* HOW TO Escort You *












俺の胸は高鳴っていた。

何故なら、今日は初めてがうちに泊まりにくるんだ。


髪の毛の一本でも落ちていやしないかと気になってしまい、
コロコロを持ったままさっきから何度部屋を往復したかわからない。

観葉植物の位置を変えてみて、でもやっぱり戻してみて、
我ながら落ち着かない。


そろそろ来てもおかしくないな…。


約束の時間の15分前になり、アロマを焚いた。
リラックス効果のあるラベンダーの香りだ。
が気に入ってくれるといいのだけれど…。


いよいよ部屋に施すことがなくなって、クローゼットを開く。

冬服が仕舞われた段ボールの中、
紙袋の中で雑誌に挟まれて、
別の本のカバーがされたその本を手に取った。


これはいわゆる、セックスのハウツー本である。


がうちに泊まりにくると決まったその日に即購入し、熟読した。
重要な部分にはマーカーで線を引き、付箋を付け、何度も読み返した。

今夜はお互いが初陣。
ここは、男の俺がリードしないと…!


…大丈夫。問題ない。

繰り返し行ってきたイメージトレーニングの内容と
本の記述を照らし合わせ、イケると確信した俺はそれを元通りの位置に戻した。


時計は待ち合わせ時刻丁度。

人を待つのは苦ではない方だけれど、
今日は特別落ち着かなかった。

しかしは「人の家に伺うなら気持ち遅め」を礼儀正しく守る子で、
俺はやきもきしながら時が過ぎるのを待った。



『ピンポーン』



来た!

約束の時刻の5分後になってチャイムが鳴った。
扉を開けると、そこに立つは「やっほ」と言って微笑んだ。
今日も可愛い。
俺はなんて幸せ者なんだ…。


「いらっしゃい。大丈夫、迷わなかった?」

「3回も来てるしさすがに大丈夫だよ」


そう言っては笑った。
脱いだサンダルを丁寧に揃えて、「お邪魔します」と上がってきた。


「はぁー涼しい!」


クーラーの点いた部屋に入ってくるなり、は大きく腕を伸ばした。
部屋を冷やしておいて、良かった。
寒くないかな、とも心配だったが、
動くことを考えたら少し涼しいくらいの方が…。

…いや、何を考えているんだ俺は。


「今日は外暑そうだな」

「最高気温30℃超えらしいよ」


俺の思いも知らずにはそう言いながら日傘を畳んでいた。
俺はその傘と鞄を受け取った。

受け取った…はいいものの、置くのに良い場所がなくて床のテーブルの脇に寄せた。
なんとなく、ベッドの上は避けたこざかしい自分がいた。


「(まだ夜は長いのに、気が早すぎか?)」


「お手洗い借りるね」

「どうぞ」


頭では下衆なことを考えながらも
それを感じさせないように気を配って返答する。
の純真さが、眩しい。


「はー、来るまでに汗掻いちゃった」


部屋に戻ってくるなりベッドに腰掛け、
胸元のボタンを開けるとパタパタ仰ぐ

…誘ってるのか?


いや、シャワーを浴びていない状態で迫るのはマナー違反だ!
でももしかして、がその流れを求めているとしたら…?

…試してみるか?


「シャワー浴びたい?」

「なぁにそれ。そこまでじゃないよ」


俺の発言を冗談と受け取ったようで、は声を出して笑った。

違った。それもそうか。

どうにも過敏になっている自分に苦笑。






  **






その後は借りていたDVDを観て、
お茶を飲みながら雑談をして、
日が暮れ始めた頃に買い出しに出かけて、
一緒に晩ご飯を作って、
食べて、
……。


ここまでは、完璧な流れである。
これだけなら今までもあった。

問題は、ここから。


「そろそろ、シャワー浴びる?」

「今度こそね」


昼間の俺の発言を受けて、はケラケラと笑った。
まさか下心から生まれた発言であったなどとは思ってないから言えるのだろう。
俺は、ハハと苦笑い。


「湯船浸かりたい?」

「あー、夏だしいっかなー」

「じゃあ…すぐ浴びる?」

「うん、そうする」


いよいよ、だ。
胸がドキンと鳴った。



にタオルを渡してシャワーの使い方を教えて、
部屋に戻ってきてふうと一息…している場合じゃない!


