* 輝く過去を置き去りに、君の瞳は焦がれて揺れる *












滑り止めで受かって通うことになった青春学園大学。
しかし空き時間や放課後は勉強に勤しむ私に青春などなかった。

他のみんながサークル活動にバイトに飲み会(飲酒は二十歳になってから!)なんてしている中、
私は家と学校と図書館を往復しながらひたすら受験勉強をしている、いわゆる仮面浪人生であった。

だけどこれがさすが青春学園ということなのだろうか、
友達すらまともに出来ていないのにこの空間の中にいるのは心地よくて、
このままここに4年間通うのもありなのかもしれない…と考え始めているところである。
私は、志望校に行きたいというより、“受かりたい”という意地もあるような気がして…。

どうするべきか結論が出せないまま習慣が如く大学に通い、
入学から一ヶ月ほどがたった今ですら友達一人もできずに勉強と向き合っている。
今日も授業とは関係のない問題集を片手にノートにペンを滑らす私に、明るく陽気な声が降り注ぐ。

「それ、チョコレーツのライブグッズだよねっ」

ん?

急に聞こえた声に顔を上げると、
ぴょんぴょんと跳ねた髪型の男の子が立っていた。
ペンケースに付いたチャームに注がれていた視線が私に移る。
くりくりとした瞳が印象的。

「あ、はい。そうですけど…」
「オレも好きなんだ!やったー仲間発見」

嬉しそうに笑って、瞳が尚更光った気がした。
ま、眩しい…いわゆる陽キャラだ。

「君、次の授業ここの教室?」
「はい」
「じゃあ同じクラスだ!内部進学?外部から?」
「外部…」
「そうなんだ、よろしく〜。オレは中学からずっと青学」

自分で指差した笑顔がキラキラと光る。
青春学園で青春を謳歌するとこうなるとでもいうのだろうか…。

2限目で使う教室が1限目は空きなのを知って勉強するために早めに来たのに…
まさか陽キャラくんに捕まるとは。

「てか、来るの早くない?」
「うん。教室空いてるから勉強しようと思って…」
「えっら!」
「あなたは?」
「あっ!」

急に声を張り上げるから何かと思ったら。

「オレ、菊丸英二ね!」
「あ、です」

菊丸くんは自分の胸を親指で指差して、私はペコリと会釈して。
テンションちぐはぐな私たちだけれど、
この時をきっかけにまさかの意気投合することになるのである。

「オレはね、部活の朝練があったんだけど、1限の間は暇だからさ〜。
 んで2限の教室覗いたら空いてるっぽかったから来てみたらちゃんが居たってわけ」
「(ちゃん…)部活って、何の?」
「テニス部なんだ!テニサーじゃなくて体育会の方だからな!
 めっちゃ真面目にテニスやってるよん」

そう言って、横に置いた大きなテニスバッグをパンパンと叩いた。

テニス部…。
何か引っかかるような。まあ、いいか。

ちゃんは?サークルとかやってんの?」
「特に…」
「じゃあ、バイトとか?」
「いや、放課後は……勉強してる」
「えー勉強だけのために大学入ったの!?」

そう問う菊丸くんは怪訝な顔をしていて、
それはそうでしょう…とは返せない空気。

「まあ、オレだって勉強が大事だってわかってるけどさ!
 でも、それだけじゃあ勿体なくない?」
「勿体無い、かあ…」
「そーそー!勉強の他にもさ、スポーツとか音楽とか、友情とか恋愛とか。
 せっかく青学に入ったんだから、ちゃんも青春しないと!」

菊丸くんの言い分がおかしくって、思わずぷっと笑ってしまった。
それもそうかもね。

「青春ね」
「そーそー、青春!」

菊丸くんは満足げに大きく頷くとにんまりと口を横に広げて、
机に突っ伏して上目遣いに視線を送ってきた。

「君さ、今までもっと暗いタイプかと思ってたけど…笑うとカワイイね」

…………。

「……え」
「おっ、英二早くね?」

私がフリーズした直後、一気に数名が入室してきた。
途端に賑やかになる教室。

「おっつかれ〜!」
「何、ナンパしとん?」
「ナンパって言うなよ〜クラスメイトと喋ってただけだろ!」

ナンパ……ではない、のか。
いかにも陽キャラの菊丸くんにとってはさっきの発言くらい普通なのかもしれない。

ガヤガヤの渦中に巻き込まれてしまったようで、ちょっと居心地が悪い。
だけど別に悪気があるわけでもなさそう。
…私も、クラスメイトに対する苦手意識減らさなきゃなぁ。

「じゃあねちゃん。また話そっ」

そう言って、菊丸くんは鞄ごと席を移っていった。
教室の右端、あそこはいつも賑やかしい子たちが集っている区域…。
そうか。普段あの中にいる人だったのか。

違う人種だな、とは感じるけれど。
嫌いじゃないな、と思った。
っていうか、すごくいい人だったな、菊丸くん。
初対面の男子と一対一で気負わずに喋れたのは珍しい。

ふぅと一つ息をついて正面を見ると、
数行で止まっているノートが。
いけない、今の時間に終わらせようと思ってたのに!

「(……まあ、いいか)」

楽しそうな笑い声が響いている斜め後ろの席を見て、笑いに近いため息が出た。
普段誰ともつるまずひたすら勉強している堅物に見えているはずの私が
大学に入って初めてまともにクラスメイトと会話が出来たのは、
なんだかんだ言って嬉しかったのかもしれない。
そう考えながら開いていた問題集を閉じて次の授業の準備に移った。

「(青春、ねぇ…)」



そんな出来事をきっかけに、菊丸くんと私は頻繁に話す仲になった。
授業が始まる前の空き教室で雑談をする他には、
午後一の授業の前ならそこでお昼ご飯を一緒に食べることもあった。
菊丸くんの話す内容や、話すときにくるくる変わる表情はいつも私を楽しませてくれて
気付いたらしょっちゅう笑わされていた。
青学は腰掛けのつもりだったはずの私だけれど、
いつの間にか毎日学校に行くのが楽しみになっていた。
学校に行って、菊丸くんと顔を合わせることが。

二人で一緒に過ごすことが当たり前になってくると
「あの二人って付き合ってるのかな?」なんて聞こえてきて、
やはり勝手に話題に上げられるのは居心地悪い。

でも…菊丸くんと付き合う、か。
それは結構悪くないかも、なんて。
菊丸くんと一緒に居るのは楽しいし居心地が好い。
前に付き合ったことのある人とは、全然違うタイプだけれど。

「(あ、そういえば…)」



  **



「え、大石秀一郎?」

その日も、昼休みが始まってすぐ私たちは次の教室に集まっていた。
一緒にお昼ご飯を食べながら、雑談を開始する。
今日の話題は、とある人物に関して。

「そう。そういえば青学出身の知り合い居るって思い出してさ。知ってる?」
「えー知ってる知ってる!てか超知ってる!」

私の質問に対して、菊丸くんは嬉しそうに答えた。
知ってるのね…。
やや気まずさを感じずにはいられない。
というのも、その大石秀一郎というのは……。

「中学のときテニス部でダブルス組んでたんだ!今でもたまに遊んだりするよん」

私の思考は、楽しそうに話す菊丸くんの声によって遮られた。
耳には聞こえていたけど脳には届いていなかったその発言を改めて反芻する。

中学のときテニス部で、ダブルス組んでた。
え?

