* 今日は君と日直 *












これまで人生において日直と言ったら…

「俺黒板消すから、お前日誌書いといて」とか…

「時間割のとこ俺が書いたから、残りヨロシク」とか…。


それが今日は。



「それじゃあ始めようか」



放課後、わざわざ教室に残って、二人で一緒に日誌を書いている。
というのも、昼間に大石くんが「放課後にまとめて書くってことでいいかい」と言ったから。
こんな真面目な人いる?


私は、隣の席から椅子だけズラして大石くんの机を覗き込む。
大石くんの、いつも通り綺麗な字で今日の日付が書き込まれていく。


「えっと、1時間目が数学で…」

「小テストがあったね」

「そうだな」

「宿題はプリント1枚!」


こんなに丁寧に日誌を書いていることがそもそも珍しいかも。
他の人だったら面倒くさいと思っちゃってたかな?
でも今は、この時間が幸せで仕方がない。

だって、私は、大石くんのことが好きなんだ。

大石くんはこれが終わったらすぐに部活に向かってしまうのはわかってる。
だから今、日誌が書き終わるまでのこの間だけ、
私に大石くんを独り占めさせてよ、なんてね。






  ****






席替えのときはなんとも思っていなかった。

机を移動させて定位置についたとき、「よろしくね」と掛けられた声に、
いい子そうだなという感想を抱いたことは憶えている。

それがこんな特別な感情へと成長を遂げるなんて。

きっかけなどない。
敢えていうなら、些細なことの積み重ね。


朝、登校してきての一番の挨拶。
授業が始まる前、先生が来るまでの談笑。
小テスト、答案を交換しての答え合わせ。

少しずつ、少しずつ俺はさんに惹かれていって、
いつの間にかそれらがすべて特別な時間に変わった。



今日は二人で日直。
昨日は緊張してなかなか寝られなかった…なんて知ったら笑われてしまうだろうな。


本当ならば、休み時間に少しずつ書き進めるところ。
でも“二人で一緒に居られる真っ当な理由”になると気付いた俺は
放課後にまとめて書かないかと提案してしまう。
なんの疑いもなく「そうしよっか」と答えるさんの笑顔に、
わずかな罪悪感と、それ以上に高揚感。


これほどにも待ち遠しくて、
だけど緊張しすぎてまだ来てほしくないような、
こんな複雑な思いで迎えた放課後がかつてあっただろうか。


一つの机に二つの椅子を寄せて、
今日はあんなことがあったこんなことがあったと思い起こしながら
雑談を交えつつ日誌の行を埋めていく。

一行一行丁寧に書きながら、
この行が無限にあってくれれば良いのに…などと柄にもないことを考える。


放課後の教室、他には誰も居ない二人の時間も、あと少し。
























大石と隣の席になって一緒に日直とか勝ってしかいないよなぁ。
なんなら大石と同じクラスの時点で勝ってる。くそ…。

両片想い可愛いねぇ可愛いねぇww

酔っぱらって暴走したときの謝罪の気持ちを込めて書き始めたのに
仕上がりに半年近くかかってしまったw
(その節は本当にすまんかったと思ってる)


2019/12/16-2020/05/05