* Stormy Physical Check *












秀一郎は私より寝るのが早くて起きるのも早い。
医者という職業柄か、もともとの体質か、
結婚前の同棲期間も含めて長いこと経つけどこの関係は変わらない。

私より早起きなのは言うまでもがな、
同時に布団に入っても先に寝付く。
特に疲れている日は寝室に向かう頃には寝入っていることもある。
今日はそのパターンかな。

お風呂から上がって髪を乾かして、
寝室の扉をそっと開くと中は真っ暗だった。

抜き足差し足、布団をめくって潜り込む。
目覚ましがちゃんとセットされていることを確認して体勢を整えて目を閉じた。ら。

「…ごめん、起こした?」

もぞもぞとうごめいて私の体に手を伸ばしてきた秀一郎に小さく声を掛ける。
言葉での返事はなく、ただ、体を強く引きつけられたので、腕の中に転がり込んだ。

「オヤスミ……」
「おやすみー」

はっきりしない口調で言うから、
これは寝ぼけてるのか?と思いながら返事をした。

このまま寝付くのだろうと思いきや。

「…秀一郎さん、寝ぼけてるの?」

腰をぐっと引き寄せると胸元をまさぐり始めるから、
寝ぼけてるだけにしてはオイタが過ぎるのじゃと思ったら…。

「これはさすがに起きてるでしょ!」

パジャマのボタンを外し始めたのに気付いて軽く手を叩いた。
秀一郎ははっきりとした目線をこちらに向けてにこりと笑った。

「寝ようと思ったけど、寝付けなくて。協力してくれないか?」
「…もっとまともな誘い文句なかったの」

私の返事もおかまいなしに秀一郎は私の腕を引いて
引き寄せられた私はベッドになだれ込んで、唇同士が合わされた。

抗えないなあって思いながら口に隙間を開けてそれに応える。
だけど秀一郎はすっと顔を離す。

「期待してる?」
「期待なんか…!」

焦って言い返そうとする私をいなし、
秀一郎は私の手首に指を添えて目を閉じる。

「88回/分…の安静時の脈は66回/分だ。高すぎるな」
「だって…!」

言い訳しようとする私の口を、人差し指で押さえて
「今度は、ドキッとしただろ?」と
何を測定するでもなく言い出す秀一郎。

私のツボを押さえてる…ズルすぎる。

「(そんなの…ドキドキするに決まってるじゃん)」
「今日はどうされましたか?」

敬語…。
秀一郎の顔を見ると、スッと涼しげな目元でをしながらも
威圧感を与えない穏やかな微笑みを見せている。
これはいわゆる仕事モード。

…そういう感じ?

秀一郎は、たまに、こういう悪ノリをする。
そして私もそれに乗っかる。

「……さっきから体中が熱くて」
「どれどれ」

秀一郎は私の頭の両側を掴むと、
おでこ同士が触れ合うように引き寄せた。
片手が頭の後ろ側に回されて、
今度は唇同士が触れ合った。
そしてわずかに空いた私の唇の隙間から、
秀一郎の舌は中に忍び込んできて
驚くほどの熱さを孕みながらそれは絡みついてきた。
唾液も混ざり合って、クチュクチュと音が響く。

「確かに、これはだいぶ熱が高そうですね」
「…………」
「ん、どうした」

もっと欲しくなって、私から再び口を合わせた。
何度も角度を変えながら先ほどよりも更に深く交わっていく。
ねっとりと舌が絡まる。
お互いの唾液の混ざり合う音がくちゅくちゅと頭に響く。
ゆっくり口を離すと、私たち口と口の伝わった糸によって繋がっていた。
ふつりとそれが途切れた。

「そんなに熱っぽい目をして大丈夫か?
 本当に熱があるんじゃないか?」

そんなことを言って困り眉で顔を覗き込んでくる。
その表情が本当に心配そうに見えたもので
私まで「本当に熱が?」なんて思ってしまったところ、
秀一郎は「それじゃあ心音を確認しようか」なんて言い出して
危うく騙されそうになった自分が恥ずかしくなった。

「服をまくし上げて」
「え、自分で?」
「そうじゃないと聞きづらいだろう」

いつもは秀一郎から脱がしてくれることが多い。
「見てください」と言わんばかりに自分から脱ぐのは恥ずかしい。
ためらいながらも言われた通りに服をまくし上げる。
上半身がブラジャーだけの状態になった私の胸の愛だに秀一郎は左耳を埋めた。