「君が“エージ”か!」
「わっ、急にどしたん?」

ガタンと音を立てながら立ち上がった私に菊丸くんは目を丸くした。
私としたことが取り乱してしまった。
でも、だって、まさかこんな近しい存在だったなんて…。

「いや…実は、ね」
「うん」
「しゅ……大石くんとは、高校の頃付き合ってたことがあるんだ」

そう。
大石秀一郎くんというのは、私の元カレなのである。

「高1から高2の夏まで付き合ってたんだけどね、
 デートの誘いを断られる理由はいつも“エージ”でさ。そうか、菊丸くんだったのか…」

驚きと戸惑いでいつになく饒舌になってしまう私。
だってまさかこんなことがあるだなんて!
初めて話したときにテニス部と聞いて何か引っかかったのは、これだったんだ。
当時、存在もわからないのに嫉妬の矛先だった人物が
まさか数年を経て一番仲が良い存在になっているだなんて。
もしかしてこれも縁かもね、なんて。

変に浮足立つ私に対して…菊丸くんは、めちゃくちゃむくれた顔。
何故。

「ふーん……良かったね」
「良かっ…、え?」

ちょっと文脈崩壊してない…?
何が良かったの?
と、聞きたいけど聞けず…。
荷物を掴んで菊丸くんは「じゃ、そろそろ他のやつら来るから」
と言って教室の端の席に移動していった。

何か悪いことをしたかな。
原因はわからないけど不機嫌にさせてしまったみたいだ。
それとももしかして、秀一郎から元カノ(=私)の悪口でも聞かされてた?
秀一郎がそんなことするとは思えないけど…。



  **



「(今日は来ない、か)」


授業が始まるまであと20分くらい。
そろそろみんな集まり始める時間。
菊丸くんはいつもだったらこの時間にはもう来ているけれど。

避けられているのだろうか。
だとしたら、昨日不機嫌になっていたのは気のせいではなかったんだ。
やっぱり何か悪い話でも聞いていたのか…。
もしかして私が秀一郎をフった悪い女みたいに思われてる?
ありえなくはない…というかそれくらいしか心当たりがない…。

親友の敵なら自分の敵ってことか。
私も別に秀一郎と険悪ってわけではないんだけどな。
せっかく仲良くなれたのに、残念だな…。

「………」

問題を解くペンが進まない。
文字列が頭に入ってこない。

唯一仲良しだったクラスメイトと話せなくなってしまった。
それだけだろうか。
この喪失感は。

ちゃん!」と、懐っこく私の名前を呼んで
太陽みたいに明るく笑うその姿が脳裏に浮かんで、
胸がぎゅっとなって。

…ああそうか。
私、いつの間にか菊丸くんのこと、好きになっていたんだ。

もう嫌われちゃったみたいだけど。
知り合ってからまだ一ヶ月も経ってないのに、とんだスピード失恋だったな。
誤解を解くのもエネルギーいるし。
また、一人で黙々と勉強する日々に戻るのか。
でも元々そのつもりだったし。
束の間の青春謳歌だったな…なんてね…。


考えていたら、教室のドアが開いた。
誰かな、と思ったら、菊丸くんだった。
ドキンと心臓が鳴った。
菊丸くんは、教室をキョロキョロと見渡して他に誰もいないことを確認すると
私の座っている席に近付いてきた。

「おはよ」
「あ…おはよう」
「昨日、なんかごめんね」
「いや、別に…」

そんな謝られるほどのことではないけれど。
昨日は不機嫌な態度を取っていた自覚が菊丸くんにもあるんだな、
という事実がいよいよ確信に変わった。

嫌われた…わけではない?
だけどやっぱり態度はよそよそしくて。
問い詰めたいつもりはないんだけど、どうしたのか聞きたい。
角が立たないように聞くにはどうしたらいいか…と考えているうちに菊丸くんの方から話し始めた。

ちゃんが大石と付き合ってたって聞いたら、
 心の中がすんごいモヤモヤしちゃって」
「そう、なんだ」
「不機嫌になっちゃったのはオレがちゃんのこと好きだからって気付いたんだ」
「………え?」

顔を上げると、菊丸くんは泣きそうにも見える顔でこちらを見据えていた。

「オレ、ちゃんのことが好きだ。オレと付き合ってほしい!」

あまりに突然で驚いたけど、私の返事は決まっていた。
首と頷かすと同時、「はい」と答えた。
まさか、恋を自覚してからこんなに短期間で成就することになるだなんて。

その直後にガヤガヤと扉を開け放ったのは菊丸くんの友達グループで
何も知らずいつもみたく「おーいご両人今日も楽しそうじゃん」なんて茶化してくるもんだから、
私たちは顔を見合わせて笑ってしまった。



  **



元カレの元ダブルスパートナーであり親友と付き合うことになった。
元カレと今カレが近しい存在だというのは、やりづらさもある。
だけど秀一郎がどうとか関係なく、今、私は誰より英二が好きだ。

休み時間だけじゃなくて授業も一緒に受けるようになった。
元々噂が立っていたこともあって、クラスでも有名なカップルになるのにそう時間はかからなかった。

英二と一緒に居たら、自然と友達が増えた。
女友達も、男友達も。
「話しかけても大丈夫な人」と認識されたみたいだ。

そして気付いたことがある。
英二はとんでもないヤキモチ焼きだ。

女友達と話していると「にゃーに話してるの!」と陽気に乱入してくる。
英二は女子とも仲良く話せるタイプだから、それで調和が乱れることはない。

問題は、私が男友達と話しているとき。
男友達…といっても、友達と呼ぶのもおこがましくて
選択授業が被っているから少し話せる…程度の間柄の人が数名居る程度だけれど。

「にゃーに話してるの!」と陽気な声で乱入してくる。ここまでは同じだ。
だけど意味もなく私に後ろから抱きついて来たりする。
そしてその顔を振り返ると、
相手の男子を思いっきり睨みつけていたりする。
そのことに気付いてからは、なるべく男子と二人で喋ることは避けようと決めた。


英二と居たら世界が広がった。
友達が増えたこともそう、
一緒に色んな場所に行った。
今更サークルは始めづらいけど、
塾講師のバイトを始めてみることにした。
同年代の知り合いが増えた。
人生において、学校以外で交友関係が広がるのは初めてだったから新鮮な気持ちがした。

英二は私に色々な気持ちを与えてくれる。
新しいことに挑戦して、
失敗して思いっきり落ち込んで
うまくいったら思いっきり笑って。
そんな英二を見ていたら、
私の脳内で凝り固まっていた扁桃体が活性化してきたみたいだ。

何より英二は、私に“トキメキ”を与えてくれる。
英二は普段可愛い系で通っているけど、素は格好いいタイプだと思っている。
平均よりほんの少しだけ高い身長は、
小さな顔と細身の体によってもう少し高く感じられる。
だけどなんとなく小柄な印象を与えさせるような身軽さと距離の近さがある。
元々パーソナルスペース広めな私はびっくりするけど、
好意を抱いて近付いてきてくれているとわかるのは、嬉しいことだ。
人懐っこい姿と、ふとしたときに見せる凛とした姿のギャップ。
私の胸は柄にもなく踊らされっぱなしだ。

