* Marry-Go-Round? *












―――日曜日。

3年2組一同、バス車内。



学級の交流を深めるため、とかいう謎な理由のお陰で、

私たちは大切な一日を潰して遊園地に来ている。



…まあ、楽しそうだからいいんだけど。



「くじは全員引いたかー?」

「「はーい!!」」



バスの中で、先生が空の箱を掲げて楽しそうに叫ぶ。

何やら、行動の班決めらしい。

くじには1から7の数字があるらしい。

一つの班が5,6人になるっていう計算だ。


自分が引いたものを、開いた。

4。



私、奇数の方が好きなんだけどな…と、それはいい。



「誰か、4番の人ー?」


友達に聞いて回ってみた。


というか、一通り女子は巡った気がするんですが。

(※バスが走っている間は歩き回ってはいけません)
(でも、先生も何も言ってこないし)
(まず先生がくじ引かせるために歩き回ってたし)


…誰も居ないし。


「(こ、これはどういうこと!?)」


と、その時聞こえた声。


「お、おれたち同じじゃん!」

「ホントだ、全員4」

「マジで、ラッキー!」


振り返った。

男子の集団だった。

くん(ちょっとカッコイイ)とその取り巻き。



何ー!?

もしかして、私以外全員男子だったりしない!?

ちょっと待ってよ!

先生、どうして男女別のくじにしなかったの!

偏ってるわよ!!



ま、でも班なんて有って無いようなものでしょ。

絶対、遊園地の入り口潜った瞬間に
いつもの仲良しグループに散らばるに違いないわ。




  し か し 。




そうはいかなかった。


クラスメイトたちは、同じ番号の人を見つけると、どんどん旅立っていく。

さてはみんな、これを機に彼氏でも捕まえる気満々ね!?


それだったら、班の男子の割合が多い私は有利っ!

よっしゃ見てろよ…。


さて、戦友(違)はどこ?




その場にぽつんと残ったのは。


「……」

「……」


横を見た。

向こうも同じく。


目が合う。



「あー、学級委員だ」

「…さん」



って、なんで二人しか残ってないのよ。

くんは?その取り巻きは?

入り口に入るまでに迷子なんて言わせないわよ。


迷子じゃないのに、ここに居ないってことは…。


さん、番号は何だい?」


大石くんはそう訊いてきた。

私は、見なくたって分かるくせに
わざわざポケットの紙を確認してから言った。


「4番」

「あ、良かった。俺もだよ」


取り残されたかと思った、と大石くんは笑った。


…冷静になって、学級委員様々。

この状況、どう見ても取り残されたでしょ!



「あれ、しかし班って最低5人はいるはずだよな」

「うん。さっきくんたちが4番だって騒いでたけど」


ふーん、と大石くんは頷いていた、けど。



「…えっ?!」

「な、なに?」

なら…さっき一番に走って出発して行ったぞ」



え。


それって、つまり…。



「(男子4人でズラこきやがった!?)」


「うーん、困ったな」



学級委員サンは一人で唸ってるし。

頼りにならなさそうな印象ですが…?くそぅ。

どうせ彼氏にするならくん狙ってたのにな。
(私の趣味の問題かもしれないけど、かなりタイプ)


