* 清く眩しく輝く二人 *












今日は、中高を共にした知人同士の結婚式。
新婦は高校のときのクラスメイトで親友、
新郎は中学のときのクラスメイトで、私が好きだった人、だ。


新郎…大石くんは、優しさと爽やかさを絵に描いたような人だった。
芯がしっかりしていて、でもどこか儚さもあって。
そんな危なっかしさも彼の魅力だったように思う。

班が同じになった私達は自然と距離が近くなって、
趣味が被るわけでもないのに不思議と気が合った。

「もしかしたら、大石くんも私のこと…?」
なんて考えが頭をよぎらないわけじゃなかった。

だけど、私は大石くんに何かを伝える勇気なんて出なかったし、
大石くんも私に何かを言ってくることはなかった。

結局、両想いだったかもしれない…なんていうのは私の都合の良い解釈で、
高校に上がって間もなく、大石くんは別の子と付き合い始めた。
その子は後に私のクラスメイトになって、
まさかのその子と友達になった、と。

惚気を聞かされるのが辛かったときもあった。
だけど我慢しているうちに慣れた。
そのうちどうでも良くなった。
恋愛に友情が勝ったのだ、と思った。


思い出はあまりに眩しい。
過去のことだから尚更清く美しく感じるのだ、とも思う。

そんな懐かしさに駆られながら披露宴開始を待っていたら、
隣の席から声を掛けられた。

「ね、さんさ、中学の頃、大石くんのこと好きじゃなかった?」
「中学の頃ね」

あははと笑って返す。
そう、これはあくまで中学の頃の話。

「別に付き合ったりはしなかったよね?」
「うん」
「そうなんだ。大石くんもさんのこと好きだって言ってたけどね」

……へ?

「そんな噂あったの?」
「噂っていうか、本人から聞いたよ?」

………は?

じゃあもし、あのとき、私が勇気を出せていたら、
ここに居たのがあの子の方で、
あそこに、大石くんの隣に、居たのが―――。


「それでは、間もなく新郎新婦の登場です!」


司会の声ではっと意識を戻される。
危ない。
今、変なこと考えてなかった?

久しぶりに会ったから思い出してしまっただけだ、あの頃の感情を。
これ以上考えてしまったら、本心で言えなくなる。

先ほど浮かびかけた考えを、ぐっと飲み込んで、掻き消した。
中学の頃の輝かしい思い出と一緒に。

さあ、これなら本心で言えるだろう。


「二人共、おめでとー!!」


扉が開くと同時に鳴り響く拍手の中、できるだけの大きな声で投げかけた。
美しく白く輝く衣装を身に纏った二人に届くように。

























お題箱より『大石くんと両想いだったはずなのに結ばれなくて
「どうしてあの頃に勇気が出せなかったのだろうか…」と虚無になれる作品』でした!

美しく白く輝くのは新郎新婦だけども、
清く眩しく輝いてるのは誰かってことです<タイトル


2020/06/13