ヤキモチ焼かれて、どぎまぎするのだけは勘弁だけどな。
だけどこれも、恋愛でしか体験できない貴重な感情なのかもね、なんてね。


ヤキモチ焼きであるところさえ刺激しなければ、私たちの関係は安泰。
そう、そこさえ刺激しなければ…。


ある日、水族館がリニューアルオープンするというので二人で来た。
英二も私も水族館は好きだから「楽しみだね」と話しながらこの日を迎えた。

館名まで変わっていたから来るまで気付かなかったけど、
入り口を見たときの全体的な印象には覚えがあった。

「わー懐かしいここ」
「来たことあったの?」
「うん、見たら思い出した。もちろんリニューアル前だけど、高校のときに…」

あ。
しまった。

私はそこまで言ってしまってから気付いた。
ここに一緒に来た相手は、秀一郎だったということを…。

「えっと……友達と来たことがあって」
「フーン?」

バカ私…。
普段そういうことを言わないように注意を払っていたのに、
懐かしさゆえか気が弛んでしまった。

どうせ言うならならさらっと言ってしまえば良かったのに、
一瞬固まっちゃったし英二の表情伺いながら答えちゃったし、
英二も明らかに怪訝な声を出してたし。
これは……多分、バレた。

「本当に友達と来たの?」

鋭い目線に貫かれる。
多分じゃない。
絶対バレてる。

「………ごめん、ウソ」

恐る恐る返事をする。
正直に謝った方がいいと判断したけど
嘘を貫き通した方が良かったのかもしれない。
だけどそれを出来るには私の演技力が不足しすぎていた。
迂闊すぎた…勘繰られてしまった時点で失敗だった。
怒り出すかな…ぷんぷんモードに入ってしまうかな…。

「……あっそ」

身構えていた私だったけれど、英二はそれ以上何も言ってこなかった。

「(英二も、自分がヤキモチ焼きってこと気にして
 あんまり妬きすぎないように意識してるのかもしれない)」

そう思って納得したけれど、
どうやらそうではなかったと後からわかる。

その後のデートは、苦痛そのものだった。
例えは悪いけれど、お通夜状態。

会話がない。
「可愛いね」とか「珍しい種類の魚がいるよ」とか色々と声を掛けてみるけれど、
「ふーん」と「あっそ」以外の返事が来ない。
次第に私も話題を振るのを諦めた。

無言で魚を眺めて歩く時間が続く。
これは完全にやらかしたな…と先ほどの自分の発言を猛省。
それの報いだとしても、この状況はあまりにしんどい。

「(もはや解散してほしいレベル…)」

だけど英二はそうしない。
本館を順路通りに回り終わった段階で「充実してたね」と
なんとなく見終わった風な感想を伝えてみたけれど
「こっちの別館で特設展示やってるって」と笑わないまま言い、
私はその斜め後ろを様子を伺いながら着いていく…という。

展示を見ている間、私は「英二はどういうつもりなんだろう」ということばかりを考えていた。
怒りが抑えられないならいっそ今日は仕切り直した方がいいのでは。
もしくは怒り散らして喧嘩して仲直りした方が健全だ。
どうしてこんな状況になっているのか…頭の中はそのことばかりで、
正直、展示内容は何も記憶に残っていない。

なのに水族館を出たあともデートは普通に続いた。
道を歩くときは私の手を掴んで引いて、電車に乗っても離さない。
行き慣れた駅で降りて、行き慣れた道を歩いて、
「ここでいい?」とだけ聞かれて行き慣れたカフェに入って、
いつもと変わらないかのように休憩することになった。

だけどここまで会話らしい会話なし。
アイスティーに入れたガムシロップを氷ごとカシャカシャかき混ぜる音をこんなに意識することがあるなんて。
英二の方を一瞥しても横顔しか見られない。
こうして見ると本当に端正な顔立ちをしているな…
などと見入っている場合ではない。
だけどこの状況をどう打破して良いのかもわからない。


英二の気持ちがわかったのは、別れ際になってからだった。

「ごめん」

英二は謝ってきた。
心底申し訳なさそうな表情をしていた。

頑として言葉を発しない英二を見て、相当怒ってる…と始めは思ったけれど、
どうやらそれだけではないということは途中から察していた。
いや、怒ってはいるのかもしれない。
でもその矛先が、私というわけではないみたい。
元カレ…つまり秀一郎、というわけでも。
たぶん英二は、自分自身に怒りを感じている。そんな風に見えた。

「もう気付いてると思うけど、オレってめっっ…ちゃくちゃ、ヤキモチ焼きなんだよね」
「…うん」

それはもちろん私も気付いていた。
そして、英二が自覚していたということもこれではっきりした。
申し訳なさそうな表情のまま英二は言葉を続ける。

は今はオレの彼女だってわかってるし、過去はもう変えられないこともわかってる。
 でもどうしても許せなくて…。
 許せないってその、が、とか、相手が、とかじゃなくて、
 うまく言えないけど…心の中が真っ黒になっちゃうんだ」

服の胸の辺りをぎゅっと握りしめた。
私にはその気持ちを知ることは出来ないけれど、
辛い思いをしているのだということはとても伝わってきた。

「こんな嫌な気持ちでいっぱいになるのに、一緒にいられないのはもっとイヤなんだ!」

英二は声を張り上げて私の両手を掴んだ。
顔を見上げると、くりくり眼がこちらを真っ直ぐに見ていた。
そしてすぐに眉尻を下げた。

「めんどくさいとヤツと思った?」

私は首を横に振った。
これは、気を遣っているのではない。
本当にそんなことは思ってないのだ。
寧ろ愛おしいと感じる。

「英二がそんなに私のこと想ってくれてるの、嬉しいよ」
「ホントに?」

聞かれたので「うん」と返したけど、
英二は納得いかないというような視線を当ててくる。
そして唇を尖らせて聞いてきた。

はさ、俺が他の女の子とかと一緒にいるのイヤだったりしないの?」
「んー、私はそんなにないかな」

私は性格的に嫉妬はしにくいようで、
英二の自由を束縛したくはないし正直にそう答えた。
だけど英二は眉をしょんぼりとさせた。

「……それはそれでサミシイ」
「あはは、ごめん。私はさ、英二が誰かと一緒に居て不機嫌になるとかはないって意味。
 ただ、いつだって自分が一番近くに居たいとは思ってるよ」

これは本当の気持ち。
私は英二のことが大好きで、大切にしたいと思っている。

「ホントに?」
「ほんとほんと」
「…わかった、信じる」

そう言ってぎゅっと抱き締めてくる腕からは、
愛しさ以上に不安が伝わってくるようで。
きっと英二は、私にはわからない辛い気持ちを抱えている。

英二に心配掛けちゃいけない。
他の男とか…元カレとか。
そんな存在は、チラつかすことすら避けるべき。
今日みたいな発言なんか論外。

とびきりヤキモチ焼きだけど、その分愛情の深い英二。
英二の気持ちを、私は大切にしたい。




改めてそう意識するようになって以降はいざこざが起きることもなく、
私たちの仲は順調に進展していた。
色んな場所に行って色んなことをした。
何も言わずに手を繋いで歩くのが自然になった。
手を繋ぐ以上のことも、少しずつするようになっていた。

