* 0.1歳差の季節 *












私は知っている。
数日前は大石くんの誕生日だった。

そして数日後は……。


「大石くん」


机の正面から声を掛けると、
頬杖をついて読み物をしていた大石くんは顔を上げた。

教科書読んでたんだ。相変わらず真面目だなぁ。


「ん、どうした?」

「この前、誕生日だったよね?おめでとう!」

「ああ、そうだよ。よく知ってるな」


知ってますとも。
だって、好きな人の誕生日だから。

大石くんは柔らかく笑って、教科書を閉じた。
優しいなぁ。
そんな些細な行動からも、好きだなぁって思っちゃう。


「ゴールデンウィーク中でスルーされちゃうことあるんじゃない」

「そうなんだよ。よくわかったな」

「そうでなくても4月誕生日の人ってクラスメイトと仲良くなる前に
 誕生日過ぎちゃってあんまり祝ってもらえなさそう」

「あー…確かにそうかもな。テニス部のみんなは祝ってくれるけど」


大石くんはそう言って笑った。
さすが、仲良しだよねテニス部は。


「一瞬だけ大石くんが年上だ」


我ながらあざといなと思ったけど、
大石くんは見事に釣られて「一瞬?」と聞いてくれた。


「実は、私は5月9日が誕生日なんだ」

「そうなのか、もうすぐだな」


黒板の日付を確認して、大石くんはにこりと笑った。

そう。
この時期の誕生日事情にやたら私が詳しいのも、
私も大石くんと誕生日が近いから。

5月頭生まれだとさ、友達って大体年下なんだよね。
だから、ほんの10日足らずの期間でも、
好きな人が年上なのちょっと嬉しいな、なーんて!


そんなことを考えている私に、
大石くんはいたずらな笑みを向けてきた。



「先に15歳で待ってるよ、なんてな」



そっか、大石くん、15歳なんだ。

まだ馴染みのないその数字に、14歳の私はときめいてしまった。


「すぐに追いつくから」

「楽しみだな」


日に日に暖かくなっていく陽気、

見かけ上の1歳差、

何気ない会話……


この時間は、私の宝物になりそうだ。
























わかりますね?
主人公ちゃんは「“もう”15歳なんだ!」ってときめいてるんですからね!
これ読んだ人の99%は「“まだ”15歳なんだ…」って思うでしょうけどね!(笑)

よく考えたら誕生日というより誕生日直前の話だったけど(笑)、
本日のえちゃんに捧げますよ。お誕生日おめでとう!


2020/05/09