「大きく息を吸って、……吐いてー」

言われるがままに大きく息を吸って、吐く。
秀一郎の表情は穏やかで、普段の仕事もこんな様子なのかなって想像できてしまった。
優しい優しい大石先生。
それでいて腕は確かで、施術をするときの表情は真剣で凛々しくて…。

「ん、少し鼓動が早くなったね」

穏やかな表情でそう言うと、大石先生…もとい秀一郎は胸から耳を外した。
仕事中の様子を想像したら自然とときめいてしまったなんて、言えるわけない。
もしかしたらお見通しかもしれないけれど。

「それじゃあ、下着も外してもらえますか」

これもまたためらいはあった、けど、
背中に腕を回して、ホックを外して、ブラジャーを外した。
秀一郎は…満足げに微笑んでいる。

「それでは…触診していきますね」

そう宣告して、秀一郎は私の胸をそっと包み込むように手を覆わせた。
そしてゆっくりと、丹念に、胸を揉みしだいていく。
一部分を数本の指でぐいぐいと押してくる。
ときたま、思い出したように乳首の先端を摘まんだり引っかいたりしてきて、私の体は跳ねた。

本当に触診されている気分になってしまって、
声を出しちゃいけないような気がして必死に口を噤む。
普段胸を少しいじられるだけでも声がだだ漏れになってしまうくらい感じちゃうのに…。

「苦しそうですね。大丈夫ですか」
「……ダイジョウブデス」

悔しくってそう返したけど、本当は漏れそうな声を抑えるのに必死。

ああ、やめて。
これ以上は本当におかしくなってしまいそうだよ。

「どうです、体の火照りは治まりそうですか」
「いや…どちらかというと悪化したような…」
「それはいけない。下も確認しますね」

秀一郎はそう言って下半身に手を伸ばす。
パジャマの中に手を入れて、下着越しに手が私の中心部に触れた。
濃厚なキスと執拗なまでに丁寧な前戯で焦らされた体は
指先で与えられる刺激を待ち望んでいたかのように震えた。

秀一郎はニヤリと笑って、耳に口元を寄せてくる。

「ここ、びしょ濡れですよ」

囁くような重低音。
丁寧な言葉遣いにそぐわぬ卑猥な内容。
私の全身はボッと火が付いたように熱くなった。
対して秀一郎は、営業スマイルのような笑顔を崩さない。

「これはだいぶ体もしんどいんじゃないんですか。
 すぐに処置が必要ですね」

こちらに横になってください、とベッドに横になるように促してきた。
いつも私が寝ているそこ、自分の枕に頭が行くように座り直して
体を倒そうとすると秀一郎は背中を支えてくれた。

両足からパジャマとショーツが抜き去られた。
笑顔の声が上から振ってくる。

「ちゃんと診るから安心してくださいね」

言葉通り、「どれどれ」と観察するように私の秘部を覗き込んで
指の先端を差し入れては「なるほど」とか言ってる。
相変わらず探るようにゆっくりと抜き差しを開始して
少しずつ少しずつ、差し入れられる指の長さが増していく。

いつもは弱いポイント熟知されててそこを中心に攻め立てられがちだけど、
今日はあちこち確認するみたいに丹念にいじられている。

「(これは、これで……)」

あんまり感度が良くないはずの場所も
時間をかけてじっくりと弄られているとじわじわと感度が上がってくのがわかる。

「(声、出ちゃいそ…)」

まるでお遊びみたいな前戯なのに
自分だけが発情しているみたいで恥ずかしい。
口元に手を運んで快感に耐えた。
「うーん」と唸りながら秀一郎は手の動きを止めた。

「特におかしいところはなさそうですけどね。
 分泌液が少し多いくらいで」

そう言って私の愛液でてらてらと妖艶に光る指を見せつけてきた。
見たくない、そんな物。
羞恥から顔を逸らす私の顔を覗き込んできて微笑む。

「敢えて言うなら、陰核が大きく腫れ上がってますね。これが原因かもしれません」

インカク?
何のことを言っているのか…と思ったら、
秀一郎は私のクリを指先でなぞった。
急に直接的な刺激を与えられて脳天まで電気が走る感じがした。

「アアアッ!」
「痛いですか?」

堪えきれずに大声を張り上げる私を秀一郎は心配そうに見つめてくる。
痛い?
…………。

「痛くは、ないです」
「じゃあどうしましたか」
「………」

言いたくないよ。
気持ち良すぎて声が抑えられなかっただなんて。

「もう、あんまりイジワルしないでよぉ…」
「イジワルではなくて、ただの問診です」

あくまで姿勢を崩さない秀一郎。
早く次に進みたいけど、恥ずかしさで何も言えずに秀一郎を睨みつける私。

「痛いわけじゃないんだったら、特に心配はないんですけど」

そう言いながらも、再びクリを弄り始めたと思いきや
位置を変えて中に差し込んだりと指が自由に動き回る。
そしてその器用な指先は、私が一番気持ちいい場所を見つけて強めに刺激を与えてくる。

