* Sweet Sweet Christmas Dream *












好きな人と付き合えることになった。

「(夢みたいだ…というか、本当に夢じゃないかな)」

さんって好きな人はいるのかい?』
『え…どうしてそんなこと聞くの?』
『あ、その……実は…俺、さんのことが好きなんだ!
 もし好きな人がいないんだったら俺と付き合ってほしい!』
『好きな人…いるよ』
『そう、か』
『大石くんだよ』
『え?』
『私も、ずっと大石くんのことが好きだったんだ』
『ほ…本当かい!』

という感じで私たちは付き合うことになった。
そして今日はクリスマス、初デートの日。

「(本当に、夢みたいだ)」

お気に入りのワンピースを着て、学校に行くときは履かない靴を履く。
シューレースを丁寧に結び直していたら後ろから声を掛けられた。

「あら、ずいぶんオシャレして出かけるのね」

お母さんに見つかった。
まさか、これから彼氏と初めてのデート…なんてことを伝えたら面倒なことになりそうだ。

「晩ごはんには帰るから」

それだけ伝えて、家を飛び出した。



  **



思ってたより準備に時間が掛かっちゃった。
少し小走りになりながら待ち合わせ場所に向かうと大石くんはもうそこにいた。

「おまたせ!」

声に気付いて、大石くんは顔を上げた。
目が合うと笑いかけてくれた。
手を振りながら駆け寄る。それだけで嬉しい。

「俺もさっき来たばっかだよ」
「そっか、良かった」
「それじゃあ、行こうか」
「うん」

なんか今のめっちゃ恋人っぽくないー!?
ってそっか…恋人、なんだもんな。本当に。
照れくさい…けど、嬉しい。

「それじゃあ…予定通りまずはお昼ご飯ってことでいいかな」
「うん!」

相談しながら二人でファミレスに入った。

何話していいか緊張するな…。
今までも二人きりでしゃべったことって実はそんなにないし。
とりあえず食べるものを注文し終わると、大石くんの方から話題を振ってくれた。

「今日、本当に良かったかな?俺の希望でプラネタリウムってことにしちゃったけど」
「うん!すごく楽しみだよ!」
「良かった」
「大石くん星が好きだなんて知らなかったよ」
「ああ。知り合いで星に詳しい人が居て影響されたんだけど」

そう言って、色々と説明してくれた。
星の魅力。
今の季節によく見える星座のこと。
それにまつわる神話。
冬の星は夏よりもよく見えるということ…。

どんなことを喋ろうか不安に思っていたのがウソみたいだ。
食べてる間も、話題が尽きるようなことはなかった。
好きな人が好きなものについて知るのって、すごく楽しい。



お店を出て、目的地であるプラネタリウムに向かって歩き始めた。
大石くんは「冷えるな」って手をこすり合わせてて、
そうかな、って言おうとしたら、手を握られた。
もしかして、タイミング図ってたのかな?

「大石くん、手、あったかいね」
「そ、そうかな?ありがとう!!」

何お礼言ってんの大石くん!?!?
もしかしてテンパってる!?
可愛すぎるんですけど!!!

しかし数秒後、大石くんは神妙な面持ちで言葉を放つ。

「ごめん、手、離してくれるかい」
「え……うん」

言われたとおり離して、急に空いた手のひらが涼しい。
どうして……。
いざ繋いでみたらイヤだった、かな。

と思ったら。

「緊張しすぎて手汗が……」

そう言いながら手をハンカチで念入りに拭いてる大石くん。

な、な、な…
なんじゃそりゃ可愛すぎんかー!?!?

