* 消えないオレンジがここに *












夏休みが終わって今日から新学期だ。
だけど部活はない。
なーんか変な感じ!

夏休みの間は、それだけで非日常って感じで
部活がなくても、休みの日だなって感じだったけど、
学校はあるのに部活はない…そのことにとんでもなく違和感を覚えた。

そのうち高等部の練習に参加することになってるけど、今はそれもない。
授業が終わってそのまま家に帰るだけ…。
これから暫く毎日これかと思うと、なんだか胸がぽっかり。


「(どっか遊びに行きたいけど、桃もおチビも部活でしょ?
 不二はたまにしか相手してくんないし。大石でも誘う?)」


そんなことを考えていたら、廊下から声。


「英二」

「あっ、大石ぃ!」


噂をすればなんとやら。
心の中で考えてただけでも適用されるのか知らないけど、
大石のことを考えてたらまさに大石が現れた。



「今日の放課後、あそこ行かないか」



あそこ。

つったら、あそこしかないっしょ!



「オッケー、行こうぜ!」



俺はほとんど空っぽの鞄を掴んで教室を飛び出す。

結局、そのまま確認はしなかったけど、
俺たちの足は自然と同じ場所へ向かっていた。


もう、来ないと誓ったあの場所。
大好きなあの場所。
全国優勝したら、また来ようと約束したあの場所…。






  **






「わーなんかめっちゃ久しぶりな気がする!」

「実際久しぶりだからな」



俺がそこに飛び乗った後に、大石もゆっくりと登ってきた。

そう、ここは、コンテナの上。
俺たちにとって思い入れの深い場所。


「昔はしょっちゅう来てたけど、最近は来ることも減ってたもんな」

「それは良いこととも言えるけどな」

「まあねん」


俺はここで大石とダブルスを組むことになった。
練習で先輩にコテンパンにされて何度も来た。
試合で負けて泣きながら来たこともあった。


「今までに何回来たかな?」

「もう数えられないよな」

「な」


負けるのは悔しいし嫌だけど、
ここに来ること自体は嫌いじゃなかった。

だから、都大会の後に
「もう最後だ、ここに来るのは」って誓ったけど、
全国で優勝したらまた絶対ここに来るんだって楽しみにしてた。

やっと来られた。



ここに居ると、街の遠く、とおー…っくの方まで見える。
ここから眺める夕陽が大好きだった。


「(…大好き、だった?)」


なんとなく過去形にしちゃったけど…
俺たち、今後もここに来ること、あるよな?
今までみたいに。


「結局たくさん負けちったね」

「…そうだな」

「っていうか、全然試合できなかったし」

「………ごめん」

「まあ最後の最後でいい試合できて良かったけどさー!」


ばたんと仰向けに寝転んで、上に手を伸ばした。
手をパーからグーにする。
右手はラケットを握る代わりに、空を掴んだ。
ぎゅっと力を込めるだけで、試合中の熱さを思い出すみたいだ。



楽しかった。
やっぱり、大石とのダブルスが一番楽しい。
大石とやるテニスが一番好きだ。



『なあ大石、俺たち高校行っても黄金ペアだよな?』



なぜ、そんなことを言おうと思ったのか。
言わなければ当たり前にそうなる気もするのに。
でも、何故だろう。
何故か、言いたくなって。

手を下ろして、体を起こした。



「なあ…」

「なあ英二」



珍しく食い気味に来られてオレは口を噤んだ。
同時に声を発したら、大体大石が譲るのに。

何、その真剣な表情。

こういうとき、心が通じ合ってるオレたちは、
相手の気持ちがなんとなくわかってしまうから、困る。
なんとなく。
なんとなくだけど、嫌な予感。


大石は大きく深呼吸をして、真面目な顔して言う。



「俺、英二とペアになって…英二と一緒にテニスできて、本当に良かったよ」



ほっ、

と…………しきれないの、なんで。

「なんだよ改まっちゃって!そんな真剣な表情でいうことじゃないだろ?」って
肩なんか叩いたりして、安心していい場面じゃないの?

