* 現在思春期真っ只中につき *












ふわ〜〜あ。


顎が外れるのではというほどの大きなあくびをしたのは、
俺の彼女であるだ。


俺の前でこのような無防備な姿を見せてくれるようになったのは、
信頼されているようで嬉しい気持ちでもあるが、
さすがにこれまで大きなあくびは…
疲れが溜まっているのではないかと心配になる。



、本当に大丈夫か?帰って休んだ方が…」

「大丈夫!」



今日はテストの最終日だった。
前から約束していて、がうちに遊びに来ることになっていた。
しかし、話を聞くと何やらほぼ徹夜で勉強していたという。
それはあくびも出るわけだ。

やっぱり、無理せず帰ってもらった方が良いのではないか…。
そう思って口を開こうとした瞬間、先にが声を出した。


「だってさ…」

「ん?」


口を尖らせたは、横目でこちらを見上げてきた。



「秀、明日以降はまた部活で忙しいんでしょ?」



確かに部活は忙しくて、なかなか二人で会う時間が作れていない。
自覚はあったけど、は一度も文句を言わないものだから
それに甘えている部分もあったかもしれない。
想像以上に淋しい思いをさせていると思い知った。



「そうだな。今日はうちで一緒にゆっくりしよう」

「えへへっ」



相変わらずなつっこい、でもそれだけじゃなく、甘えたような笑顔。
ただの同級生で居るころは見られなかったその表情に、
付き合っているということが実感できた。

に淋しい思いをさせたくない。
それは真実ではあるけれど、
俺自身もと一緒に居たいという思いがあるというのも、また真実であった。





  **





「飲み物持ってくるから、適当に座ってて」

「はーい」



うちについて俺の部屋に上がって、
荷物を降ろしてから俺はまた台所に降りた。

冷蔵庫の中には、麦茶。
…ぬるい。
まだ出来立てみたいだ。

母さんが作って入れていったんだな。
確か、今日は夕方からパートだ。
まだ出かけたばかりみたいだ。


コップに氷を3つ入れて、麦茶を注いだ。
まだ温度が高いそれは、氷をみるみる溶かした。
追加で2つ氷を入れた。
コップをおぼんに乗せて、階段を上がる。

そういえば、美登里はもう帰っているのだろうか。
通り過ぎ際に部屋を覗き込むと、ランドセルが見えた。
一旦下校してからまた遊びに出かけたみたいだ。

父さんは当然夜まで帰ってこないし、
つまり、今うちには俺との二人…。
………。


いや、何を考えているんだ!
今日はよこしまな理由でをうちに呼んだんじゃない!


大きく息を吸って、吐き切った。



「おまたせ。………?」



ドアを開けると冷房の効き始めた部屋は少しひんやりしていて、
その部屋の中、はベッドで横になっていた。
顔を覗き込むと、どうやら寝てしまったようだった。


やっぱり、疲れてたんだな。


おぼんを机に置いて、麦茶を一口だけ飲んで、
起こさないようにそっとベッドに腰かける。
規則正しい寝息が聞こえてきて、合わせて肩が上下するのが見えた。


そっと頬を指の背で撫でた。

…起きない。
本当に疲れてるみたいだ。


そのまま寝かせておいてやろうか、とも思ったけど
後で「どうして起こしてくれなかったの!」と怒る姿が容易に想像できた。

別に、怒られるのが怖いわけではないけれど
に悲しい思いはさせてはいけないな。
…起こすか。





肩をポンポンと叩く。
……起きない。



ー」

今度は肩を揺すった。
……やはり起きない。



これは、相当熟睡してしまっているようだ。

………。



「………襲うぞ」



冗談で、ぽつりと小声で呟いた。

冗談で。


冗談に、したかったのだけれど。



見たい。


触れたい。


君の 素肌を 感じたい。



目線を、顔から順に下ろしていく。

無防備に緩んだ胸元と、
制服越しにもわかる二つの膨らみ。



少し……だけなら。

いいかな、触っても。


ちょっと、服の上から、揉むくらいなら……。




むにっ。




あ。


マズイ。






それは。


想像していた以上に、やわらかくて。

想像より遥かに、心地よくて。

甘美で。



俺の理性を吹き飛ばすには、充分だった。


気付いたら、そろりそろりと手が
セーラー服の胸元から中へ侵入しかけていて。

カランと麦茶の氷が溶ける音で
ドキッと手を引っ込めて。

でも規則正しい寝息は続いていて。


また、そろりそろり。

そろりと…。


襟元に指を掛けると、
パステルグリーンの下着に包まれた、
二つの膨らみが見えた。


自分でもわかるくらいゴクリと喉が鳴った。



ついに、手を、差し入れた。

抵抗のないくらい柔らかい何かが指先が触れて…―――



――マズイ。

完全に勃起した。



もう、がまんができなくて。


気付いたらチャックを下ろして
自身のモノを取り出して、しごいていた。




いつもだって、この部屋で及んでいる行為なのに
ただ、一人の女の子がいるだけで。

片手を、ただ、服の中に滑り込ませただけで。

ここまで興奮して、歯止めが利かなくなるなんて。


自分に驚いた。



ハァ。

ハァ。


が起きないことを祈りながら、
どんどん固さと熱さを帯びていくソコを無我夢中でしごいて。


大丈夫だよな、これくらいなら。

触れるくらいならば。

少し揉むくらいならば。


……起きない。


もうちょっと、下着越しじゃなくて、
内側に手を入れてみても、いいよな…。



腕を伸ばして手を潜り込ませると、左手の指先が、何かに触れた。


なめらかでやわらかな山にそぐわない、
コロッとした、何か。


あ。


これ…の、乳首…?




