* 君の心に僕は映るの *












「大石ぃ〜!」


呼ばれた声に振り返ると、そこに居たのは英二と不二だった。
英二は卒業証書の入った筒を大きく振りながら駆け寄ってきて、
その後ろから不二がゆっくりと追いついてきた。

「卒業しちゃったねー」
「そうだな」
「淋しいよー」

ポスポスと、筒が俺の頭を叩く。
別段痛いわけでもなかったが反射で「いてて」と声が出た。
その間、不二は何を言うでもなく俺たちのやりとりを
一歩引いた位置で見守っているようだった。

「そうは言うけど、再来週からまた同じ学校だろ?」
「そうだけどさー。なんか、中学生活色々あったなって」
「…そうだな」

確かにこの3年間、色々あった。
思い返しながらしばし感慨に浸る。
そのまま思い出話でも始めようかと思ったところで、
英二のどんぐり眼が、遠くの何かを捉える。

「あっ、去年同じクラスだったやつら!声掛けてくる」
「え?」

やはり感慨に浸るというのは英二の柄に合わなかったか。
急に声を張り上げた英二は一言残して走り去り、
その場には不二と俺だけが残った。

英二はここに戻ってくるのか…それすらわからない。

英二はいなくなったが、不二は動く様子はない。
なんと声を掛けようか。
卒業に関する話題を振るのが無難か。
先ほどの話題から続けて中学校の思い出でも話してみるか。

「行っちゃったね」
「ああ。卒業の日になっても、英二は英二だな」
「そうだね」

不二から声を掛けてきたので、それに応えた。
しかし、話題は続かない。
結局、先ほど考えていた話題を繰り出す。

「中学生活、本当に色々あったよな」
「そうだね。大石は何が一番思い出深い?」
「俺はやっぱり、青学の優勝かな。
 全国の舞台で英二と勝利を収められたことが何より嬉しかったよ」
「まあそうだよね」

何も真新しい情報は得られなかった、という顔で不二は笑った。
笑ったあとに、目元がすっと冷たい目線に変わった、ように見えた。

「君は、やっぱり英二なんだもんね」
「え?」

聞き返すと、不二はにこりと微笑んで顔を上げた。

「ん、なんでもない」

その不二の笑顔が、いつもと違うようで気になった。
だけど見れば見るほど、それはいつもの不二だった。

「(いつもの不二、って言うけど)」

考えれば、考えるほど。

「(そもそも俺は、不二の何を知っているのだろう)」

遙か遠くから、英二がこちらに向かって走ってくるのが見える。
この時間も終わり。

「高校ではさ」

不二の色素の薄い髪が、風に揺れた。

「僕たちも同じクラスになれるといいね」
「…そうだな」

高校では、また違う関係性が待っているのだろか。
英二の姿がどんどん大きくなってくるのを正面に見ながらも、
視界の端に映っている不二の表情ばかりを気にしてしまった。
























エアスケブよりお題で不二石を頂きました!
不二石に…なってるかしら(ドキドキ)

半分くらい英二じゃんって感じだけどw
いえね、不二と大石は絡みが少ないけど
実は心の底で激重感情抱えてる…てのが好きで。

このたびはリクエストありがとうございました!


2021/03/07