心臓がざわざわする。


「な…んだよ改まっちゃって」

「英二」



ちょっと待って。





「俺、高校ではテニス続けないつもりなんだ」





…………は?




「はぁ!?」

「ごめん、いつ言おうかずっと迷ってたんだけど」


なんとなくの嫌な予感が的中してしまった。

嫌な予感、は、したんだ、なんとなく。
でもまさか本当にこんな内容だなんて。


「高校では勉強に集中しようと思ってて」

「え?部活やりながらだってずっと学年で一番だったじゃん」

「今のままじゃあダメなんだ。俺はもっと真剣に勉強に打ち込みたいんだ」

「なんで!!」


オレは睨むように大石を見る。
強めの目線を送り返して来ていた大石が、
眉の力を、緩めた。


「ごめん。わかってくれ…英二」


大石は組んだ手を額に押し当てて俯く。

それ以上は、もう、目は合わなかった。


「…意味ワカンネー!何勝手に決めてんだよ!」


立ち上がって、鞄を拾い上げる。
コンテナでの足音はガンガンと響く。


「オレ、そんなのゼッタイ許さないから!」


吐き捨てて、
コンテナから飛び降りて、
そのままダッシュで家まで帰った。

息が苦しい、どころじゃない。


ワケわかんないまま階段駆け上がって布団にダイブ。
「ちょっと英二、手洗ったのー!?」とか聞こえてくるけど、知らない。


……は?
テニス、続けない??

オレ、もう大石とテニスできなくなるの?


