* 当たり前の同級生 *
「おや、貴方もこちらに用事がありましたか」
放課後の図書室。
掛けられた声に振り返ると、そこにいたのは柳生比呂士。
さすがジェントルマンなんていうあだ名がついているだけあって、
その発言と立ち振る舞いは紳士そのものだ。
同級生とは思えない。
そもそも何故クラスメイトなのに敬語を使ってくるのか。
「うん。ミステリー小説読むの結構好きで…」
「奇遇ですね」
奇遇、ということは柳生も好きだということみたいだ。
「お薦めはありますか?」
「んー、最近読んで面白かったのはこれかな」
「それは僕も読みましたよ。名作ですよね」
お互いの感想を言い合い、
登場人物の心情の変化だとか、
トリックの緻密さとか、
話が止まらない。
「実はこの物語、作者の身内に関する事情が反映されてるなんていう噂も…」
「えー!?」
「ちょっと、図書室では静かにしてください」
注意しにやってきた図書委員に諭されて、
「はい」と私は思わず片手を軽く上げる。
柳生は「失礼致しました」と謝った。
無言のまま図書委員が離れていく背中を二人で見送って、目配せ。
「怒られてしまいましたね」
その口調と、困ったように眉を潜める様は
やっぱり紳士らしさを崩していなかったけれど。
好きなことで盛り上がりすぎてはしゃいで怒られてしまうなんて。
「(……ちゃんと同級生だわ)」
当たり前のことを再確認して、心の中でこっそり笑った。
ガチャ祈願。
初めて柳生書いた。
ミステリー小説知識はないので曖昧にごまかした笑
2021/04/16