しかもよりによって学級委員と二人きりなんて運が悪い。

規則違反なんて絶対させてもらえないし…はーぁ。

先が思いやられる…。



「とりあえずー…」

「はい…」


こっちも敬語になっちゃうしさ。
あーあ。今日一日どうしろっていうの。
途中で別のグループを見つけたら合流するが良いか…。


ぐるん、とこっちを向いた大石くんは。




「急いで追いかけよう!!」


「え、えぇぇぇ〜!?」




手、が。




がしっと握られて、そのまま引かれるがままに足も動かす。


さすが学級委員…決まりを破るものは許さない。
本気で残り4人の男子を見つける気だ!
クソ真面目にもほどがある…なんてことっ。


どたばたと二人分の足音がうるさい。
手を引かれているからなのか、
いつもより速く走れている気がする。

周りの人をどんどん追い越していく。
視線を浴びるのも何故か誇らしく感じる。


頬をかする風が気持ちいい。
いっそのことこのまま見つからなければいいとさえ一瞬思った。


しかし。



「大、石、くん」

「どうした?」

「当てが、あって…走って、るのっ?」



ぴたっと。

そこで足を止めた。


漸く酸素を満足に吸える状態になった私は、
肩でぜいぜいと息をしなきゃいけないほど必死に走っていたことに気付いた。

大石くんも気付いた。


「あ、ごめん!俺…無我夢中で走ってて…」

「いや、いいんだけどさ…」

「女の子には大変だったよな。ごめん」


そういって、ベンチに座るように促してくれちゃったり。
さすが学級委員。他人への配慮もばっちり。

ところで…。


じっ、と自分の手のひらを見つめる。

握られた。まともに握られた。
ここ最近で男子に手を握られるなんて体験無かった。
ドキドキしてるのは、走ったからだけなのか。


さん」

「はいっ!」


びくっと肩をあげる。
「そんなに驚かなくていいのに」
とか苦笑っぽい微笑を浮かべながら、大石くんは


「…どうしよっか」


果てしなく頼りの無い発言をした。






  **  ここで15年の時が流れます(笑)






とりあえず落ち着いて遊園地のマップを手に入れた私たちは、
これからどのような行動を取ろうか作戦を立てた。



「残り4人を見つけるってのは変わらないわけね?」


「当たり前だろう!?何が問題でも起きたら班の連帯責任だ!」



真面目なのもいいけどさー。

はあ。


「(仮にも、女子と二人きりって状況なんですけど、わかってるー?)」


いや、わかってないな…。

地図と周囲の景色を照らし合わせて首をきょろきょろさせてる様子で理解した。



さっき、走りながら握られた、手のひらを見つめる。

そして、感触を思い出す。


手が大きくて、厚みがあって、引く力も強くって…。


男子って、そうなんだ。
それもそうか。

とか、勝手にドキドキしてたのに…。



「俺が分析するに、彼らは絶叫系なんかが好きなんじゃないかな。
 人気なアトラクションは混むし、列に並んでいれば追いつけると思うんだ!」



俺が分析するに、ジャナイヨー!!!(叫)

まあな、大石くんだもんな…
クラスで一番の真面目くんだもんな…。



『もうさ、このまま二人っきりで行動しちゃわない?』


なーんて誘惑する気にもならない………。



いや、いい人なんだけど!

めちゃめちゃいい人なんだけど!

でも付き合いたいとかそういうんじゃなくない!?


そもそも髪型謎すぎだし!(こら)



「……行こっか」


「ああ。まずはこっちだ!」



地図を掴んで張り切った大石くんが指差す方向へ二人で進んだ。









歩き回ること、かれこれ30分以上。



「このアトラクションも外れか」



男子に人気そうな絶叫系、ジェットコースターとかフリーフォールとかは一通り見た。
遊園地の中が広いから見て回るだけでかなりの時間がかかってしまった。


「こんぐらい掛かっちゃうとさ、もう列の真ん中へんとかに進んじゃってるんじゃない?」

「そうだなあ…」


腕を組んで考え込んでる大石くんを斜め下から見上げる。

顔は、カッコイイんだよなぁ…。

……くんみたいなのの方がタイプだけど(まだ言う)



「もうさ、開き直って遊園地楽しんじゃわない?」



私は今度こそそう提案した。

だってさ、仮にもクラスの交流を深めるために私たちはここに来たんだよ?
人探しで時間を費やすのはもったいないっていうか…。


だけど大石くんは真剣な顔つきで。



「何を言っているんだ!?班員と合流もできていないのに
 アトラクションを楽しめるなんてわけないだろ!!」

「あ、そっか……そう、なの…?」



大石くんが真面目過ぎて何が正しいのかよくわからなくなってきた。


確かに正しくは班行動をするべきなんだけど…。
はぐれちゃったからには仕方ないってならないの…?
(絶対他の班もバラバラに動いてると思うんだけど)
(なんなら、私もさっさと班員と示し合わせていつもの女子メンバーと合流したかった)
(でも意外とみんな男女仲良く班行動してるのかな…)
(どうしよう帰りのバスの中カップルだらけになってたら……)




結局、私たちは園内をぐるぐる歩き回ることになる。

何にもアトラクションに乗らずに…。




途中で他のクラスメイトたちにすれ違うたびに「あれ、2人?」って聞かれるから

その都度「他のメンバーとはぐれちゃって」って事情を説明して…。


なんか噂が立っちゃったりしたらイヤだなぁ…。

大石くんも変な噂ができたらきっと迷惑だと思うんだけど
そんなことには気に掛けない様子で「次はこっちに行ってみよう!」とか張り切って仕切ってる。

いい人…ではあるんだけど……。




「もうあらかたアトラクションは見たと思うんだけどな」

「建物の中かもね。これとか入ってみる?」

「ああ、そうしよう」


そう言ってフラっと立ち入ったら…



「それでは間もなく開演しますので空いてるお席にお着きください」


「「……え?」」



周りを見渡すと、小さいお子さんを連れたご家族ばかりが着席している。

前方にはステージ。


これは、何か子ども向けのショーでも始まる予感…!?