「なんだよ、それー…」


本当は、オレも気づいている。

こんなに心が苦しいのは、
大石の決心がわかっているから。
オレが駄々をこねたって絶対変わらない。


大石は、もうテニスをやめるんだ。



「ウソだろ…」



信じたくない。
昨日までの何も知らないオレを返してほしい。

大石………。






  **






朝練のない朝はゆったりだ。
ゆっくり目に家を出たつもりだったけれど、まだ教室には人が少ない。
登校の時間はこれからがピーク。

自席について、ふうと一息ついたとき、廊下から呼ぶ声がした。


「英二」


そっちを向きかけて、
大石だ、
と気づいて顔を正面に戻した。

今は話したくない。大石とは。


「菊丸くん、呼ばれてるよ」

「シラネー」


教えてくれたクラスメイトも、本当にいいの?
という心配そうな顔をしながら去っていった。

もうみんなどっか行っちゃえ。


「英二!」


少しずつ賑わっていく教室の中、大石の通る声が届く。
こういうときでも他教室に踏み入れてこないの、
本当に大石が真面目過ぎてイヤんなる。

ホント、真面目なんだよな大石は。


「今日の放課後、またあの場所で待ってる」

「……」


オレは返事も合図も何もしなかった。
数秒の間のあとに、

「待ってるから」

と一言念を押して、大石は去っていった。


……オレ、行くなんて言ってねーからな。






結局、


授業中

休み時間


ずっと考えて……。



でも気持ちの整理はついてない、まま。






―――カラスの声がする。


こうやって突っ伏して、どれくらいの時間が流れただろう。
遠くで日暮れを知らせる鐘の音が流れた。
ぽかぽか温かかった太陽が、少しずつ温度を下げている感じがする。

このまま全部溶けちゃえばいいのに。


「英二」

「!」


掛けられた声に驚いて肩が震えた。

ビックリした。
一瞬、大石かと思った。

声の主は不二だった。


「なにやってるの」

「…寝てた」


それは見ればわかるけど、と不二は前の席に腰掛ける音がする。


「帰らないの?」

「もうちょっとしたら」

「英二」


肩を掴んで顔を起こされる。
驚いた顔をした不二は、フッと笑った。


「寝てた、って。嘘つきだね、英二は」

「…うるせー」


腕を払って、また頭を腕に埋める。
だって見られたくないよ、こんな顔。
きっと目は赤いし鼻も赤いし、ぐしゅぐしゅだ。

ぐちゃぐちゃだよ、オレは。


「何かあった?」

「……」

「何があったの」

「…なんもない」


不二になるべく顔を見せないまま、
立ち上がって鞄を掴んで教室を出た。


「待って英二、僕も帰る」


そう言って不二は追いかけてきたけど、
歩く速さを緩めたりなんてしなかった。

何も言わないまま不二はオレの横を歩いて、
靴箱に来て靴を履き替えて、
そのままスタスタと校門を出た。

一言も発せようとしないオレにしびれを切らしたのか、ついに不二が口を開く。


「英二どうしたの」

「不二こそ今ままで何してたの」

「僕、昨日から写真部に顔出してて」

「…あっそ」


この前までテニス三昧だった日々が嘘みたいだ。

そうやって、みんな変わっていくのか。
何も考えずに、早く高等部の練習に参加できるの楽しみだにゃあ、
なんてのんきに考えてたオレがバカみたいじゃん?

オレ、これからどうしよう。



「大石とどうかした?」



勝手に一人の思考に入ろうとしていたオレを不二が呼び戻した。
なんで大石の名前が出てくんの。

横の顔を見ると、目線が鋭くて、
これはカマを掛けてるんじゃなくて察してるやつだ…と思った。
不二は勘がいいからこういうとき厄介だよな。


「…なんでわかんの」

「今朝から様子がおかしかったから。昨日、一緒に帰ってたよね」


まったく。
不二はぜんぶお見通しってわけか。


「何かあったの?」

「んー…」

「さっき教室に残ってた理由と関係あるの?」

「………放課後会おうって言われてた」


不二は、え?、と立ち止まる。


「行かなくていいの?」

「ガッコ終わってからもう3時間経ってるし、もう帰ったっしょ」


不二が止まったのを無視してオレは歩き続けたけど、
不二は早歩きで追いついてきて正面に回り込んでくる。


「だって、大石だよ?英二が一番よくわかってるでしょ」

「……」


わかってるよ、そんなの。



「わかってるけど、オレどうしたらいいかわかんねぇよ…」



引き止めるべき?
でも引き止めたって大石はきっと変わらない。
それでもオレは引き止めたい。

引き止められなかったら?
大石はテニスやめちゃう?
ダブルス組めるかは別としても大石がテニスやめるだけでやだよ。

勉強しながらテニスはできないの?
テニスしながらは勉強できないの?

一緒にテニスしなくなったらオレと大石の関係はどうなるの?


頭ぐちゃぐちゃ。



「大石に何かあった?」



心配そうに覗き込んでくる不二。

不二になら……
相談、してもいいか、考えて…。
首を横に振った。


「オレからは言えない…」


言えない。
立ち止まったままのオレには、勝手には言えない。


ふぅー…と長いため息をついた不二は、
「とりあえず、大石のところ行きな」
と肩をポンポンと叩いてきた。


「でも…」

「大丈夫だよ」

「何が。何で」

「何がかは、教えてくれないからわからないけど」


にこりと、不二は笑った。



「大丈夫だよ。英二と大石のことだから」



ね?と首をかしげた。

オレたちのことだから。
ゴールデンペアの、オレたちだから。


「…わかった。行く」

「がんばれ、英二」


ひらひらと手を振って不二と分かれて、オレは駆け出した。

始めは小走り。
いつの間にかダッシュ。

いざ動き始めたら、早くたどり着きたくて仕方がなくなって。



もっと足、動け…!






