* 『サンキュー!』 *












「みなさん、お疲れ様です!」



まだゴールデンウィーク中だというのに今日の気温はとても高くて、
ランニングを終えた部員たちは汗だくだ。
水分補給をしてもらうべく、スクイズボトルを入れた籠を皆さんに届ける。


「おっ、サンキュー」

「サーンキュッ」

「ありがとう」


桃先輩、菊丸先輩、不二先輩と順番にボトルを受け取っていった。
色んな言葉を受け取りながら、ボトルが減るごとに手元が軽くなっていく。

最後の一本を、大石副部長が手にした。


「ありがとう」


その声と笑顔は、相変わらず爽やかだ。


大石副部長はいつも目を見て丁寧にお礼を言ってくれる。
礼儀正しい大石副部長らしい。
そんな些細なことに、こっそりときめいていたりする。

スキ…だなんていうのはおこがましい。
いいなと思っているのは事実だけど、
私と大石副部長の間は、恋だとか、そんな関係で結び付けられる距離感ではない。
片想いとすらいえないようなうっすらとした憧れを、
こっそり胸の内側に秘め続けるばかりだ。


それに、マネージャーたるもの誰か一人に入れ込むようなことは
あっちゃいけないよね…っていう思いもある。
…一歩踏み出せない言い訳かもしれないけど。



さあ、引き続きマネージャー業頑張ろう!

私は選手の皆さんのサポートしかできないけど、
少しでも助けになっていたらいいな…と思いつつ仕事をこなしている。
そんな中で、一番励みになるのは、皆さんのお礼の言葉なんだ。






  **





激しいラリー練習を終えて、二回目の休憩時間となった。
スポーツドリンクを汲みなおしたボトルを配って回る。


「水分摂ってくださーい!」

「ありがとう」

「あざーす」

「サンキュー」


皆さんが一つ一つボトルを取っていく。
私はたくさんのお礼の言葉を受け取る。

そんな中で菊丸先輩は、ボトルをひょいっと奪って、ぱしっと掴み直すとと
ウィンクしながら「あんがとん」なんて言ったりして。
さすが、菊丸先輩はお礼の言い方もバリエーション豊かだなー…。


そんなことを思っていたら、向こうから大石副部長が来た。
いつも通り、爽やかな「ありがとう」が聞けるかな…。


なるたけの笑顔を見せて、ボトルを差し出した。
受け取った大石副部長はニコッと笑って。



「サンキュー!」



そう残してその場を去っていった。


……え?


どこか違和感を覚えたのは、大石副部長に似合わない言葉に思えたから。
似合わないというか、耳馴染みがないというか。

今の大石副部長だったよね、と確認してしまう。
でも間違いなく振り返って見えたのは歩き去っていく大石副部長の背中だし、
今の声は、何度脳内で再生し直しても大石副部長の声だ。



『サンキュー!』

だって。



……フフッ。



なんか、お友達になったみたい、なんてね!
少し大石副部長との距離が縮まった気がして、勝手に嬉しくなった。


嬉しくって、くすぐったくって、笑顔が止まらなくて。
そして……胸の鼓動も止まらない。



やっぱり、私、大石副部長のことが、好きだ。



そう思ったら世界が急に明るくなった気がした。

いいんだ、私も、大石副部長のことが好きでいて、いいんだ。

それを教えてくれた一言だった。


感謝の言葉に、感謝。なんてね。


私ももっとガンバロー!
そう思って伸びをして、空になったボトルを回収しに走った。
























390000Hitキリリクで大石副部長の夢小説書かせて頂きましたー。
キリリク頂いてから約半年経っちゃいました!
さつきさん、大変お待たせしてしまってすみません。
個人サイトが絶滅危惧種になっている中で
我が家にたどり着いてくださったこと感謝です。
これからも楽しんでいただければ幸いです!

大石の「サンキュー」可愛いよね!(原作だと「サンキュータカ!」など)
39万と掛けたんだよ!シャレだよ!笑
ここまで我が家を大きくしてくださった皆様もありがとうございます!

ちなみにこの作品は日記に小説メイキングもあるので宜しければ!


2020/05/06