れゆく人を見て…
そういえば返事してないと思って
『大丈夫だよ。慌てないできてね!』とだけ返して,
時計を見たら10分も経ってない。

20分かぁ。
それくらいだけでも、
しゅうとの待ち合わせで待ったことがないことに気付く。


この前某テーマパークに行ったときは、こんなのあっという間だったのに。

夢の国の魔法かな?
30分くらい誤差に感じて、
1時間だってあっという間、
2時間を超えてやっと待ってる実感が沸いてくるくらい。

なのに。


なんだろう?
なんでかな?
そのときと何が違う?

わくわくして。
あったかくって。

……そっか、今は、一人だからだ。
しゅうがいないからだ。


しゅうは、いつもどうやってこの時間を過ごしているのだろう?
後学のために、あとで聞いてみようかな?


10分後、手を振りながら走ってしゅうがやってきて、
「あったかいとこ入れって言ったのに」なんて言いながら私の手を握って。

ああ…たまには、待つ側も悪くないな。
どれくらい早く来たら、あなたに勝てるのだろう?って。


待つのは退屈かもしれないけれど、
いつ来るかなってわくわくして。
走ってくる姿で心があったかくなって。

そっか。
待つときは一人だけど、
待ち合わせは絶対にひとりじゃないんだ。


いつも待たせちゃってごめんね。
だけど申し訳なさだけじゃないのかな。
感謝の気持ちは持ち続けていようね。



そして私は、
次は何時に待ち合わせよう、って
胸を躍らせるんだ。

あとになって私は、
その電車が1時間以上止まってたことを知って、
しゅうより待ち合わせ場所に先に着くのが
どれだけ至難の業なのかを思い知るのだけれど。
























2016年大石誕には9割9分仕上がってた状態から放置されてたw
そこはなんとか仕上げて上げておいてくれよ、
と思って調べたらその年は初めて4/31を発動した年か…忙しかったんやなw


2014/01/03-2021/08/20