「(そろそろ、かもな)」

私は、一つの覚悟を決め始めていた。


覚悟のきっかけは、この前のデートの帰り。
人混みから少し離れた夜の暗がりに紛れて深いキスを繰り返しながら、
英二はするりと私の腰の位置に手を滑り込ませてきた。
服越しではなく直に感じられる手の感触と温度に驚いて、
思いっきり目を見開くと、目の前の伏せられたまつげもゆっくり開くところだった。

「もう、帰る時間だね」

何事もなかったかのようにそう言って手を繋いで歩き出して、
英二は私を家まで送ってくれたけど…
布団の中に潜ってもそのときの手の感触を思い出しては胸のドキドキが治まらなかった。

近々、もっと進展がある、気がする。
そう思って心の準備を進めていた。

そんなある日に英二が「、来週の土曜日うちにおいでよ」って言うから
何度も話に聞いている大家族に会えるのは楽しみだと思ったんだけど。
「うち、その日オレ以外全員出掛けてるんだ」って。

「いいよね?」っていう確認の言葉に対して、
声を出せずにコクンと頷いた。

そして今日がその土曜日。つまり、
覚悟を持って待ちわびてきた日が、今日なのかもしれない。


「お邪魔します」
「どうぞー」

広い玄関。
そんな中に、英二と私が今脱いだばかりの靴だけが並ぶ。
英二の後に着いて、家の中を歩いて回る。

「ここがリビングでー、ここでご飯とかいつも食べててー、こっちはキッチンでー」

大きなおうちだ。
9人と各種ペットたちの大家族だもんね。
英二は普段ここで生活しているんだな…と考えながら、
失礼にならない程度にあたりを見渡した。
「エイジ、ウルサイ!!」とオウムが鳴いたのに対して
「もー、お前がうるさい!」と英二が反撃するから
私はおかしくって笑ってしまった。
「笑うな!」ってぷんぷんする姿が可愛くてなお笑った。
英二は「もー」と頬を膨らましたけどそんなやりとりが楽しかった。

「オレの部屋、こっち」
「うん」

誘導されるがままに階段をとんとんと登って、部屋に案内される。
下駄箱の様子からも、家に入って以降これまでの静けさ(ペットたち除く)からも、
家の中には私たち二人きりということは事実のようだった。

「これ、熊の大五郎ね」
「へー、思ってた以上に大きい」
「かわいいっしょ。こうやってすぐ倒れちゃうんだ」

ポスポスと頭を叩かれたそのぬいぐるみはコテンと左に頭を倒した。
確かに可愛くって、私は笑ってしまった。
ぬいぐるみもだけど、英二が可愛くって。

「こっちがオレのベッド。適当に座って〜」
「ありがと」
「んしょ」

促されて、二段ベッドの下段に腰掛ける。
英二は肩と肩が触れ合うくらいの位置に座ってきた。

近い…。
英二の距離の近さには慣れてきてはいたけど、
こうやって空間に二人っきりとなると、またちょっと違う。
シンとした沈黙が私たちの密着度合いを更に強調しているみたいだ。

「どう?オレんち」
「まず広くてびっくりしちゃった。ご家族がいたらもっと賑やかなんだろうね」
「にぎやかすぎるくらいうるさいよ!それなのに怒られるのなんかオレばっかでさ」
「さっきもオウムが鳴いてたね」
「そうなのオレばっか怒られるから憶えちゃって」

そんな雑談を交わして笑っていながら、手が握られた。
笑いが止む頃に手の力がきゅっと強くなって、目が合って、
英二の大きな瞳が半分くらい伏せられるのを確認して目を細めると、
肩に手が乗って、次の瞬間には唇同士が触れ合っていた。

付いて離して、感触を確認するようなキスを繰り返す。
回数を重ねるごとに少しずつ深くなってきて、
舌が絡まり合う頃にはやや息が荒くなっていた。

両肩を掴んでいた片方の手がするりと腰に回されて
もう片方の手はボタンに掛けられる。
プツンと外れる感触と同時、首元に唇が降りてきた。
慣れない感触に、体がビクッと震えた。

「えい…っ」
「安心して。絶対乱暴にはしないから」

瞳に射抜かれて、有無も言わせてもらえない。
これは、格好いい方の英二。

首元にキスが繰り返されて、
ボタンがまた一つ外されて、キスの位置が降りてくる。
ブラの上半分まで露わになった。
左の鎖骨から乳房に掛けたあたりに唇が寄せられる。
この胸の鼓動が英二の唇にも響いているんじゃないかって
余計なことを心配しなきゃいけないくらい、
心臓は爆発しそうに脈を打っていた。

初体験。
ついに、その時が来るんだな…。
緊張もするけれど、とてもとても幸せな気持ちだ。

実は、初体験に関しては一度だけ未遂があったのだけれど。


あれは今から2年前。
夏休みのこと。

秀一郎と私は付き合い始めて一年くらい経った頃だった。
秀一郎の家に着くなりすぐさま問題集を開く私たちだったけど、
汗で紙がしわしわになっちゃうねなんて笑いながら
冷房が効き始めるまでに勉強するのは一旦諦めて。

熱に浮かされたみたいだった。
目線は当てないまま、どちらともなく指を絡ませあった。
吸い寄せられるようにキスをして、
いつもならすぐ終わる行為が繰り返されて、
一回一回の密着時間が長くなるようになって、
合わさる角度が深くなっていって、
いつの間にか息が荒くなっていた。

秀一郎の手が私の胸を覆って、
形、大きさ、感触を確かめるように
ゆっくりと揉みしだいてきた。
そしてキスが、首元に降りてきた。

くすぐったい、ようでそれだけともちょっと違う、
甘美な感触に背筋が震えた。
気を抜いたら変な声が出てしまいそうな予感がして
下唇を噛み締めたことを憶えている。

このまま進んでもいいとは思っていた。
想像も覚悟もまだしていなかったけど、
秀一郎とだったら嫌ではなかったし、
いつかは進むステップだと思っていた。
だけど、秀一郎も今がその時だと思っているかがわからなくて。

胸がバクバク打たれてパニック状態のまま、
「秀一郎……勉強」とだけ言った。

その一言でハッと正気に戻ったように顔色が変わった秀一郎は、
「ごめん」と顔を背けて、私は制服を整えた。
その頃には部屋は涼しくなり始めていて、
「勉強、しようか」という秀一郎に頷いて、
私たちは再び問題集に向き直った。

その出来事がきっかけで気まずくなるようなことはなかった。
寧ろ、まるでそんな出来事などなかったかのようにいつも通りの関係が待っていた。


それから数ヶ月後に私たちは別れることになってしまったからこの続きはないのだけれど、
あのとき私が声を掛けなかったら私たちはどうなっていたのだろう…
ということは何回も思考した。
あくまでも想像で、真実は一生わからないけれど。

だけど、今になって思うのは、
あのときの私はまだ心も体も何も準備ができていなかったということ。
あの頃の私たちは今よりずっと幼かったし、
結局、お互いの本当の深いところまではわかりあえないままだったのかも…とは思っている。
それから2年が経過している。