まず、アロマを焚く。
昼間はリラックス効果のあるものだったけれど、
今度は、欲情を掻き立てると言われるイランイランの香り。

次、コンドームを枕元付近に設置する。
日中見つかるわけにはいかないからまだ置いていなかった。

そしてアクアリウムの照明確認、OK。
これが間接照明となって、電気を消しても真っ暗闇にはならない。


あらかた準備が整った段階で、がシャワーから上がってきた。


「わーなんかいい匂いする」


こそ、シャンプーのいい匂いだ…。
肌は湯上りで瑞々しく、綺麗な桃色をしていた。
可愛い。


「ああ、昼間の香りから変えてみたけど、どうかな」

「なんかエキゾチックな香り〜結構好き」


反応は上々…かな?
これに本当に効果があるのかはわからないけれど…。


「…じゃあ、俺も浴びてくるな」

「はーいごゆっくり〜」


シャワーに打たれている間は、滝行のような気分だった。


ついに…ついにこのときが来た。
しっかりリードして事を進めるんだ。
でもがっついてはいけない。
の気持ちが第一優先だ。

本当にできるのか、俺に?
…何言ってるんだ、散々予習とシミュレーションしてきただろ!


自問自答を繰り返し、煩悩だけは洗い流せていないような気もしながら、
体をさっぱりさせた状態でシャワーから上がった。


「おまたせ」

「ぜんぜ〜ん」


スマホを弄っていたは俺が戻ってくるとそれを閉じた。
乾かしたての、少し水分を含んだような髪が綺麗で、目眩がしそうになった。


「喉渇いてる?」

「あ、渇いてる!さすが!」

「お茶もあるし、牛乳もあるけど」

「牛乳とかめっちゃ銭湯っぽいんだけど」

「え、俺よく飲むんだけど変かな」

「マジ〜!?」


はまたケラケラと笑い、楽しそうだ。
そんな話をしながら、結局二人とも牛乳を飲み、
しばらく雑談。

話題が途切れたときに時計を見上げると、11時を指していた。


「そろそろ、寝ようか」

「そだね」


そして二人並んで歯磨き。
鏡越しにお互いを見る機会ってあまりなくて、なんだか気恥ずかしい。

一緒に暮らしたらこんな感じなのかなぁ…なんてな。


先に歯磨きを終えたは、
俺が部屋に戻るとベッドの前で立っていた。


「秀ちゃん、右側と左側どっちがいいとかある?」


そうだ。

これからこのベッドで寝るんだ。
と。
二人で。


「どっちでもいいよ」

「じゃあ私奥側にしよ〜」


そう言っては先にベッドに潜り込んだ。

が、俺のベッドに…!

その絵面だけで勃ちそうだった。
落ち着け、まだ早い…!


「じゃあ、消すぞ」

「はーい」


ぱちん、と部屋を消すと部屋は一気に暗くなった。
アクアリウムの明かりを頼りに俺はベッドに向かう。


「お魚さんたち光るんだ。おしゃれ〜」

「そうかな」


もはや気の利いた返事もできない。
簡素な返事をしながら俺も布団に入り込む。


――シン、としてしまった。

ここで突然がっつくのは童貞が過ぎるな!?
こういうのはなんといってもムード作りが大事なはずだ。

なんでもいい。まずは喋ろう。


「大丈夫、枕。寝にくくない?」

「大丈夫。ありがと」


終わってしまう…。
俺は次に繋がる話題を探して頭をフル回転させる。


「冷房強いかな?」

「ん?んー…大丈夫だけど」

「…俺は、少し寒いかな」


そう言って、の体を抱き締めた。

平静を装っているが、
胸は爆発しそうであった。
静まれ、俺の心臓…!


の体が近くなったので、頬にキスをした。
こっちを向く気配がしたので、今度は唇同士。
付けて離してのペースを上げていく。

まずい。
勃つッ…!


腰を引いてその部分がに当たらないようにした。
がっついているのが気付かれたら引かれてしまうかもしれない。
今日は、俺が冷静にリードするんだ…!


舌も入れて、少し深めのキスをした。
の喉の奥の方から高めの声が聞こえ、
俺の股間は完全にフル勃起状態になってしまった。
腰を引いていたにも関わらず、
テントを張ったその先端がに触れた。

…もうそろそろ、いいんじゃないか?
がどんな気でいるかを確認する意味も込めて!

腰を、前に突き出した。
の腿あたりに、俺のカチカチになりきった息子が押し当てられる形になった。
気付いた、かな。




「ん?」

「わかる?当たってるの」

「……うん」


問いに対して、
は少し考えた風な間を開けて答えた。


「考えてた?今日こういう感じになるって」

「…かなぁ、とは思ってた」


も、考えてくれていたんだ…。
それだけで息子が更に成長を遂げそうな気がした。


「そうか……イヤじゃない?」


聞くと、は俺の目を見たまま固まって、
でも数秒後、ほんのわずかに顔が縦に揺れた。

嬉しい。


「嬉しいよ」


本当に俺は幸せ者だ。


そっと胸に両手を乗せて、軽く揉んだ。


「わ」

「あ……柔らかい」


それは想像以上の柔らかさであった。
いつもチラ見しながらも一度も触れることが許されなかったのおっぱい…
それを今、ついに初めて揉むに至っている…!


