* 再会したら落ちてしまった。 *












中学校を卒業してから5年。

今日は、青学同級生での同窓会だ。


一部の子たちが成人式で再会したのをきっかけに企画してくれたみたい。
まさか同窓会の会場が居酒屋なんてさ、私たちも年取ったね。


「席決まってないから適当に座ってー」

「はーい」


早めに着いたからそんなに集まってないな。
仲良かった子たちは誰か居ないかなー
と周りを見渡すと。


「(居る…)」


私が視界の端で捉えたその存在は、
大石秀一郎だった。


何故気に留めてしまったか。

実は、中3のとき、私は大石に告白された。


秋ぐらいだったかな。
放課後に教室に残ってくれと言われて
何事かと思ったらそういうことで、
すごく真剣な表情で
それこそ顔を真っ赤にしていたのが印象的だった。


だけど。


『ごめん、ムリ』


私は即答したのを憶えてる。



だって当時の大石と言えば。

勉強は学年トップでクラスの学級委員で
テニス部でも副部長をしていて
同級生だけでなく先生からも頼られるような
「真面目」という言葉がとても似合う生徒だった。

それに対して私は授業中は友達と手紙回してばっかだったし
テスト前は勉強するけど大した点数も取れないし
部活にやらずに帰宅部だったし
謙遜とかじゃないけど特段可愛い方でもないし
今になってもなんで好きになってくれたのかわからない。


品行方正な大石と私は不釣り合いだと思ったし、
私も大石にこれといって惹かれることはなかった。
…髪型は謎だしさ!

どっちかというとテニス部でダブルスのパートナーをしてる
菊丸くんの方が可愛いしカッコイイなーなんて思ってた。


私が告白を断っちゃったからそれ以上は何もなくて、
大石はいつも通りに振舞うから距離は離れることはなかったけど
当たり障りのないクラスメイトとしてそのまま一年を終えた。

だから今も別に気まずいとかはないけど
居るのか居ないのかだけ、なんとなく気になってしまった。


ま、話しかけてきたら普通に話すし。
でも別に私の方から無理に話しかける必要もないよね?

というわけで姿は確認したけどそのまま適当に空いてる席に座った。ら。


…は?
こっち来る。
なんで。
いや偶然でしょ。
……。


「久しぶりだな、


座るんかーい!


まだ人が少なくてがら透きの席を移動して、大石は私の隣にやってきた。
いやいやいや。
私も別に避けようとは思ってなかったけど
こんな積極的に近づいてくるとも予想してなかったよ。


「ひ、さしぶり」

「一瞬誰かわからなかったよ」

「私はすぐわかった」

「そうか」


はは、と爽やかに笑った。

当時は、おっさんくさいなーとか、思ってたけど、
この年にもなると落ち着きがあっていい感じだなと思える。
優しい雰囲気は相変わらずだし。

総合的な印象として。



「(こんなにカッコ良かったっけ?)」



確かに元々美形ではあった。
意味不明な髪型で台無しだったけど!
頭良かったし優しかったし
自分には絶対合わないとは思ったけど
別に嫌なやつだったわけではないのだ、大石は。

そんなことを考えてるなんて悟られたくなくて、
この場に適切な無難な話題を振る。


「今、大学生?」

「ああ。医大に通ってるよ」

「へーお医者さんになるんだ」


そのままお互いの近況を話す流れになった。
その間も少しずつ人は増えてきて、
「久しぶりー!」と挨拶はするものの
私は大石の話をもっと聞きたくって
話が途切れても「それから?」と続きを求めた。

大石と話してるの、楽しい。
話す横顔を見ながら、
「今だったら、告白されたら付き合ってもいいかもな…」
なんて考えてしまった。

ま、都合よすぎだしそんなことありえないんだけど!


私のそんな思考をよそに
大石は私の顔をじっと見てきて
何を言うかと思いきや目線を今度は逸らして。


…なんていうか、キレイになったな」

「えっ!?」

「あっいや、前はすごく前向きで元気な子っていう印象だったんだけど
 今日久しぶりに会ったら、なんというか……
 …うまく説明できないんだけど、すごく魅力的だよ」

「あ、りがと…」


何これ。
大石ってこんなこと言うタイプだったっけ!?
まああれから5年も経ってるしキャラ変わったりもするよね…。
それとも前からこんなだった?私の見方が変わっただけ??

思いがけず、ドキドキ。

でも、さっきみたいなこと簡単に言えるってことは
逆に今はなんとも思ってない証拠なんだろなー…。

って、何ショック受けてるんだ、私。


これ以上何を言い返したらいいかわからず黙っていると、大石は

「俺、何言ってるんだろうな」

と頭を掻いた。
ふぅとあからさまな溜息をつくと
ひとり言のような音量でぽそりと呟いた。


「もう、5年前に嫌というほどフラれてるのにな」


…何、それ。
どういう意味?


その言葉の意味を考えながら
横顔に目線を当てていると
大石もこちらを向いてきた。


ざわめきの中の沈黙で、目が合う。


見透かされているみたいで嫌になって目を逸らした。
なんだ、これ。なんか、顔も熱い。

大石がこっちを覗き込んでくる。
私は逃れようと必死に逸らす。

めちゃくちゃ恥ずかしい。

何コレ。



「なあ、



久しぶりに名前を呼ばれた気がして
また心臓がドキンと鳴った。



「照れてるってことは、少しは可能性を感じてもいいのかい?」



恐る恐る目線だけそちらに向けたら、
眉を八の字にした笑顔が見えた。
その顔は、なんだか見覚えがある気がする。
あの頃はなんとも思っていなかったけれど。


周りに元クラスメイトが増えてくる。
だけど私は動けない。
この世界から抜けれない。


『大石くんも、会わない間にカッコ良くなったよ』。
そう伝えたかったけど、顔が熱すぎて、どうしても言葉にできなかった。
























久しぶり再会したら大石がカッコよくなってた
ないしカッコよく見えるようになってた話。
年を取ってからの方が大石の良さがわかるようになるよねという
話にインスパイアされて書かせて頂きました。
スぺサンのえさんに捧げます!

このときの大石の髪型はどうなってるんだ!?
読み手の想像にお任せします!


2019/10/10