――オレがその場所についたときには、
夕日は沈みかけ、空の半分以上は夜になっていた。
大石の顔を照らしていたオレンジ色の光が
淡く紫色に変わっていく最中だった。


すぅ、と息を吸う。

…よし。


「大石!」

「!」


上から見下ろしてきて、
オレの姿を確認した大石は硬かった表情をふっと崩した。



「もう来ないかと思ったよ」



オレも、ふっと、肩の力が緩んだ気がした。

今日一日、絶対大石の顔なんてみたくないと思って過ごしてたのに
顔を見たらほっとできてしまうから、イヤんなる。


「…なんか懐かしいな、この感じ」

「え?」

「聖ルドルフ戦!」


コンテナに登りながらそう伝えると、
「ああ」と大石も嬉しそうに笑った。

オレが充電回復するまで大石が粘ってくれた試合。
最終的には負けちったけど、
オレたちの絆が一層深まった気がした大切な試合だ。


横に腰掛けて同じ方向を見た。

夕日の最後の欠片がビルの狭間に消えていくところだった。


「綺麗だね」

「…ああ」

「やっぱりここからの景色、いいね」

「そうだな」

「懐かしいよな。初めてここで会ったときは、オレの個人反省会だったもんにゃ」

「ハハッ。そうだったな」


そうしてオレたちは笑いながら語り出す。

ここでダブルスを組む約束をしたこと。
始めは全然勝てなかったこと。
少しずつチームワークがうまくいくようになっていったこと。
初めて公式戦に出たときのこと。
いつの間にか「ゴールデンペア」と呼ばれるようになっていたこと。
そして今年、全国大会で優勝したときのこと…。


「色々あったな」

「な」


思い出が多すぎて、いつもの間にか空は真っ暗になっていた。
3年間はあっという間だったけど、思い起こせばこんなにたくさんあった。

もう、満足かもしれない。


思いっきり伸び。


「オレもやめちゃおっかな!」


明るくあっけらかんと言ってやった。
横の大石は焦った様子でこっちを見る。


「えっ!?そんなこと言わないでくれよ」

「だって……大石がいないと無理だよ」

「英二はオレがいなくても大丈夫だったじゃないか」


首を横に振る。



「大石がいないと、意味ないよ」



そう呟くように言うオレの両肩を掴むと
大石は真剣な顔で訴えかけてくる。



「英二にとって、テニスはそんなものだったのか?」



違う!