あの頃は、秀一郎とは、迎えられなかったその瞬間を、
ついに英二と迎えようとしている。


深呼吸をして幸せにそっと目を閉じた……のに、英二はそれ以降触れてこなくて。
間があまりに長いから目を開けたら、
英二は眉をしかめて口を一文字に結んでいた。
何故。

「英二?」
、オレのことイヤ?」
「え?そんなことないよ…」
「…大石の方が良かったとか思ってるだろ」
「………え?」

意味がわからなかった。
なんでここで秀一郎が出てくるの。

「そんなことないよ。私は英二のことが好きで英二と付き合ってるんだよ?」
「じゃあさ!」

なるべく英二の感情を煽らないように喋ることを意識した。
ゆっくりめに、微笑みながら、穏やかな声色で。
だけど英二はしかめた眉を全く緩めなくて。

そんな英二の口から出たのは。

「大石のこと思い出してるみたいな顔すんなよ!」

まさかの一言に、ドキンと胸が鳴った。
私、そんな顔してた…?
確かにその頃のことが頭を過らなかったと言ったら嘘になる。
だけど別にその頃が恋しいだとか、その頃に戻りたいとか、
そんなことは考えていないのに。
私は目の前の英二のことを見ているのに。

「何言ってるの、思い込みだよ」
「でもオレにはそう見えんの!」
「そんなこと言われても…っ」

言い終わるより先、口を塞がれた。
かぶりつくように。強引に。貪るみたいに。何回も。
歯がぶつかって唾液が混じり合って手首を掴む握力が痛いほどに強い。
深く交われば交わるほどに苦しくって、
さっきまでの愛情の感じられるキスとは違う。
嬉しいどころか、怖いとさえ思って。
ようやく口を離したと思ったら、英二の口から発せられた言葉は。

、オレだけのものになってよ!」

ドンッ!

…考えるより先に手が出てしまった。
気付いたら私の手は英二の胸を押して突き放したあとだった。

「ごめん……でも」

じわりと涙が滲んだ。
先程までは、あれほど幸せな気持ちだったのに。

「そんな嫉妬心で抱かれたくない。触れられたくない」

気持ちが爆発していく。止められない。
普段はこんなことないのに。
頭に血が上っているというのか。

そんな私の言葉に煽られるがままに、
英二は敵対心むき出しの表情を見せてくる。
天敵を見つけたときの獣みたいだ。

「そりゃそうだよね…オレみたいなヤキモチ焼きなんかイヤだよね!」
「そんなことが言いたいんじゃない!」
「もういい!今日はやめにしよ」

そう言って英二は背を向けた。
私も体を起こして、乱れた襟元を整える。

別に、元々「今日しよう」なんて決めていたわけでもなかったし。
でも、もしかしたら今日は…なんて思いながら
色々準備していたのは、事実で…。

英二はいつぞやかのような無言モードには入らなくて
「DVDでも見る?」と提案してくれた。
気持ちはモヤモヤしていたけれど、私まで不機嫌に当てられるわけにはいかない。
結局、リビングに移動してチョコレーツのライブDVDを見た。
だけど会話も少なくて大して盛り上がらなくて。
夕ご飯時になる前に私は菊丸家を後にすることになった。

いつもみたいに「またね」と言えばいいのか、
先程の言い争いについて何かコメントをしたほうがいいのか、
考えながらたっぷり時間を取って靴を履いた。



立ち上がると同時に呼びかけられた声に振り返ると、
英二は玄関の上で顔を俯かせたまま言ってきた。

「ごめん。ちょっと…一人でしばらく考えさせて」

私も一人で色々考えたいということには同意できた。
しばらくってどれくらい…という疑問も浮かんだけれど、
「わかった」とだけ返して菊丸家を後にした。


そしてその後一週間、私たちは会話をしていない。


学校では授業中を含めてべったりなのが当たり前になっていただけに、
周りから異様な視線を向けられていることは感じた。
「あの二人、別れたのかな」なんて以前とは逆の形でざわつかれることになって、
やっぱりこういう噂の渦中にいるのは居心地が悪い。

英二は授業開始直前になってから仲良しグループで教室に入って来るようになっていた。
私にも話せる友達はたくさんできていたけれど
輪に入れば根掘り葉掘り聞かれる気がするのに近付く気も起きない。
今では家でしか使わなくなっていた受験勉強道具を久しぶりに空き教室で開くことになった。

この勉強にもどれだけ意味があるのか考え始めていたけれど…
そんなことを考えるよりも手を動かしている方が気が紛れて良かった。

「(英二は今、何を考えてどんな気持ちでいるのだろう)」

教室の端の方で大声を上げて笑っている姿を盗み見て、
また目の前の文章題に向き直った。


そんな日々が、もう一週間。
前はずっと一人が普通だったのに、
誰かと一緒に居るのが通例になってから一人になるのは、寂しいものだ。
何より、英二と会話ができていないのが苦しい。
どうしてこうなってしまったのだろう、と今回の出来事を振り返る。

原因は私が秀一郎のことを考えていた、と、英二が思ったから。
今回は本当に考えていたから私にも否はあるとはいえ、
まさか本当にエスパー宜しく考えていることを言い当てられたとは考えにくい。
英二は思い込みで話を進める節があるのは事実だ。

今回だけの話ではない。
付き合い始めてからのことを振り返ってみて、いや、
付き合い始める前まで遡っても、
私たちが言い合いになっている原因のほとんどが英二のヤキモチだ。
ここまでヤキモチ焼きの人と付き合うのは始めてだ。
自分自身があんまりヤキモチを焼かないタイプなだけに、
その心情もうまく理解しがたいことも要因の一つだ。

このまま付き合っていけるのか、急に不安になってしまった。
それ以外は楽しいことばかりなのに、この問題点は大きすぎる気がする。

どうしたらいいんだろう。
誰かに相談したいけど、誰に………。

「(………あ)」

そのとき頭に浮かんだのは、
相談相手には最適すぎて、タイミング的には最悪な人。
だけど私には他の選択肢を思いつくことはできなかった。



  **



帰宅して、私は意を決してスマホを開いた。
消していなかったはず…とその名前を探すと、
消されるどころか頻繁に使う番号にだけ設定された
ショートカットに残ったままだったことを知った。
最近電話自体使うことがあまりないから気付かなかった。

掛けるの、2年ぶりだけど。
…………。

深呼吸をしてから、ダイヤル。

電話を呼び出し始めてからのこの間が苦手だ。
出るのか出ないのか、出たらどう喋ろうか、
余計なことを心配しながら待たなきゃいけない。
いっそ出ないならそれでもいい……と思っていたけれど、
5コール目くらいで呼出音がぷつんと止まった。

「もしもし。久しぶりだな、どうしたんだ」

秀一郎は、出てくれた。

別れて2年近く、最後に話してから数ヶ月経つから緊張したけれど、いざ声が聞けたらほっとした。
相変わらず、人を安心させるような落ち着いた声だ。
その言葉からは何かを探っているような様子も感じられなくて、
別れ方も円満だっただけに私たちの関係は今も良好さを保てているのだとわかって安堵した。

