* 「舐め回すように」とはこのこと *
「大石は綺麗な体をしているね」
幸村にそう声を掛けられたのは、
脱衣所の入り口で体の滴を落としているときだった。
「そうかな」
「意外と細身だよね。体重は何キロくらいあるんだい?」
「この前計ったら58キロだったよ」
「そうしたら俺より5キロくらい軽いよ」
そう聞いて、思わず幸村の体をぐるっと見渡してしまった。
幸村こそいかにも細身に見えるけれど…5キロも違うのか。
俺と幸村は、身長はほぼ変わらない。
となると筋肉量が違うのかもしれない。
確かに幸村は、その儚そうな印象とは裏腹に、
テニスでは驚くほどパワーの籠もったショットを繰り出してくる。
細身に見えるその体だけれど、
“痩せている”というより“引き締まっている”と表現するのが良いのだろうか。
「もっと筋肉を増やすべきと思うか?
一応、この半年で3キロくらい増えてるんだけど」
「そうだな、体重はパワーに直結するからね」
「俺はずっとコントロール重視の練習を積んできたから…
もっとパワーを付けるようなトレーニングもやろうかな」
普段一緒にいることの多い英二が更に細身なせいか気になっていなかったけど、
やはりもっと体重をつけて筋肉を増やすべきか。
体を拭いたタオルを畳み、自分の腕や足を見回す。
「(ん、視線)」
横からの視線が気になるような気がして顔を上げると
幸村は親指を立てて片目を閉じ、何かを計るように俺のことを見てきていた。
「今のままでも、画題としては最高だけどね」
視線が、頭のてっぺんから足下まで、舐めるように移動する。
裸体を観察されるのはさすがに居心地が悪く、焦って服を籠から漁る。
「どうだい大石、今度俺が絵を描くときヌードモデルをやって見る気はないか?」
「…ええっ!?」
「ふふ、冗談だよ」
そう言って幸村は笑ったが、
俺が承諾すれば本当に実行に移されそうな…そんな気がした。
下着を穿き、Tシャツの襟ぐりから顔を出すと、
横目で微笑む幸村と目が合った。
先ほどの発言に深い意味などないのだろうけれど…
全身を観察されながら描かれるというのはどんなものか、
想像してしまったことが照れくさくなって、思わず顔を背けた。
スーパー遅ればせながら、昨年6月のお題募集したときに頂いた
「幸村×大石。恥ずかしがるヌードモデル石に、悪ノリするお茶目神の子」でしたw
ちょびっとお題からは逸れてるけど、雰囲気で。
大石、ほっそいよね。
新テニで3kg増やしてもらったけどまだまだ軽いよ。
まーた誕生日に読み手を選ぶような作品を書いてしまった(笑)
幸村おたおめ!
2021/03/05