「どうしようか…」

「この中には居なさそうだよ。出る?」


引き返そうかと思った途端、メルヘンな音楽が鳴り響いた。


「ヤバ、始まっちゃいそう!」

「と、とりあえず座ろう」


急いで空いているベンチに座る私たち。

周りの人たちに合わせて拍手をして、そのまま開演を見届けた。


「(な、何故こんなことに…)」


拍手をしていると次から次へと遊園地のマスコットキャラクターたちの着ぐるみが登場して、
子どもたちの絶叫に近い歓声が湧き上がった。

横を見ると、大石くんも私の視線に気付いて、
二人で目を合わせて苦笑いをした。




約30分後、終演。


ぱちぱちと拍手をする私たち。



「結構…見応えあったな」

「思ったより面白かったね…」



意外とあっという間だった。

普通に楽しかった…かも…。



「悪者が出てきたところ、ハラハラしてしまったよ」

「わかる!子どもたちと一緒に『ガンバレー!!』って言っちゃったもん」

「そうだったのか、気づかなかったな」



はははって大石くんは目元を細めて柔らかく笑った。

こんな笑い方もするんだな…。


思えば、大石くんっていつもクラスを仕切ってる姿は見慣れてるけど
こうやって二人だけで雑談するこってほとんどなかったかも…。


「ん、どうかしたか?」

「え?いやいや!」


うっかり顔を見つめてしまった!

別に!見とれてたとか!そんなわけでは!!


「ところで…お腹すかないか?」

「すいてる超すいてる!」

「ご飯でも食べようか」


班員とは合流できないけど、さすがに食事しないわけにはいかない。

私たちは、ハンバーガー屋さんを見つけてそこで食べることにした。


「はーー結構つかれたね!」

「そうだな、たくさん歩いたもんな」

「だけど見つからないね」


結構園内も広いしなー…。

クラスメイトたちにも何組かすれ違ったけど
全くすれ違ってない人たちもいるし。

どこ行っちゃったんだろ、くんたち。


「せっかくだから早く合流して、私たちもアトラクション乗ったりしたいよね」

「あ、ああ」


なんだか歯切れのよくない反応。


「どうしたの?乗りたくないの?」

「実は絶叫系とかってあんまり得意じゃないんだよな」

「そうなんだ!じゃあ遊園地だと何が好きなの?お化け屋敷とか?」

「うーん、お化け屋敷もそんなに好きってわけじゃあ…」


……それじゃあ遊園地つまんないじゃん。

でもなんかしらあるでしょ?


「……メリーゴーランドとか?」

「それは…さすがに恥ずかしいかな」


いやいや。

もう選択肢ないんですけど(笑)


「えー…じゃあ何」

「一番好きなのは、観覧車とかかな」

「あ、なるほどねー」


納得。

スリルはないけど、綺麗な景色が見られるし。

観覧車の中って時間がゆっくり流れる感じがするよね。

落ち着いた雰囲気のアトラクションって、遊園地だと珍しいかも。

それが好きって大石くんらしいな。



「でもさんは本当は色々乗りたいだろ…ごめんな」


ホントだよ!


って言いたいところではあるけれど。

あまりに大石くんが申し訳なさそうな顔で言うから
本当にいい人なんだよなぁと思って。


「まあ、これはこれで探偵ごっこみたいで楽しいよ。さ、早く見つけよ!」


そう言ってハンバーガーの最後の一口を放り込む。


大石くんは「そうだな」と笑ってコップの中身を飲み干した。

私もコーラをストローでちゅーちゅー飲み干して「よっしゃ!」と立ち上がる。


そして当てなく歩き始めたけど…。



「…見つからないな」

「見つからないねぇ」

「もう結構時間も経ってるし、朝見た絶叫系の列をもう一回見て回ろうか」

「うげーもう1周かー…」



午前中だけで結構つかれたのになー…。

そう思って、ちらりと横を見たら、見覚えのない建物。

そしてその中には…。


「大石くん」

「ん?」

「もしかして、大石くんああいうのだったら好きなんじゃない?」


袖を引いて指差した先。

そこは…射的やクレーンゲームなんかのレトロなゲーセンが集まったコーナー。


「…ご名答」

「やった大当たり〜!じゃあ、入ってみる?」

「そうだな、たちもこの中にいるかもしれないし…」


そんな理由付けをしながら、私は気付いているよ!