「急にごめんね。ちょっと、相談に乗ってほしいことがあって…」
「俺で良ければ。どうした?」
「あのね、驚かないで聞いてね」

たっぷりと前置きをして、
一から事情説明を開始した。

「英二と付き合ってるだって!?」

珍しく秀一郎が声を張り上げた。
実はそうなの、と私は苦笑い。

「この前英二と会ったけど、新しく出来た彼女の惚気を散々聞かされたよ。
 やたら強調して「俺たち超ラブラブなんだぜ!」とか言ってたけど…
 もしかして対抗心燃やされてたのかな」
「あー…やるかも…」

そんなことしてたんだ、英二…。
そしてその相手が私だったことが今まさに秀一郎に知られてしまったわけで。
恥ずかしいことこの上ない。

「で、喧嘩でもしたのか?」
「…よくわかったね」
「付き合ってるだけの報告で掛けてくるタイプじゃないだろ」
「う…」

切り出すまでもなく、どれもこれも秀一郎にはお見通しだった。
この感じ、秀一郎だなと思って懐かしくなってしまった。
1を話せば10理解してくれる感じ。
英二は、1話したら残りの9は飛躍した妄想になりがちだからな…。


過去を振り返ってみて、当時も秀一郎との付き合い自体に不満があったわけではなかった。
お互いの家や図書館で勉強をしたり、
ゆったりと散歩をしたり、
たまに水族館やプラネタリウムに行ったり。
手を繋いでお互いの顔を見合っては「ちょっと照れるね」と笑い合うくらいの、
自分でいうのもなんだけどウブな関係だった。
一歩進みそうにもなったけれど…進みきれず、
そのまま受験勉強に集中するために別れた、と。

お互いレベルの高い大学・学部の志望だった。
付き合いに不満があるわけではなかったけれど、高2の2学期、
「受験に専念するために一旦距離を置こう。無事合格したらまた考えよう」という約束の元、
私たちはラスト一年強の受験戦争に駆り出された。
結果、秀一郎は合格。私は不合格だった。

卒業を間近に迎えてその結果を受けて、もう一度顔を突き合わせて話をすることになったとき、
本当は私は、また秀一郎と付き合えたら幸せだとは思っていた。
だけど悔しさとか劣等感とか色々な感情が混ざりあって、「復縁しよう」とは言えなかった。
私も志望校に受かっていたら、違う提案をしていたのだろうなとは思っているし、
もしも秀一郎が「復縁しよう」と言ってくれたならば私はそれを飲んだと思う。
だけど結局最後まで秀一郎からその言葉は出なくて、
私の発した「お互いの道を歩もう」の言葉がそのまま最終的な結論になった。

別れることは決まったけれど、前を向くための判断のつもりであったし、
私のたちの関係が粗悪になるということはなかった。
これからの進路についての話もした。

『浪人するのか?』
『滑り止めで青学受かってるからとりあえず行くことにした。仮面するかは…通いながら考える』
『そうか』

憂い気な表情を、すぐに明るい表情に変えたのを憶えている。

『青学はいい学校だから、自信を持っておすすめするよ』
『そっか、秀一郎って青学中等部出身だったっけ』
『ああ。青学では色々なことを学ばせてもらった…本当に』

勉強だけのことではないということは、その表情を見ればよくわかった。

『どんな道に進んでも、が幸せにやっていることを祈っているよ』

それが、私たちの最後の会話だった。
卒業式の日にもう一度話せるかなと思っていたけれど、
私たちはクラスも違ったしタイミングも合わなくって会話をすることはなかった。
紺色のブレザーの胸元に桃色の花を付けて、
壇上で卒業証書を受け取る姿を見たのが記憶の限りの最後だ。

それが数ヶ月後になって、こんな形で再び会話をすることになるだなんて。


「私にも原因がないわけではないんだけど、
 英二が思い込みで突っ走ってる部分も大きいというか…
 ものすごいヤキモチ焼かれて口利いてもらえなくなっちゃった」
「ハハ、英二らしいな」
「笑い事じゃないよ…もう1週間も会話してないんだから」
「俺も喧嘩して2週間口利かなかったことあるぞ」
「えー、本当に?」
「あるさ」

そう言って、秀一郎は中学の頃の思い出話をしてくれた。
不思議だな。
私と秀一郎が付き合っていた頃には、秀一郎は既にその体験をしていて、
だけど私は英二の存在すら知らなくて、
数年を経てまさか共通の知人としてこんなことを話すようになるなんて。

「というわけで…時間によって解決される部分もあると思うけど
 英二が曲げたへそを戻しやすいように話しやすいような
 雰囲気作りはするに越したことはないんじゃないかな」
「なるほどねー…」

秀一郎は大人だな。
落ち着きのある柔らかい声を耳に入れながら、
どうして私たちは別れてしまったのだろう、
などということを考えていた。

「(私たちは別の道を歩むことに決めただけであって、
 決して関係がうまく行ってなかったわけではなかったんだんだよな…)」

もしも一度も別れていなかったら、
復縁することを選んでいたら、
私たちは上手な付き合いを続けられていたのだろうか…。

、聞いてるか?」
「あ、ごめん!一瞬ぼーっとしてた」
「はは、大丈夫だよ。色々思うところもあるだろ」

秀一郎は爽やかに笑った。
今どんな表情をしているかが手に取るようにわかる。
大好きだった笑顔。
きっとその笑顔は今も変わっていない。
こうやって話していると尚感じる。
私は、本当に秀一郎のことが好きだった。

「また困ったことがあったらいつでも掛けてくればいいよ」
「ありがと」
「ああ。さえ良ければ、直接会ってもいいし」

直接会う…。
その想像を、した。
元々お互いのことが好きで、気が合って。
お互いの道を歩み始めて、
以前よりも一歩大人になった姿で出会う。

そんなことをしたら、私の気持ちは、移ろいでしまうのではないだろうか…。
秀一郎も狙ってる?それを。まさか。

「(一度も好きじゃなくなってはいないっていうのは、事実で)」

キス以上の過激なことはできなかった当時の私たち。
一緒に居られるだけで嬉しくて、幸せだった。
思春期ならではといえる感情を携えた記憶はどれも鮮やかで、
しがみつきたくなるくらい、大切な思い出が一杯ある。

「(じゃあ戻りたいの私は?あの頃に)」

あの頃の記憶に思いを馳せて、
最近の出来事を思い起こす。

幸せだった鮮やかで大切な思い出が一杯ある。それは事実。
だけど、思い出だから美しく見えるのだとも思う。
今も秀一郎と付き合い続けていたら、きっと私はこんなことは考えなくて、
そして、今のこの感情を、知ることもできなかった。

穏やかじゃなくて、かき乱されて、
苦しいのに…愛しくて、一緒に居たいと思う。

怒りに満ちたり、
今にも噛み付いてきそうだったり、
かと思いきや泣きそうだったり、する、
様々な表情の英二が頭に浮かんでは消える。

そんな英二、が、私の想像の中で、
花が咲いたような笑顔を浮かべる。

そして、嬉しそうに「」って、私の名前を呼ぶ。

英二。
英二……。

「…わない」
「ん?」
「会わない。秀一郎には会えないよ、私」

返事が来ない。
秀一郎も驚いているかもしれない、私の発言に。

私だって驚いている。
自分の発言に。
自分の中に抑えきれないような熱い感情があることに。

胸が詰まって、涙が滲んだ。

「やっぱり私、英二が好きだ」

電話越しで良かった。
この顔を見られなくていい。
目元に溜まった涙が瞬きごとに押し出されていく。

でも秀一郎は気付いちゃうかな、
ほんのわずかな鼻声でさえ。
だって秀一郎だから。

「すごくヤキモチ焼きで、正直手を焼いてるけど…
 それでも困っている以上に、一緒に居たい。
 くるくる変わる表情を見ていたい」

笑うだけじゃない。
すぐ怒るし泣きそうにもなるし簡単にヘソ曲げるし。
でもそれは、自分の感情にそれだけ素直ということで。
英二の瞳を覗けば、いつだって真っ直ぐに気持ちが伝わってきた。