「気にしなくていいのに!」
さんがイヤじゃないならいいけど」
「全然いいよー!!」

そう言って、私から手を掴んで、さっき以上にぎゅっと力を込めた。
手があったかくて、心もあったかくて、嬉しい。
そのまま目的地まで歩いた。


そしていざプラネタリウムに入る。
薄暗い中で隣に座るだけでちょっと緊張するのに、
映画館とは違ってもっと傾いた椅子に腰掛けると、
横を見て会話をするだけで、なんだかドキドキした。

間もなく放送が流れて、明かりが消されて、上映が始まった。

上一面が星空で、心地好い音楽と一緒に星についての物語が始まった。
さっき大石くんから聞いてた話も出てきた。
隣の大石くんの表情を盗み見ようと思ったけど、暗くて見えなかった。

だけど、この星空を一緒に見上げてるんだ。
人工的な宇宙だけど、とてもとても綺麗だった。
いつか、本物の星空を一緒をこうやって眺められたらいいな、なんて。



  **



「(あっという間だった…楽しかった…)」

40分も星を眺めてどうするんだろうと思ってたけど、想像以上に短く感じられた。
楽しかったなぁ…もっと星のこと知りたくなっちゃった。
大石くんも楽しかったかな…?

そんなことを考えながら建物を出た途端。

「最っっっ高だったな…!」

そこには、目をキラキラに輝かせた大石くんの姿が!

「うん、すごく楽しかった!
 大石くんとさっき話してたことで予習できてたからわかりやすかったし」
さんにもそう言ってもらえて嬉しいよ!
 タイトルからして双子座の話は出てくると予想してたけど大当たりだったな」

そこから大石くんは、どの部分が最高だったとか
実際に星を観察に行ったときの話とか、色々教えてくれた。

「ごめん、俺ばっかり喋っちゃって!」
「ううん、嬉しいよ」

これは気を使ってるんじゃなくて、私の本心。

「今日は大石くんのことたくさん知れてよかった」

そう伝えると大石くんは安心したように笑った。
今度は私のことも色々知ってもらいたいな、って思った。

手を伸ばすと、それを握ってもらえた。
そして二人並んで歩き出す。
当たり前のようにそうなったことが、嬉しかった。

私たち、本当に付き合い始めたんだな。
こんな時間を、これからも、一緒に過ごしていけるんだ。
嬉しすぎる。

「(やっぱり、夢みたいなんだよな)」

そんなことを考えながら歩いて、街のメイン通りに来た。
イルミネーションが見事だと話に聞いていたとおりだった。

「すごいねー」
「ああ…本当に」

木もお店も全部光ってて、
その中を歩いている人たちの顔も光ってるように見える。
世界中がキラキラしてるみたい。

ちら、と斜め上を見上げた。
イルミネーションに照らされた横顔が、キレイ……。
見つめてたら、視線に気づかれて、微笑まれた。

「(不意打ち…)」

顔が赤くなった気がしてマフラーに顔を埋めた。
寒いからどっちにしろほっぺも鼻も赤かったかもしれないけど。
人の波が押し寄せてきたから一列になって、
手だけは繋いだまま、私は腕を引かれるような状態になって、
私たちはその道を通り抜けた。



   **



「すごくキレイだったね」
「ああ」

メインの通りを抜けると明かりはおとなしくなった。
足を止めて、今抜けてきた道を振り返る。

「人は多すぎたけどね」
「そうだな、これくらいの場所の方が落ち着くな。星も見えるぞ」
「え、ホントだー!」

真上を見上げるといくつか星が見えた。
イルミネーションの明かりに目が慣らされてしまっていたけど、
しばらく見上げていると見える星はどんどん増えた。

そういえば今何時だろう、と確認すると
うちの晩ごはんの時間まであと1時間を切っていた。

「そろそろ帰る時間かな」
「そう、だな」
「一日楽しかったよー。ありがとね!」
「そんなお礼なんて…こちらこそありがとう」

じゃあ駅行こっか、って言ったけど、大石くんは頷かないし歩き出さないし。
アレ?と思ったら。

さん、あの、これ…」

そう言って、大石くんは可愛いチョコの詰め合わせを差し出してきた。
もしかして…クリスマスプレゼント!?