大石くんが明らかにそわそわしていることに!!!

絶対こういうの大好きなんじゃん!



中に入ると、そこはアーケードゲームの宝庫!

エアホッケーとかパンチングマシーンとかレースゲームとか。
(旧式のプリ機もある!四コマ漫画作れるやつ!)

実は私もこういうの結構好き!


「ね、ちょっとだけ遊んで行こうよ!」


今までだったら釣られなかった大石くんだけど…。


「じ、じゃあ、一回だけなら……」


そう言ってきょろきょろ、どれを遊ぼうか探している視線。

そしてエアホッケーをやることに。


「よっしゃ絶対負けないからねー」

「俺だって、手加減しないぞ」


大石くんが100円を入れてくれて、上からパックが落ちてきて、ゲームスタート!



「おりゃおりゃおりゃー!!」

「おっ、結構やるな」



カツンカツン、ガッツガツ、スマッシュをしてゴールを決めて防いで取って取り返されて…。

汗を掻いて息も上がってくる頃。


「やった、勝利〜!!」

「やるじゃないか」


両手を上げて喜ぶ私。

あー楽しかった!


さてそろそろ探索に戻らないとかな…?


と思ったけど、大石くんは財布から100円を取り出し…。



さん……もう一試合だけやらないか」

「あれ、学級委員様〜?(笑)」

「いやあ、ここに居たらたちも来るかもしれないし…」


そう言いながら、絶対がっつり楽しんでるじゃん!!

なんだかんだ言って大石くんも男子だなって感じ。ウケる。

そして私も楽しい。


「よし、これで1勝1敗だな」

「やるわね…じゃあ、次はフリースロー対決で勝負よ!」

「望むところだ!」



そんなこんなで、

気付いたら荷物も置いて制服の上着も脱いで

あれもこれもプレイした。


勝って負けてで一喜一憂して、

協力戦で白熱して、

二人で感情を共有するのが楽しかった。


いつ間にか、時が一気に流れていた。



「つい熱中してしまったな…」

「めちゃくちゃ楽しかったんだけど」


せっかく遊園地に来ているというのに

もうこんなのゲーセンでいいじゃん、

みたいな楽しみ方をしてしまった!


一旦降ろしていた荷物を再び持って、大石くんの手元を指差す。



「大石くん、それ持って帰るの?」

「ああ、これか」



それは、各種ゲームを攻略し最終的に手を出したクレーンゲームで取れたぬいぐるみ。

今日のショーでも出てた、この遊園地のマスコットキャラのものだ。


「妹にあげようかなと思って」

「そっか」


そうなんだー、妹いるんだー…。

もしかして大石くんが要らないならもらっちゃおっかなとか思ってたけど

そっかー、ならいいや…。


と思ってたら。



「…やっぱりさんもらってくれないか?」

「えっ、私?」

「ああ。こういうのそんなに好きじゃなかったような気がするような…」



大石くんはそんな曖昧なことを言っていて。

これは、私に気を遣ってくれたのかしら…?



「あっ、こんなのもらっても嬉しくないかな?子どもっぽすぎるよな!?」



顔を赤くした大石くんはあたふたしていたけど…

その手からすっとぬいぐるみを受け取った。



「ううん、嬉しいよ!ありがと!」



さっきまで慌てふためいていた大石くんは「良かった」と笑った。

その優しい表情に、胸の奥の方がぽっと温かくなる感じがして。


「(む……?)」

「わ、もう薄暗いな」


建物を出ると、少し日が傾き始めていた。
かなり長いこと遊んじゃったもんね…(楽しかった)


「集合時間まであと30分と少しか…なんとそれまでに合流したいな」


腕時計と睨めっこしながら大石くんはそう言った。

だけどぶっちゃけ、私はもうくんたちとかどうでも良くなってて。


「大石くん、もうよくない?合流したって一緒に行動するような時間残ってないしさ…」

「いや、最後まで諦めずに探していたという事実が大事なんだ」

「んー…それもわかるけど」



それよりも、どうせなら最後まで思い出作りたいな。


なんて。

こんなことを思うのは、変かな?