「私のことを好きって言ってくれる真っ直ぐな感情を、大切にしてあげたいの」

そう言ってから、数秒間の間があってから、
秀一郎がふぅとため息をつくのが聞こえた。

「俺は、また惚気を聞かされるために呼び出されたのかな」
「あ、ごめん!」
「冗談だよ」

秀一郎はハハッと笑ったけど、悪い冗談だ。
いや、それもわかって言ってきているのかもしれない。

「嬉しいときは誰よりも嬉しそうに喜ぶし、嫌なことがあればむき出しにして怒る。
 …とても英二らしいし、それが英二の一番良いところだよな」

秀一郎の表情が手に取るようにわかってしまう。
それが嬉しくて、悲しい。

「会うのはやめておこう。変なこと言ってごめんな」
「ううん」

謝ることなんてないのに、本当に秀一郎らしいというか。
たまにはもっと自分の欲望に素直になっていいんじゃないの?なんて。
私が言えた口じゃないか。

「秀一郎は相変わらずだね」
「お互い様な」

そう、お互い様。
秀一郎は秀一郎で、私は私。
立場や状況が変わっても、根っこの部分は変わっていない。

「あ、だけど」
「ん?」
「いやその、相変わらずとは言ったけど…、前より感情豊かになったなって」

秀一郎はそんなことを言う。
思いがけない一言に、きょとんとしてしまう。

「…本当に?」
「ああ。自覚はないのか?」
「ない。けど」

ぱっと花が咲いたように笑うその顔が頭に浮かんだ。

「心当たりはある」
「たぶん、その通りなんだろうな」

いつの間に当たり前になっていたんだ。
花咲く笑顔の隣に居ることが。
くるくる変わる表情のその隣で、私もまた釣られていることが。
近すぎて気付くことができていなかっただけで。

もしかしたら私たちは、急速に距離を近付けすぎたのかもしれない。
この一週間は辛かったけど、良い機会になった。
またちゃんと向き合おう英二と。私も。

「英二をよろしくな」
「…秀一郎も大概世話焼きだね」

そんなことを言って笑いながら、思い出したよ。
秀一郎と付き合っている頃、私は“エージ”にヤキモチを焼いていたことに。
たまに話題に上がったり、デートしようとしたら先約があるというので認識したその存在。
二人の間の友情はどうしたって超えられそうになくて、
なかなか嫉妬心を抱かない私が元カレに対して唯一妬いた相手。

……だっていうのに。
英二はこっちの気も知らずにヤキモチ焼いてばっかいて。

「(……まったく)」

大きくため息を吐きながら、私は笑顔になっていた。
ああ、心が晴れやかだ。

「もう、電話なるべく掛けないようにする。万が一にも変な誤解招きたくないから」
「そうか。うん、その方がいいかもな」
「あ、でもどうしても困ったら連絡する」
「はは。わかったよ」

笑い声を聞きながら、得も言われぬ感情。

初めての彼氏。
高校生らしい清い交際。
一緒にすること全てが新鮮だった。
振り返ればどこまでも輝いている。

でも思い出はどうしたって美しいものだ。
いつまでもしがみついているわけにはいかない。

「それじゃあ、切るね」
「ああ。またな」
「うん。また」

…プッ。

小さな振動が指先に伝わって、通話はあっさり切れた。

フー…と天井を見上げながら長いため息。
頭も心もすっきりしていた。

なんか、色々吹っ切れちゃった。

視線を横に向けて、クラッチバッグを手に取る。
中には、参考書と問題集が数冊。
………よし、決めた。

「(これ早速秀一郎に報告したいな…いやいや、やめとこ)」

そうだ。

思い立って、私はスマホを取り出す。
電話帳を開いて、『大石秀一郎』に設定されていたショートカットを…削除。


電話帳を閉じて、別のアプリを開いて、
メッセージよりも通話のやり取りが多いその人物名をタップする。 

気持ちの整理がついているのは私だけだ。
出てくれないかもしれない…。
でも、話しやすい雰囲気作りをするに越したことはないっていうし…。
うーん……。

悩んだけれど、意を決してタップした。
意外にも、コールはすぐに止んで、繋がった。

「もしもし、英二?」



  **



先日の通話では深い話はせず、会う約束だけ取り付けた。
その翌日である今日、早速英二はうちに来ることになった。

「おじゃまします」
「いらっしゃい。どうぞ」

英二は想像よりもずっと丁寧に靴を揃えて上がってきた。
そのまま私の部屋に来てもらう。

ベッドに腰掛けてもらうか…と考えていると。

、先にオレから喋らせて」

肩をガッチガチに強張らせた英二がそこにいた。
立ったまま、というのも。
「とりあえず座って」と促してベッドに座る。
英二も隣に座る…と思ったのに。

「まず…ごめん!自分の感情を一方的に押し付けちゃって」

英二は床に正座してぺこんと頭を前に倒した。

「オレだって本当はヤキモチ焼いたりしたくない…。けど、
 どうしてもイヤな気持ちになっちゃうことがあるんだ」

ぎゅっとズボンを握りしめるのが見える。
そして、ガバッと顔を上げてきた。
丸くて大きい二つの瞳に見つめられる。

「でも…のことも、大石のことも、二人とも大好きだから信じたいって思ったんだ」

ここまでの英二の弁解を真顔でまじまじと聞き入ってしまった。
英二の言葉と、自分の気持ち。
それらが交差する部分。
それをどう伝えようかと考えていた。

「ヤキモチ焼いちゃうこと…これからもあるかもしれないけど、
 できるだけ我慢するし…不機嫌な態度とかもなるべく取らないようにするし…」

英二は顔を上げたまま、視線だけが少し下に逸れて話を続ける。
声が少しずつ小さくなっていて、
ああ、私のこの顔がいけないのかもしれないと自分の鉄仮面に今更気付いた。