とも、言い切れなかった。


確かに他のやつともペア組んだ。
シングルスでも試合した。
楽しかったし、勝つこともできた。

だけどずっとオレは、大石とペアであることが根っこにあって、
大石と一緒に試合に出ないときも
一緒に戦っているような気持ちだった。


「オレ、大石と会わなかったら1年のうちにテニスやめてたかも」


これは、本当に本当なんだ。
テニス自体が嫌になりかけてたとき、
続けたいと思えたのは大石と出会えたからなんだ。


「テニスが大切じゃないってわけじゃない。
 ただ…オレにとってお前はそれくらい大切で大きな存在だったんだよ」


大石の顔、見れない。
がくんと首をうなだれた。



「わかってくれよ…大石」



昨日と立場が逆転した。

オレが大石の気持ちをわかれなかったみたいに、
大石もオレの気持ちはわからないものかもしれない、と思った。

だけど結論は思ったより早く出た。


「…わかった」


頭に手がポンと乗せられると同時にそう言われた。

え?
わかってくれちゃうの?
いやそんなはずは。

思考をぐるんとさせながら、話の続き聞く。


「俺には、英二がテニスを続けるのもやめるのも、口出しする権利はない」


そう、か。
それはつまり、オレも、大石に対して口出しできないってことで。


「だけど、俺は高校ではテニスは続けない。これは変えるつもりはない」

「…うん」


やっぱり、思った通りだ。
大石はそういうやつなんだ。


大石はこういうやつだ。
わかってた。
オレはずっとわかってたよ。


「ただ…」

「?」


眉を八の字にして、寂しそうな目で大石は語る。



「この前までの時間が、夢みたいだな。たった数週間前のことなのにな」



夢みたいだった。

勝つことにだけ集中して、テニスに夢中で、
がむしゃらに走り回れたオレたち。


あれは確かに夢だったのかもしれない。

でも、本当にあったんだ。
確実に。


もうきっと変えられない。
大石が高校に行ったらテニスをやめること。
オレは大石とダブルスを組めなくなること。

それと同時にずっと揺るぎない過去はある。

何より、「今」は変えられる。



「じゃあさ、今のうちにやろ!」



オレの急な申し出に、
大石は数秒固まってから声を出す。


「…え?」

「中学のうちに、いっぱい。テニス!」


オレの言葉に、大石は不思議そうにぱちぱちと瞬きを繰り返した。
呆けてる大石に対してオレは話を続ける。


「高校に入ったらやらなくなっちゃうんだろ?
 だったら今のうちにたくさんやろ!
 放課後とか!休みの日とか!できるだけたくさん」


突然の思いつきだけど、もう、そうするしかないような気がしてきた。
吹っ切れた。

あの大会が最後だったなんて急に突きつけられたら悲しくなったけど、
まだ、最後じゃない。
この残りの時間を大切にしようって。もっともっと。


「思い出は多い方がいいっしょ」

「そうか…そうだな」



星が浮かび始めた空の下、オレたちは翌日以降の計画を立て始めた。






――そして早速、オレたちのテニス三昧の日々が復活した。



桃に教わったストリートテニス場で30回勝ち抜きした。(さすがにバテた)

越前のとーちゃんに1対2で試合してもらった。(越前ナンジロー?強すぎ!!)

休日にみんな誘ってテニスクラブへ行って一日汗を流した。

自主練の日に部活に行って混ぜてもらった。

テニスコートを借りて二人で打ち合った。



やっぱり大石とのテニスは楽しくて、
青学のみんなと居るのは心地よくて。

オレは、大石も、みんなも、大好きだと思った。


でも、ずっとこのままじゃない。

タカさんは寿司屋を継ぐのは引退前から聞いてた。
そしたら、手塚も海外留学するんだって。
大石も……と考えると、
高校の青学テニス部、今のメンバーは結構減ってしまうんだ。

みんな、前に進んでいく。
止まり続けては居られないんだな…。


オレも進もう。

前へ。




「大石」

「ん?」

「今日も楽しかった。ありがとな」

「そんな…お礼を言うのは俺の方だよ。こちらこそありがとう」


もうすぐ、高等部の練習に参加し始める日が近い。
進学に向けて勉強も本格化してくる。
こんな日々ももうおしまいだ。


そんな中、オレは一つ決心をしていた。



「大石…オレさ、やっぱりテニス続けることにした」



横で、大石の目がキラリと光った気がした。
大石は、喜んでくれるのか。オレがテニスを続けることで。


「本当か?」

「うん」


拳をぐっと握り込む。

ラケットの重さ、
ボールを打ったときの手応え、
ショットが抜けたときの快感、
勝ったときの喜び――。


「テニスが楽しいってこと、思い出せたから」


そう。

思い返せば、テニスで負けて悔しいこと、勝つと嬉しいこと、
テニスが楽しいってこと…教えてくれたのは大石だった。


「大石のお陰だよ。ありがとう」


大石は何も言わずに、まっすぐな目線で頷いた。
その表情だけで、気持ちが伝わってきた。

もういよいよ未来は変えられないなって、
胸の端の方で、うっすら寂しさが浮かんだのには気づかないフリ。



「その代わり、お前も絶対自分の夢を諦めんなよ」



胸元にパンチを一発お見舞い。

大石はオレのその手を掴むと、上から包み込むようにぐっと握った。



「もちろんだ」



そのはっきりした瞳と篭められた力の強さに
こみ上げてきたものが目の端から零れそうになったけど。

大丈夫、オレは頑張れる。
楽しかったことを忘れない。
教わったたくさんの大切なものを、これからも胸に抱き続ける。




「最高の3年間だった!」




空に向かって大きく腕を伸ばした。

なんだか、今なら空だって飛べちゃう気がした。



肩を並べて同じ方向を見る。

太陽が大きい。



遠く遠くに沈んでいくそのオレンジは、
照明みたいにオレたちを照らしてくれた。

それぞれの未来に向かっていくオレたちのことを励ますかのように。
























引退後の黄金はどうなるのよ妄想。
これは大石は高校行ってテニスやめちゃう設定でした。
旧テニと新テニとその他媒体(アニメやゲームや)で
世界線が分岐しまくってるうちの一つの思って頂ければ…。
過去作『今ここで見えるオレンジ』の続編でした。
時期は引退後の晩夏のお話だけど、
一応黄金記念日祝いということであげ。


2020/05/19-22