「ウソ!ごめん、私何も準備してなかった!」
「あ、違うんだ!気にしないでくれ!俺もそのつもりはなかったんだけど、
 今日早めに着いたから少し歩いてたら、その、これを見たときにさんの顔が浮かんで…」

そう言うと、大石くんは様子を伺うような微笑を向けながら首を傾げる。

「もらってくれるかな」

両手を伸ばして、それを受け取った。

「もちろん!ありがとう、すごく嬉しい」

本当に、嬉しい…。
私が居ないときにも私のことを考えてくれたということが。
手が込んだとか、お金が掛かってるとか、そんなことは何もないけど。
プレゼントって、そうじゃない。
気持ちなんだ、って。心からそう思った。

こんな夢みたいに幸せな気持ち、一生忘れたくないな。

「食べるのもったいないなー」
「せっかくなんだから食べてくれよ」
「それもそっかー…今一緒に食べる?」
「じゃあ、そうしようか」

一つつまんで、口に入れる。
私が食べるのを確認してから、大石くんも一つ食べた。

体温によってチョコはゆっくり溶け出して、
甘い味と香りが口中に広がった。

「おいしー!!」

ほっぺに手を当てた。
元々チョコレートは大好きだけど、
好きな人からもらったものだからなおさらおいしく感じる…なんてね!

「ありがと!今度お返しさせてね」

そう伝えたけど、大石くんは笑わなくて。
ん、なんだろ。

「今日もらっちゃ、ダメかな」
「え、今からなんか買いに行く?」
「いや、そうじゃなくて」

大石くんは顔と目線を逸らせて、
聞き取るのがギリギリなくらいな小さな音量で。



「キス……しちゃ、ダメかな」



ほあ??????


「え!?!?!?あ!!!キスね!はいはい!
 ………え?」
「あっ、イヤならいいんだ!」
「いやいや!そうじゃなくて!え?そんなんでいいの?
 いや!そんなって!軽んじてるとかそうじゃなくて!!
 ……え、ホントに??」

パニック状態の私。
言った側の大石くんもテンパってるように見えた。

だって、そんな、キス、って。え?


「それじゃあ私にもプレゼントになっちゃうよ…?」


お返しにならないよ、そんなの。
っていうか、キス???するの?本当に??


「あんまり可愛いことを言わないでくれ」

混乱したまま、両肩が掴まれた。
そして身長差を埋めるように、大石くんの顔が近づいてくる。

「好きだよ……ちゃん」
「わた、しも…好きだよ、秀一郎くん」

急な名前呼びに驚きながら応えた。
言い終わるとほぼ同時に、口が塞がれていた。

あまりに顔が近くて恥ずかしくって目を伏せた。
どれくらいの時間そうして居たか、
口が離されてゆっくり瞼を持ち上げると
さっきまでも視界に入ってたはずのイルミネーションが
「こんなに光ってたの?」ってくらい眩しく感じた。


ファーストキスは、好きな人からもらったチョコレートの味。


「夢みたいだ…」


思わずもらした言葉に反応して

「夢じゃないよ」

って微笑まれて。


ぎゅっと手を握られた手があたたかくて、冬の寒さを忘れそう。
きっと何年経ってもこのキラキラの景色を私は思い返すと思う。

夢みたいで夢じゃないこの夢のような時間は、一生忘れられない幸せな思い出になった。
























夢です。(←)

ちゃん呼び大石は解釈違いなんですけどめちゃくちゃ可愛いのでたまに発動させたくなるのよね。
秀一郎くん呼びは初めてかもなーいやー中学生カップル可愛いよなー(BBA発言)
もうこの子たち可愛くって仕方がないよ…幸せになってくれ。

アドレナリン出まくって瞳孔開いて世界がキラッキラになる瞬間は最高だよね。

一番最後、「いつか他の人と付き合うことになっても忘れられない思い出」
みたいな意味で書いててそれを補強するような文を入れるつもりだったんだけど
せっかくの脳死甘々夢書いたのになんでそういう影を落とすかなwwと思って消したw
いつまでも二人で幸せでいてくれ…(合掌)

タイトル、偶然にも仮でつけてた『甘々クリスマス夢』の直訳みたいになったw
英語にするとなんでもそれっぽく仕上がるの法則w


2020/12/15-25