* いつも貴方が見ている景色 *












私はぶっちゃけMだ。
SかMかと聞かれたら比べるまでもなくMだ。

虐げられないと興奮できないほどのドMではないけど、
軽い束縛とか、言葉攻めとか、嫌いじゃない。寧ろ好き。
だから私は、こちらを支配してくるような
はじめの女王様な態度は結構ツボだったりする。のだけれど。
最近、気になることがある。


「今日は目隠しでもしてみますか?んふっ」


はじめ、実はそれ自分がやられたいんじゃね、説ー!!!(ドンパフ)

私は攻められると興奮するし、
そんな私を見てはじめも興奮してくれてる。嬉しい。
だけど本当にそれでいいの?
はじめ、本当はもっととんでもないところに性癖があったりしない…?って。

「(今日は隙あらば私が攻めに回ってやる…)」

無意識に自分がやられて嬉しいことを人にやっている可能性はある。
私はもっと、はじめの色んな面を知っていきたい。

しかしまずは自分が攻め入られているわけで。

「(見ないのと見えないのは、違うな)」

どちらにせよ感じてくると私は目を無意識に瞑ってしまうから、
目隠しなんてしたってそんなに変わらないんじゃ…と思ってたんだけど。

ふとした拍子に目を開いても真っ暗。
はじめがどんな体勢でどんな表情で、
果たして本当にそこにいるのかさえわからなくなる。

「いつもに増して感じているんじゃないですか?んふっ」
「やめ…っ」
「ほら、こちらも凄い音ですよ」

下がかき回される音がこれでもかというほどに卑猥に響いた。
視覚が奪われているせいで聴覚が鋭くなっているとでもいうのか、
それともはじめの言うとおり目隠しをされていつも以上に感じてしまっているのか。

「はじ……んっ!」

名前を呼ぼうとしたのに口を塞がれた。
すぐにそれは離されて、「んー、いい眺めです」とご満悦な声が聞こえた。
私からは何も見えていないのに。

確かにこのプレイは刺激的で、このまま満足させられてしまいそうだ。
はじめにはいつもそうやって丸め込まれている。

でもたまには、私にもそっち側にならせてよ。

「少々お待ちください」

そう告げて、カサッという音…
これはたぶんゴムの準備をしているなとわかったけど。
その一瞬の隙をついて、私は目隠しを解いた。
そしてそれではじめの目を塞いだ。

「ちょっと!」
「あーダメダメほどかないで」

持ち上がったはじめの手を掴んで下ろさせた。
「どういうつもりですか!」と声が聞こえてくるけど無視。
私はベッドを一瞬離れてタンスに向かう。

確かここに前に使ったやつが…あった。

「はい、逮捕」
「!!」

おもちゃの手錠。
よし、これで抵抗もできないし目隠しが解かれることもない。
いつの間にこれを準備していたときは驚いたし、
持ち出してきたときのはじめはそれはそれは悪い顔をしていたけど
まさか自分が使う側になるときのことは予想していなかったみたいね。

「こんなことをして許されると思って…!」
「ふーん。そう言いながら、ココ凄いけど」
「!!」 

ガチガチに上を向いてる棒の先端を人差し指でなぞる。
そんなに強い刺激を与えているわけでもないのに
どんどん溢れてくるつゆを全面に広げていく。

「やめ、なさい…!」
「(って口では言う割に、おとなしいもんだ)」

手錠つけられたまま両手で私に掴みかかることもできる。
足を暴れさせることもできる。
だけどなんだかんだ言いなりだ。

一旦手を離して、様子を観察。
「いい加減にしなさいよ」と言いながら
キョロキョロと顔を左右に振っている。
そんなことをしたって何が見えるわけでもないのに。

ちょっと間を開けて、はじめが油断してそうなタイミングで
パクリと先端を咥えてやった。

「ああっ!」

と、はじめの甲高い声が部屋に響いた。


――お前、そんな良い声で鳴けたのか。


「(とか、言いたい!)」

いや、ホント、はじめのこんな声聞いたの初めてなんだけど!?
こちらからご奉仕しているときとか、行為の終盤とか、
堪えたように溢れる吐息のような声が漏れ聞こえてきたときに
色っぽいなーとは常々思っていたけれど。
こんな嬌声を上げるのは初めてだ。

「(ヤバイ、マジで何かに目覚めそう…)」

いつの間に自分の息も荒いことに気づきながら
竿をしごいて玉を舐めて亀頭を喉奥まで咥え込む。
口の中でうごめくみたいに肉棒が更に力を強くした気がした。
私は夢中で刺激を与え続けた。
その間もはじめの艶のある高い声が聞こえていたのだけれど…。

『ズビッ』

え。

「えっ、ウソっ!?」

はじめの背中を支えて起こさせて目隠しを解くと、
え、え、
めちゃくちゃ泣いてるー!!!嘘でしょ!?
手錠も外してあげたいけど鍵どこだっけ…!

「ごめんね!!そんなにイヤだった!?」

焦って謝ったけど、はじめは顔を俯かせたまま
ふるふると首を左右に振った。

「泣くほどイヤだった…というわけではありません」
「じゃあ、どうして…」
「…………」

そのまま黙り込んでしまった。
じゃあどうしたのか。

自分に置き換えて考えてみる。
私も行為中に泣いてしまうことはままある。
それは気持ちよすぎておかしくなりそうだったり、
嬉しい幸せみたいな感情が膨れすぎて胸が一杯になりすぎちゃったとき。

つまり…?

「(はじめも今、そんな感じだったりする?)」

そうだとしたら、嬉しいけれど。
あくまでこれは私の場合だから必ずしもはじめもそうとは限らないけど…。

「すみません、こんな情けない姿を見せて…」
「情けなくなんかないよ」

はじめのことをぎゅっと抱き締めた。
腕の中に抱え込んで、愛しさが増した気がした。

「はじめのこともっと好きになっちゃった」

そう伝えて顔を覗き込んだら、顔は斜めに逸らされてしまったけど。
でもこれはただの照れ隠しだって、信じていいかな。

「お願い、今日はもうちょっとこのままはじめのこと可愛がらせて?」
「可愛がるって……ちょっと!」

両手の自由が利かないのをいいことに、トンッて上半身を押した。
再び仰向けになったはじめは潤んだ瞳で私を見上げてきた。

別に嫌がってる姿を見たいとかそういうんじゃないんだ。
好きな人が気持ち良くなってる姿を見るのは嬉しい。それだけ。

「(はじめも、普段私を見てそういう気持ちでいてくれてるんだったら嬉しいな)」

それはただの希望的観測かもしれないけど。
でも、あながち外れてもいないんじゃないかなって思いながら
いつもと違う景色を見ながら体を進めた。
























『今夜はNOの日』を書いて、Sっ気ある観月良いなと思ったけど、
どうしても私の中の観月はMだという思いが消しきれなかったw
ドM観月、あまりに可愛い(笑)
仮タイトルは『観月のMはドMのM』でした(最低)
普段ドSっぽいのに本性はドMな観月たまらんじゃん。刺さるー!!(笑)


2021/07/12-22