* サンキュー *












「みなさん、お疲れ様です!」



まだゴールデンウィーク中だというのに気温は高くて、
練習を終えた部員たちは汗だくだ。
一人一人にスクイズボトルを手渡していく。


「サンキュー」

「サーンキュッ」

「ありがとう」



桃先輩、菊丸先輩、不二先輩と順番にボトルを受け取っていった。
色んな言葉を受け取りながら、ボトルが持っていかれて手元が軽くなっていく。

最後の一本を、大石先輩が受け取っていった。


「ありがとう」


その声と笑顔は、相変わらず爽やかだ。


大石先輩はいつも「ありがとう」だなー。
礼儀正しい大石先輩らしい。




私は選手の皆さんのサポートしかできないけど、
少しでも助けになっていたらいいな…と思いつつ仕事をこなしている。




しばらくして



「お水飲んでくださーい」



「ありがとう」

「あざーす」

「サンキュー!」



「あんがとん」



菊丸先輩はお礼の言い方もバリエーション豊かだなー。





大石先輩が受け取りにきた。



「サンキュー」





え?


どこか違和感を覚えたのは、大石先輩に似合わない言葉に思えたから。
似合わないというか、耳馴染みがないというか。




今の大石先輩だったよね、と確認してしまう。
でも間違いなくそこに見えているのは歩き去っていったのは大石先輩の背中だし、
今の声は、何度脳内で再生し直しても大石先輩の声だ。



『サンキュー』


「……ふふっ」




なんか、お友達になったみたいな、なんてね!
少し大石先輩との距離が縮まった気がして、勝手に嬉しくなった。



感謝の言葉に、感謝。
私ももっとガンバロー!!
























2020/05/06