返さないと。英二に貰ったものを。
まず、伝えよう。

「英二。私、決心したことがあってさ。聞いてくれる?」
「なに…?」
「実は私さ…仮面浪人生だったんだよね」

理解しきっていない様子の英二は、眉だけを不安そうに潜める。

「仮面浪人、って?」
「大学に通いながら浪人生やってるってこと。
 つまり、他の大学を受けなおそうと思ってたんだ」
「そういえば、いつもすっごい勉強してたよね」

天井を見上げて思い出した風な英二は、はっとして顔を強張らせた。

、他の大学行っちゃうの?」

大きな瞳がそれでも白目に包まれるくらいに瞼が縦に大きく開く。

「もしかしてオレ、フラれる?」

英二がみるみる涙目になる。
その声は震えていた。

「ヤダよ、オレ…」
「もーだから英二は!話は最後まで聞いてっていつも言ってるでしょ!」

ビクッと怯えた表情をする英二。
そんな英二に向かって、私は笑顔。

「仮面浪人、やめることにした」

きょとん、と英二の表情が無になった。

「……あ、そなの?」
「うん、やめた」
「そっか、よかったー…でいいのかな?」
「うん。英二のお陰だよ」

ハテナマークを浮かべて表情を伺ってくる英二に
コクンと頷いてみせた。

「教えてくれたよね、勉強以外にも大事なことがあるって。
 始めにそれ言われたとき、正直あんまり納得いってなかったんだけど…
 英二のお陰で、私変わったんだよ」

本当に感謝している。
英二のお陰で、英二と一緒にいる時間も、
英二と離れている時間も、
ずっと充実するようになったこと。

「友達たくさん出来たし。バイトもするようになったし。
 勉強以外も大事、って、今なら英二が言いたかったことわかる」

こんな気持ちになって、悩んで、苦しんで…。
きっと、勉強だけを続けていたらこんな気持ちになることはなかった。
参考書や問題集とにらめっこばかりしている頃の私は
周りは楽しそうに遊び回っているのに自分だけが辛い思いをしているような気がしていた。

だけど違う。そうではなかった。
悩みは人それぞれで、
色々な経験を積むから得られることがあって。

全部、英二がくれた。

「こんなに素敵な恋人が作れるだなんて、青学に入ったときには思ってなかったよ」
「…ホントにぃ?」
「嘘言うわけないじゃん」
、これからもオレと付き合ってくれる?」
「当たり前でしょ」

立ち上がった英二にぎゅっと抱き締められて、「よかった…」って、
こんなに弱々しい英二の声初めて聞いたってくらいか細い声が耳元で聞こえて、
私もぎゅっと抱き締め返して、質問をする。

「私のこと、大石くんより好き?」
「好きに決まってるじゃん!」

ガバッと肩を掴みながら言ってくる表情は真剣そのもの。
迫力に押されそうになるくらい。
だけど飄々として聞いてやる。

「本当に?」
「ホントだよ!なんでそんなこと聞くの!」
「英二が私にしてきたのと同じことだから」

いや、元カレと友達とで比べるのは同じじゃないか?とも思ったけど、
充分堪えたようで「それは…だってさ……」なんて
口を尖らせて小声になる英二は、あまりにも愛おしくって。

「あっ、笑うなっ!」
「アハハハ、ごめんごめん」

感情豊かになった、か。
こんなに大口開けて爆笑なんてしたの、いつぶりだろう。

英二のお陰だよ。
英二は先に笑顔になってくれるから。
英二がいつも幸せな気持ちをくれるから。
英二のことが、大好きだから。

英二。英二。

「ね、英二」

片手ずつ、両手を取る。
顔を見上げる。目を合わせる。

「私を、英二だけのものにしてよ」

それは、この前言われた言葉のお返し。
今なら思えるから。
英二になら、預けてもいいって。

笑顔でそう伝える私に対して、英二は不安げな表情。
英二の手に力が籠もる。

、無理してない?オレの気持ち、重たいって思ってない?」
「思ってないよ。それくらい好きでいてくれてるってことなんでしょ」
「うん!オレ、を好きな気持ちだったら絶対誰にも負けない!」

意気込んだ表情で前のめりにそう伝えてくる英二に対して、
「私もだよ」と、さらりと返してやった。
拍子抜けしたような表情が目の前に見えた。

考えてみれば、私はあまり伝えてきていなかったかもしれない。
英二の想いを受け留めることに一生懸命過ぎて。

「たぶんね…英二が思ってるより、私は英二のことが好きだよ」

もっと伝えていこう。
私がどれだけ英二が好きで、大切にしたいと思っているか。

「これからもぶつかり合いはあるかもしれない…でもいいじゃない、それで。
 たくさん喧嘩しよう。それで、そのたびに仲直りしよう。
 何回でもヤキモチ焼いてよ。何回でも言うから、英二のことが一番好きだって」

笑顔でそう伝えた。
その瞬間、英二は俯いた。

「ダメだ…オレ」
「えっ?」
「ごめん、ちょっと…泣きそう」
「えっ嘘泣かないでよ!」
「ダイジョブ、ガマンする。の前ではカッコよくいたいから」

目の端を擦ってそういう英二は、あまりに愛おしくって。
私は、ふって笑ってしまった。

「手遅れだよ」
「えええ!」

私もう、知っちゃってるもん。
英二はどうあがいても可愛い系だってことも、
だからこそたまに見せる凛とした姿がとびきりカッコイイことも。

「手遅れだよ〜」
「そんなこと言わないでよーオレがんばるからさ!」

肩を揺さぶってくる英二の手を制して、一言だけ返す。
私は今、十分過ぎるほどに幸せだということを。

「そのままでいいよ」

そのままがいいよ。

英二の頭にハテナマークが浮かんでいるのが見えた気がした。
表には出さないけど、心の中で笑った。
そのままがいいんだよ、英二は。

「…あ、一つ言い忘れてた」
「何?」
「うちさ、両親共働きで夜遅くまで帰ってこないんだよね」

そう伝えたあとに、一瞬の沈黙が走る。

「どういう、意味?」
「こういう意味」

困惑した風に聞き返してくる英二の肩を掴む。さっきの逆みたい。
そしてそのまま後ろに倒れ込んだ。
英二はバランスを崩して私の顔の両側に手をついて、
私には英二と真っ白な天井しか見えない。

「…ホントに?」
「うん」
「ホントにホントに?オレ無理させちゃってない?」

言葉では返事をしない。
ぎゅっと腕を伸ばして首に巻き付いて、キスをした。
今気付いたけど、私からしたの、初めてだったかも。

「嬉しい。幸せだよ」

そう伝えて、笑顔を見せた。
英二は笑い返してこなくて、ぐっと眉に力を潜めて、
もっともっと強く抱き締め返された。
そのままキスを繰り返しながら、
英二の手は私の体の上を順に滑って、
一つまた一つと隠されている部分を露わにされていった。

英二。
私、英二のことが大好きだよ。

触れ合う肌が心地好い。
こんなに幸せなことなんだ。
愛する人に抱かれるということが。

どんぐり眼が穏やかに揺れる。
英二の瞳は、海みたいだ。
いつまでも見つめていたいと思ったけれど、
触れる箇所が移るごとに
その余裕も段々に失って、
私はそっと瞼を下ろした。
























主人公いい子か…!?(びっくり)
↑ってメモに書いてあって笑ってしまった(何回でもヤキモチ焼いてよの下り)

幸せだったけど一緒に居ないことを選んだ大石と、
嫌な気持ちになっても一緒に居たいと思える英二の話。
アドバイザーポジで大石が出てくるの、さすが英二編って感じ…w

感情移入しすぎてマジでめちゃくちゃ英二のこと好きになってしまったww
いえねこのシリーズさ、大石に激重感情抱いたまま他のキャラと付き合うじゃん、
特に英二は元々好きだし大石との距離も近いからめっちゃ熱入れて書けた。
書いてて終始楽しかった!楽しすぎて長くなったよーw
英二お誕生日おめでとう!!


2020/07/27-11/28