クラス1真面目な学級委員と終日行動を共にすることを余儀なくされて。

たったそれだけのことだったのに、この一日は、

私にとって特別な思い出になりそうな気がしていて。



でもそう思ってるのは、自分だけなのかな…。




なんとなく沈黙になった。

昼間より人通りは減っていて、

くんたちはおろかクラスメイトも誰も見当たらない。

もしかして集合時間過ぎてないよね、って

時計を確認するけどさっきから数分ずつしか進んでなくて

無言のままで園内を歩いた。



さん、ごめんな」



ぽつりと呟くように大石くんがそう言った。


「今日はみんなで交流を深めて思い出を作るための日だったのに
 俺なんかと二人でつまらなかっただろ」


って下がり眉で言うから。


「そんなことないよ」って答えた。

これは、正直な気持ちだ。



「忘れられない思い出になりそう」



いつの間にか、電飾が点灯している。


集合時間まで残り15分。



「もう俺たちも集合場所に向かわないとまずいな」

「うん。結局合流できなかったね」

「そうだな」


歩き回り過ぎて完全に熟知した園内。

マップを取り出すことなく、私たち2人は自然と集合場所へ歩き始める。


一日が、終わるんだなぁ。

終わっちゃうんだなぁ…。



ふぅとため息をついて、視線を横にずらすと。



「あれ、くんたちじゃない?」



指差した先、いかにも一日遊び倒してました感満載の男子4人組の姿がそこにあった。

楽しそうに話しながら近づいてきたその集団は、
私たち2人に気付いて声を掛けてきた。



「あれ大石とじゃね?2人?」

「何、お前らって付き合ってたの?」

「バッ…何言ってるんだ!!お前たちが勝手な行動を取るから…!」

「え、もしかしてお前ら4班?」

「そうよ!」

「マジ?超ウケんだけど」



そう言って4人はゲラゲラ笑った。

ちょっと!こっちの気も知らないで!!!