「ハァ、あっ……アァッ!」
「苦しそうですね」

声が抑えられないし、息も荒い。
指が与えてくる刺激が物足りないというわけではないのだけれど
もっと太くて硬くて熱いモノがそこに待ち構えているのを私は知ってしまっている。

早く秀一郎のが欲しい……。
私の秘部を弄ってきている手、その手に繋がる腕を掴んだ。

「しゅ、う……」

いつの間にか涙が目に溜まっていた。
その滲んだ視界の先、縋るような私に反するように、
秀一郎が不敵な笑みを浮かべるのが見えた。

「だいぶ辛そうですね。お注射しましょうか」

何、その…安いAVみたいなセリフ…偏見だけど……。
あまりに秀一郎らしくない。

ゴソゴソとゴムを準備している秀一郎に
「秀一郎…こういうの好きじゃなさそうなのに」
と言ってやると、
返ってきた言葉は
「好きなのはの方だろ」
で。

「(…まあ、図星なんだけど)」

一瞬だけ普段の秀一郎に戻ったような気がしていたけど、
自身も裸になってベッドに返ってきた秀一郎は、どこか悪い顔で笑っていた。

「それではうつ伏せになってください」
「うつ伏せ?」
「お注射ですから」

言われて、渋々とうつ伏せになる。
私、バックはあんまり好きじゃないの秀一郎は知ってるはずなんだけど…。
それとも何か考えがあるのだろうか。

「リラックスしていて大丈夫ですよ」

そう言って私の腰から腿に掛けてをさする。
右足、左足を少し開かせて、局部が触れ合う。熱い。

「力抜いてくださいね」

そう言って、触れ合わさった部分に力が加わる。
もう少し体重が掛けられたら入ってくる…という位置で留まった。

そして「ちょっとチクっとしますよ」という前置きの直後、
ぐー…っと奥まで差し込まれて背中が自然と仰け反った。

「(どこが、チクっとなの…!)」

と、声に出す余裕もなく心の中で突っ込む私。

挿入された直後は刺激に体が慣れてないから少し待ってほしい。
それをわかっているからか無理に動こうとはしてこなかった。
正面からだったら、秀一郎の体にしがみついてることが多いけど、
今日は枕に顔を埋めて耐えている。

「(だから、後ろからは、苦手なのに…)」

気持ちいいけど、気持ち良すぎて苦しい。
息が浅い。

「大丈夫?」
「まだ動かないでッ!」
「はいはい」

体勢を変えようとするのを、腕を掴んで制した。
フー…フー…と、飢えた獣みたいな呼吸しかできない。
肺を上下させるみたいなその呼吸が落ち着くまでには数分掛かった。

「……ダイジョウブ」
「ん、ゆっくり動くよ」

背中越しに掛けられた言葉にコクンと頷くと、
宣言通りゆっくりと体が前後に動き出した。
そのたびに生まれる快感に自然とため息が漏れる。

覆い被さるようにされて、背中がぴったりと密着する。
前後する腰の動きは少しずつ速くなってきて
押し出されるように私の喉からは空気だけでなくて声が漏れ始めた。

「ッ……ゥ、ア……!」
「声、我慢しなくていいんですよ」

耳元に顔を寄せて告げられた言葉に頭が一瞬混乱する。
敬語だ。私は?相手は?ここはどこ?

…落ち着いて。
ここは私たちの家で、いつものベッドで。
姿は見えないけど、普段と違う喋り方をしているけれど、
そこにいるのは、間違いなく秀一郎のはずで。
だけど目視できない状態でガンガンに後ろから突かれていると頭がおかしくなりそうだ。

