* 壁でも天井でもモブ女でも *











、会社員。彼氏なし。

平日に終わらなかった仕事を週末に持ち越す羽目になった。
社畜は辛いよ。
家にいても集中できないのは自分でわかりきっているので、
ノートパソコンを持って近所のミスドにやってきた。


休日には結構一人でここに来ることが多い。
ドーナツはおいしいし、コーヒーやカフェオレを無料でおかわりできるところが良い。
いつも比較的空いているので、混み具合の様子を見ながら長居させてもらうことが多い。

お気に入りの奥の席、店内で流れる有線をBGMにキーボードを叩く。
一区切りついて、カフェオレを飲みながらふぅと一息。
周りを見渡すと、いつの間にか席は結構混み合ってきていた。

この一杯を飲みきったら帰ろうか、と考えていると
「あ、ここ空いてるよ!」と隣の空席にお客さんがやってきた。

どうやら、中学生カップル。


女の子の方が私の隣である奥側に来て、
壁を向く側に男の子が座った。
休日にミスドデートか…初々しくて泣ける…。

勝手に萌えながら横でカフェオレをする。
こっそり二人の会話に聞き耳を立て…ようにも一切会話がない。
席に着いて「いただきます」をしたと思うと
もくもくと無言でドーナツを頬張り始めた。

お行儀良すぎか…?
喧嘩中という雰囲気でもなかった。

1分ほど沈黙が続いて…


「おいしいね」

「ああ」

「「…………」」


下手くそか!!!

思わず吹き出しそうになるのを咳払いで誤魔化した。
パソコンの画面に適当な文字をタイプして仕事しているフリを装う。
もはや仕事に対する集中は切れた。

予想するに、これはなんなら初デートの勢いだ。
今日はこの二人の様子を見届けたら帰る。


「大石くんの、チョコリングだっけ」

「あ、うん」

「一口分けて〜!あ、私のポンデリングも食べていいよ」


彼女いいぞ〜!!!
どうやら奥手らしい彼氏くんに対して積極的な彼女ちゃんを勝手に応援。

これはもしかして…初間接チューなのでは!?
大石くんと呼ばれた彼氏くんはちょっと戸惑った表情も見せながら、
彼女ちゃんがチョコリングをかじったのを見届けて
ポンデリングを一ポン食べた。(※1ポン=ポンデリングの丸一個分)


「おいし〜!チョコもいいね」

「ああ。こっちもおいしかった」


そんなことを言いながら、大石くん、
きっとポンデリングの味なんて覚えてないんだろな…
と勝手に予想した。

実は画面に「ああああああw」などと
タイプしている横のおばはんこと私。 ←※真顔
そんなことも知らずに会話を続ける二人。


「大石くんの飲み物、コーヒー?しかもブラックじゃん!」

「ドーナツが甘いから…」

「えーチョコリングゆうほど甘くなくなーい?」

「そっちこそ、両方が甘すぎちゃわないのかい」

「甘いの好きだもーん」


そう言いながら嬉しそうにカルピスを飲む彼女ちゃん。
私も甘党だから気持ちはわかるぞ…
中学生でブラックコーヒーはすごいな、
と思いながらシュガースティック2本ぶち込んだカフェオレをすする…。


「そろそろ勉強する?」

「ああ、そうだな」


勉強しにきてるんかー!えらーい!
鞄の中からノートや教科書を取りだし始める二人を見、
私はノートパソコンを畳んで鞄にしまう。


「何からやる?」

「大石くん英語得意だよね!教えて教えて〜」


大石くんはクールだな。
彼女ちゃんの方がずっと大石くん×2って連呼してて、
大石くんは返答してるだけという感じ。
明るく元気で自由な彼女ちゃんと、それを見守る彼氏くんの構図かな。

いいよな…それ理想…。
でももうちょっと構ってあげてもいいんじゃないか大石くん…。
(もはや勝手に心の中で大石くん呼び)


はーーーなんかいいもん見せてもろたわ。
いい加減そろそろ帰ろうかね。

そう思ってカフェオレの最後の一口をくっと口に含みきった瞬間。


「っていうかさ」

「ん?」

「もう付き合ってるんだから…大石くんってやめないか」


ぶーーー!!!


漫画だったら、思いっきりカフェオレ吹き出してる展開。
なんとか耐えて飲み込んだ。

な、なななななな…!


「え、じゃあ……秀一郎、くん?」

、ちゃん」

「秀一郎くん」

ちゃん」


ふふふふふっ。
ハハハハハッ。
と楽しそうに笑い合う二人。


なーんーだーそーれー!!!(萌死)


勉強しろー!
ついでに爆発しろー!!!


ちゃんは何の科目が得意なの?」とか
ちゃんが苦手な科目教えてあげるよ」からの
ちゃんもコーヒー飲んでみる?」だの。

一回呼び始めたら「ちゃん」連呼するじゃん…。

いやホントなんだよそれ大石くん…
相手のこと呼ばないと思ってたら下の名前で呼ぶタイミング見計らってたのかよ…
表情硬かったのは緊張してたのかよ…
普通にすごくいい笑顔するじゃん…
ちゃんのことめちゃめちゃ好きじゃん…。

あーあ。
幸せになってくれ。



「(いいなー、ちゃん。私も秀一郎くんみたいな彼氏ほしい)」



青春を謳歌しろよ、若人よ。

心の中でだけ呟いて、お店を後にした。
























まさかのモブおば視点wwwそしてタイトル雑w

先日やった夢小説の名前登録アンケで、
自分の名前(本名やHN)に対し、オリキャラ名で客観視する派が割と多く、
だったらどうだ、始めから客観視してる夢書いてやったぞドラァ!
これを第三者の名前でやると客観視してる主人公を客観視する羽目に会うぞ!(笑)

これはフィクションですけど、ミスド居座り厨なので
周りの中高生見ていいなーと思うことは度々あるw


2019/11/10