「あ……っ!」




マズイ。

もう、出……っ!!




「くぅ……ウッ!」




爆発するように。


白濁とした液が
押さえる暇もなく
飛び出していく
のを見届けて。


肩でしている息が
落ち着いてきて、
サーッ…と
血の気が引いた。


に、ぶっかけた……。

しかも制服の上……。



「わあぁぁぁ!!」

「ん…秀?あれー私寝ちゃって…」

「ごめん!!動かないで!ホントごめん!ごめんね!!」



上半身を起こそうとするの肩を押さえて制して、
混乱しながら謝り倒した。

寝ぼけ眼でぼーっとしていただったが、
俺の下半身の中心から
“ソレ”がズボンの外へぶら下がっているのを見て、
一気に表情が変わった。


「キャアアアア!?!?」

「あー、ごめん!もう!なんか!ホントごめん!!」


急いでチャックを上げた俺はもう謝ることしかできず、
顔の前で必死に手を合わせた。
っていうか、制服…。


「あの、あとでまたちゃんと謝るから、とりあえず拭かせて…」

「え?」

「早く拭かないと落ちなくなるから」

「えっ?……え、えぇぇぇぇ!?」


の目線が胸元に落ちて、仰天の声が上がった。
恥ずかしいやら申し訳ないやらで
顔が真っ赤になるのを感じながらそこをティッシュで拭いた。


最、低だー……。

こうなってはいけないと強く意識していたのに、
結局欲に流されてしまった。
結果、のことを汚してしまった…物理的にも、両方。


ティッシュで拭いて、ある程度は取れた。
でも匂いとかつくよな、染みにならないかな…。
濡れタオルとかで拭いた方がいいか?いっそ洗濯…?

いや、それより謝罪が先だろう。

背中を支えて、の体を起こした。


「…………」

「…………」

「……ごめんなさい」


ふぅー、とはあからさまに大きなため息を吐いた。
ぎゅっと体が強張った。
目が合わせられないほどの罪悪感だった。


「…怒らないから、とりあえず説明して」


その声は、感情がなくヒヤリと感じられた。

は今どんな心境だろうか。
でも今更、誤魔化すも何もない。
正直に言うしかない。

幻滅されるだろうか。
…されないはずがない。


「その…」

「………」

「寝ているを見たら、触りたくなってしまって…」

「…どっか触ったの」

「胸を触りマシタ」

「ふーん。で?」


…辛い。
ここ暫くで一番ツライ。


「少し触りたいだけだったんだけど、触ったら、歯止めが利かなくなってしまって…。
 あ、の体にはそれ以上触ってないんだけど!絶対に!」

「………」

「……本当にゴメン!!」


これ以上は、口にするのも忍びなかった。
これでもかってほど頭を下げた。


「いいよ、そんなに怒ってない」

…」

「すごいびっくりしちゃったけど。
 私も寝ちゃってごめんね」


淡々と喋っているけれど、いつもみたいにころころ変わる表情がそこにはない。
も動揺しているだろうな。
本当は、まったく怒っていないということもないだろうに。
いや、怒ってくれていればまだいい。
は傷ついていないだろうか…。


どうして俺は、こんなことをしてしまったんだ。
時間が戻るなら巻き戻したい。
最低だ、俺は――。



「いつかさ」



の声に顔を上げると、
は、わずかに頬を染めて…?


「私たちもそういうことする日が、来るのかな」

「えっ…」


そうか。
いつか、そういうことをする日が、来るのだろうか?


こんな形ではなくて。
もっと成長して、
“そういうこと”をしたいと
お互いに覚悟を持てた、俺たちがいて。

今までは必死に欲を抑えることを考えて
逃げてばかりいたけれど、
しっかり向き合って、その瞬間を、いつか迎えられたら。


俺が何も言わないのに対して、
は今度こそ間違いなく顔を真っ赤にして

「でも、しばらくはナシだからね!!」

と言った。


だよな…と思いながらも、未来に向けての想像ができるようになった、
これは大きな一歩だと思った。


「わかってる」


これは、本音だ。
ただ、今までは本当の意味ではわかっていなかったかもしれない、とも思った。


「大好きだから、まだしない」


肩に手を回して、力を込めた。


はコテンと頭をこちらに倒してきた。
これは、また寝てしまいそうだな…。

安心してもらえることは嬉しいけれど、
俺もまだまだだなと思った。



燃え滾る熱情を内に秘めて、俺の葛藤は続く。
























青臭い大石が好き過ぎてw思春期特有の悶々ブフォw
単体として書いてたんだけど、
あれこれ『若人よ熱を冷ますなかれ』の続編じゃね?
と途中で気付いて設定つなげてみた次第。

しどろもどろ話す大石が珍しすぎてw
でも大石だって男の子だもん言い訳して逃げたくなっちゃうときあるよねw
それでも正直に言うのが大石なんだけどさwかわいーなーw

ついったでふぉろわさんの発言読んでたら続き書きたくなって仕上げたんだけど
偶然にも書き始めが5年前の今日だった。ミラクル!


2019/07/14