* 夢が降る夜から君は *












それは12月24日、クリスマスイブの夕方のこと。
大きな鞄と、小さめな袋をいくつも抱えた少年が
お寺に中に入っていこうとするのを見つけて、思わず声をかけた。


「君ってもしかして越前リョーマくん?」


その少年は、こちらを一瞥すると
いぶかしげな表情で「…誰」と小さく言い放った。

率直な反応に思わず笑ってしまう。


「ごめんね突然。初めましてです」

「なんでオレのこと知ってるの」

「君って近所では有名人なんだよ」


え?、という表情はするものの眉をしかめるだけでそれ以上は特に言わなかった。
無口なタイプの子だな。でも、クールでかっこいいかも。


「“寺の住職の子がアメリカでキリストと同じ誕生日の子を産んだ”って。
 一時期話題になってたよ。それ、誕生日プレゼントでしょ?」

「…まあ」


手に掴んだたくさんの袋に目線だけど落とし、そうぶっきらぼうに答えた。

私みたいなOLにもなるとこれくらいの年頃の子と話す機会なんてそうそうない。
興味が沸いた私はさらに質問を重ねる。


「今日で何歳になったの?」

「…13歳」

「そうなんだ。ひゃー。私その倍以上生きてるよ」


計算してみると、私が14歳半のとき生まれてる。
私が13歳になるときは、君はこの世界には姿形すらなかったのに。



「お誕生日おめでとっ」



自分より低い高さにある頭に、手をポンポンしようとした、ら、
その腕をパシッと掴まれた。

しまった。
いくらかわいく見えてもお年頃の男の子に
これは失礼だったか…イヤがられちゃったな、

と思っているや否や。



掴まれたままの腕がぐいと引かれて

自分より低い位置にあった顔が

目の前数センチに。



えっ

キスされ……




「まだまだだね」




ぎゅっとつむった瞼を持ち上げると、
もう顔は離れてて手も離されて、
眼前にはしたり顔の凛とした少年が。

や、やられた…っ!


「(帰国子女コワ…)」


ドッドッドッ、と胸がばこばこ叩かれた。
こんなにドキドキすること、日常ではなかなかないから心臓がビックリしてる。

そんなの知らずに、知っていてか、
「そんだけ?じゃあね」と手を翻すと
リョーマくんはお寺の階段を上っていった。


まさか、こんなに年が離れて恋愛感情を抱くわけにもいかないけど
例えるならば某ジュニアに推しを見つけたときのような…
そんな胸の高揚感があった。

こんな面白い子が近所にいるのね
今後、積極的に推していこう…。

そんなことを考えていると。


「あ」


と大きめな声を上げて立ち止まると、
リョーマくんは階段の上からこちらを振り返った。



"Wish you a Merry Christmas. Have a good night."



ネイティブそのものの発音で言われ
私はすっかり胸を射抜かれた。


夢が降る夜。その日から、彼は私の王子様。
























14年半ぶりにリョーマ夢やっほーい!!!(笑)

夢らしい夢が書けた気がする…。
「そんなことあるかいな」って感じだと思いますが、
ドリー夢小説たる所以だと思って許してください。
逆に最近大石はリアリティ求めすぎてダメだ(笑)

こだわりポイント、最後の英語台詞、
普通ならAnd A happy new yearを繋げるのが定型文ですが
「いい夢見ろよ」的なニュアンス差し込みましたw

リョマさんお誕生日おめでとう!メリクリ!


2019/12/24