はーでも、最後の最後でなんとか合流できたかー…。

特に問題が起きたわけでもないし、別行動に対してお咎めとかもないとは思うけど。


「なんとか合流できて良かったな」

「なんとかね…」

「本当に探偵ごっこで一日終わってしまったな」

「随分ふまじめな探偵だったけどね」


そう言って、さっきもらったぬいぐるみを顔の高さに掲げて振る。

それを見て大石くんは、ハハッてイタズラな顔で笑った。

こんな表情も、初めて見たな。


「結局アトラクションはゼロかー」

「ごめんな」

「いやいいけど楽しかったしー」


でもせっかく遊園地に来たんだし1つくらい乗りたかったかも、

と思って横を見ると、電飾ピカピカの乗り物が。



集合時間まで、あと10分。


待ち時間、ゼロ。

………。



「ねえ大石くん、1コだけ乗ろ」

「え、でももう時間…」

「お願い、待ち時間ないから!さすがに乗り物1個も乗らないのはありえないよ!」



その言葉に納得したのか、くんたちと会えたことも関係しているのか、
大石くんは観念した様子で「待ち時間はないんだな?」と確認してきた。


私は満面の笑みで頷いて、後ろのがら空きの乗り物を指差す。



「………これかい?」

「うん、これ!」



カルーセル。


または回転木馬。


つまり、いわゆるメリー・ゴー・ラウンド。



「じゃあ、俺は下で見てるから…」

「何言ってんの!大石くんも乗るよ!」



ぐいぐい腕を引っ張って、「2人でーす!」と有無を言わさず連れ込んだ。

俺はこれでいいよ、とか馬車に乗ろうとするから
ダメ!!と言って無理やり馬に乗せた。


「いいじゃん王子じゃん!」

「そんなに格好いいものでもないと思うけど…」


お客さんは少なくて、話してるうちにすぐにサイレンが鳴った。


ゆっくり、ゆっくり動き出して、

どんどん、どんどん加速していく。



「わー、結構速いー!たーのしー!!!」



開放感で、思いっきり大きな声を出す私。



「は?大石たち乗ってんだけど!?」

「ヤベー!!」

「写メろうぜ!!!」



大爆笑する男子集団が写メを撮る姿が見えた。

他のクラスメイトも通りがかった。

その中心で、私たちはくるくる廻る。



私も大爆笑で、大石くんは恥ずかしそうに顔を覆ってる。


私たちはメルヘンな音楽に乗せられて

思いの外速く動く木馬たちにまたがって

キラキラに眩しい世界を何周も何周も巡った。



「あー楽しかったー!」

「……そうだな」



とりあえず感想は共有してくれるけど、
明らかに楽しそうではなかった大石くん。

私は、さっきまでそこにいたくんたちみたいに大声で笑ってしまった。



「あれ、くんたちいつの間にか居なくなっちゃったね。
 急いで追いかけよ」

「そうだな」


そう言って早足に歩き掛けて、
私は閃く。



さん!?」

「ほらほら、急がないと時間ないよっ!」



手を掴んで、引っ張って。


今朝私が驚いたみたいに、

君に比べたらずっと細い指で少し温度の低い

一回り小さな手をした私に気付いて

ちょっとだけでもドキドキしてくれないかな、なんて。


もしかしたらドキドキしてくれているんじゃないかな、と思ったのは、

本気を出せばいつでも抜かせるはずなのに

大石くんはずっと私の後ろを走っていたから。



「はー間に合った!」



集合場所に着いて手を離すと、そこにはいつものクラスメイト。

当然のようにしれっとくんたちもいる。

「おい見ろよこの写真」って待てそれもしかしてさっきのヤツ!?


「ちょっとくん!?」

「ん?デート写真フライデーされたのそんなに困るん?」

「デートじゃないし!!…もお〜、
 班のメンバーが君たちだったお陰でこっちはさんざんだよ…」


ホントさんざんだったよ…。

でも、どこかで、楽しかったからまあいっか、

という思いもあるのは本当で。



「はーなんかどっと疲れちゃった」

「長い一日だったけど、終わってみればあっという間だったな」

「ねー。今度はもっとゆっくり来たくない?そのときは観覧車乗ったりさ」


大石くんは観覧車が好きって言ってて、
今日はそんなの余裕がまったくなかったから、
軽い気持ちでそう言ったんだけど。


「えっそれは、ふたりでってことかい!?!?」


目の前には、テンパりまくってる大石くんが!



「え、別にそんなつもりで言ったんじゃなかったけど!?」

「あ、そ、そうなのかい!ごめんな!ハハハ!!」

「あは、アハハ!」


釣られて私も笑っちゃって、

笑っちゃったんだけど…。


笑いを止めて、表情を伺って、回りには聞こえないくらいの音量で。


「でも…今度は二人で、来ちゃう?」


そう聞いて、ちらりと顔を見上げると、

間違いなく大石くんの顔は赤くって、

だけど夕日のせいかもしれなくって、

「ほら、早くバスに乗れ。俺は最後に点呼を取るから」

なんていつもの学級委員様に戻ってて、

つまんないのー、でもおっかしいのー、なんて!



「なんだかんだ楽しかったね!」

「…そうだな」



バスに乗る直前そう言ったら、

大石くんは笑顔で同意してくれた。



先に乗車して盛り上がってる友達の輪に飛び込む。

みんな今日の思い出話で盛り上がってる。

私も混ぜてもらおう。

話のネタは豊富過ぎるほど。



だけど、

夢のような世界をキラキラ廻っていた数分間、

あの内側から見えた景色だけは、

自分と彼だけの秘密にしちゃおう。


そうこっそり思いながら「まず班分けがさー」と今日の思い出を語り始めた。
























確か中3の卒業遠足でみんなで不二Q行ったときに閃いたやつ。
ファイルの最終更新日時が2005/05/22 06:36だったんだけど、
それってドイツ時間で5/21 23時半ですよねっていう。
そして絶対それより前に書き始めたのを少しずつ更新してたんだよ…。
そんなものを今更掘り起こして続き書くというこの根性w

てわけで前半はJKだった頃の私、後半はオバンハとなった私です。
違いがわっかるっかなー??
一応違和感ない程度に文体は寄せたつもり…だけど…
語彙力とか表現力とかはアップしてる…と…いいな…。
逆に突飛な発想とか萌を勢いで押し切るーみたいなのが減ってるのかもしれないねぇw
元々書いてた部分、すげぇ若さを感じるもん…w
答えは反転で載せておきますね。

いやこんだけ年月またがって書かれる作品が出てくるとはねw
これを書き始めてた頃にも全く想像してませんでしたよw
ちなみにこのこっぱずかしいタイトルは当時つけたやつだよ!ww

全てはこれだ!!!
「SSR+大石ガチャ、出ろー!!!」(笑)


2005/05/21(以前)-2020/11/14