「しゅ…、ヤッ…!」
「ん、どうしましたか」
「待っ、て……」
「どうしてですか、こんなに気持ち良さそうなのに」

違う。そうだけど違う。
私は首をぶんぶんと横に振る。

いつもと違う刺激のあるプレイ。
仕事中にしか見せないであろう表情。
いくつもの慣れない快感が体に与えられるけれど。

だけどやっぱり私は、いつものアナタが一番好き。

「しゅういちろぉ…!」

上半身を捻って腕を伸ばす。
その頬に触れると、秀一郎は驚いた顔をしていた。
さっきまでの余裕のある表情はどこへやら。

ズルリと私の中から秀一郎が引き抜かれた。
そして私の体が反転させられる。
正面と正面を向き合う私たち。
目が合う。

「……ごめん、限界だ」

切なげな表情で秀一郎はそれだけ告げた。

直後、ぎゅっとハグして濃厚なキス。
さっきまで出来なかった分だけ、キツく首を引き寄せて、
角度を変えたり舌を奥まで差し入れたり逆に吸い込んだり
お互いを確かめ合うように出来る限る深く交わる私たち。

「ちょっといつもと違うことしようと思ったけど、最後まで耐えられなかった」

顔が離されると、秀一郎は眉を八の字にして情けなく笑った。

私のおでこに汗で張り付いた前髪を払った指は
そのまま頬の下を伝って首をさすり顎を持ち上げた。

「気持ち良くなってるの顔、見せて」

そう言って軽いキスを一つ落とすと
下半身の位置を合わせて、ズンと体重を掛けてきた。
強すぎる快感に「アンッ!」と声が勝手に漏れた。

「ん、可愛いよ」

そう言って、何回もキス。
その間も下半身の動きは止まらない。

「今日は、ここの感度が良さそうだな」
「あああああ!」
「いいよ。イッて」
「ぁ、アッ…!」

どの位置を、どんな角度で、どんな強さで、どんな速さで。
これ以上ない方法で刺激を与えられて私は頂点を上り詰めて、果てた。
秘部の収縮と同時にビクンビクンと痙攣する体を秀一郎は抱き留めてくれた。

私の息が整ってくると秀一郎は「もうちょっとだけ動くぞ」と告げて、
さっきと同じか、それ以上に速く腰を動かした。
快感の波が降りきっていなかった私はまた高まっていく。
秀一郎が「イクぞ」と耳元に告げて腰の動きを止める頃
私も再び快感の淵から落とされた。
その私の中で、秀一郎もまた果てている収縮が伝わってきた。

お医者さんだからとかそういうのじゃなくて
秀一郎は私の体のことを全部わかってしまってる。
悔しくもあるけど、嬉しくもある。
だけど何より、秀一郎と体を合わせているということが、幸せだと思った。

覆い被さったまま私とぎゅっとしてくれていた秀一郎は
呼吸が整った頃に「ごめん、重くなかった」と聞いてきて
自身を抜くと隣に横になった。
「だいじょうぶ」とだけ返すと、「良かった」と言って
ゆっくりと髪を撫でてきた。
……優しい。

、今日だいぶ乱れてたんじゃないか」
「……秀一郎が変なプレイしてくるから」
「楽しかっただろ」
「……おもしろかった」
「面白いってなんだ」

ハハハって笑って、秀一郎は私の頭を撫でる。
そして「疲れただろ、おやすみ」と言う。
心地好い手の重みに意識がまどろんでいく。

秀一郎は私より寝るのが早くて起きるのも早い。
だけど事後に限って、いつも私が早くに寝ちゃう。

目を覚ましたら秀一郎はもう布団の中には居なくて、
なんならもう家を出てしまっているかもしれない。
そして職場に向かって“大石先生”になるんだ。

「(もっとずっと私の秀一郎でいてほしい…)」

こんな感情は、きっとどんなに優秀なお医者さんにだってわからない。
だけど秀一郎だけはこんな私の気持ちをわかってくれる。

意識もうつろななまま、弱くなり始めた握力で手を握ると
秀一郎はその手をきゅっと握り返してくれた。
もう一方の空いた腕は枕の下を通って伸びてきて
引き寄られた私の頭は秀一郎の頭にコツンと当たった。

とこうしているときが一番幸せだよ」

その言葉があまりに嬉しくて、
「私も」以上の言葉は返せなかったけど、、
せめてこの幸せに包まれているうちに眠りにつこうと思って瞼を下ろした。
























仮タイトル『医者プレイ』(ド直球)
本タイトルも大概ですけどねw直訳ですww

テニラビで「嵐のようなフィジカルチェック」イベ開催が嬉しかったので
そういえばこんな書きかけ作があったなぁと引っ張り出して
イベントを走らせてる合間に書いたわけ。捗ったぜ(笑)
(なんならアップしている今日まだイベントの最中である)

大石にいいように操られるのもデロデロに甘やかされるのも最高だ。
つまり大石は最高だ(これ)


2019/06/05-2021/04/25