、自分で貧乳だなんていうけど、ちゃんとあるじゃないか」

「やめてよ恥ずかしい」


はそういって体を捩ったけど、
その体を組み敷いて俺は上に跨がった。


俺はを見つめる。
も俺を見ていた。


、可愛い。


顎に手を添えて、キスをした。


服の中に下から手を伸ばすと、
レースのブラジャーと丸みに手が触れた。

ブラジャー、外したい。


しかし、ここは童貞が初セックスにおいて躓く手順トップに君臨してくる部分…!

構造は調査済みだ。
あとはシミュレーション通りに行くかどうか。


左腕で、の背中を少し浮かせた。
右手でブラジャーのホックに手を伸ばした。

ここを、摘まみながら…
ここを、こう引く?いや、こっちに?

あ、取れた。

意外にも簡単にそれは外れた。
もう一度やれと言われて出来るかわからないが。
とにかく、今回は一発で行けた。

今日の俺はノっている!


服を下から捲し上げて、ブラジャーもどかした。

胸全体を包むように手を乗せた。
こ、これは…!

柔らかいなんてもんじゃないぞ…吸い付くようだ!

そこは自分の体には到底存在しない柔らかさであった。
、こんな体をしていたんだな…。
大袈裟じゃなく一生揉んでいられそうだ。

しかし、もっと強く揉みしだきたい衝動に駆られながらも、それを抑えた。

右手で右側の乳首を弄りながら、
左側の乳首に、舌を這わせた。

「んっ!」という声がして、は首を背け、
手で口元を押さえているようだった。

声、抑えてるのか…?

…聞きたい。


「ここ、気持ちいいの?」

「ん…」

「可愛い」


小さく返事をしてコクンと頷くの頭を撫でて、
少し舌の動きを速くする。

の息が荒くなってきたように感じた。
たまに、喉を詰まらせたような高い声がわずかに聞こえる。


「いいよ、声抑えなくて。聞かせて」

「秀ちゃ……ふっ、あぁん…!」


聞いたことのないような猫撫で声に俺の興奮は絶頂に達した。
、可愛い。
もう、今すぐにでも挿れたい…!

いや、落ち着け。
今日はを不安にさせてはいけない。それだけだ。
俺が不慣れなところを見せたら不安に思ってしまうかもしれない。
しっかりリードするんだ…!


俺は着ていたシャツを脱いだ。

の服も、一枚ずつ取り払って、下着一枚の姿に。


……綺麗だ。
天使っていうのは、こういう感じだろうか…。

ぎゅっと体を抱き締めた。
温かい。

生きてるんだ…。
そんな当たり前のことに、なんだかジンとしてしまった。

触れている肌、全てが気持ちがいい。
特に、胸の部分…。


また胸全体をゆったりと揉み、
片手をお腹の上を滑らせて腰のくびれの部分を撫で、
そっと、下着の上から下半身の中心部に触れた。
(そう、突然下着を脱がそうと手を掛けてはいけない!バイブル曰くな!)


このへんか?と思う部分を指の腹で擦った。
下着越しに温度と湿度が感じられるようだった。

しばらくフェザータッチを続けたあとに、
下着のふちに、指を掛けた。


「…大丈夫?」

「……うん」


ありがとう。

言葉に出すのはヘンな気もしたので言わなかったが、
ここまで俺を信頼してくれているに感謝の念を抱きながら
そっと、下着を取り払った。


なんとなくの表情が晴れないような気もしたが、
緊張しているのかな、と思い特に言及しなかった。

なるべく、リラックスできるようにしてあげないと…。


舐めるのは恥ずかしがって抵抗がある女性もいるらしいからな、
今回は無理して行うことはないだろう。
今日はマニュアルに則り、基本的に指で攻める!


自分の唾液で濡らした中指を、の入り口に宛がった。
しかし濡らすまでもなく、そこは既にとろとろとした液で濡れていた。
良かった。気持ち良くなってくれているのかな…。


かき混ぜるとくちゅくちゅと音が部屋に響く。
なんて卑猥な音なんだ…!

そして、ゆっくりと、指の先端を埋めていく…。


キツイ。
あったかい。
やわらかい。

なんだこれは…!


脳みそが爆発しそうだったが、それどころではない。
すぐにに声を掛けた。


「痛い?」

「そんなには…」


その口ぶりから、多少は痛いのだろうとわかった。
眉も潜められていて、苦しそうだ。

焦るな。
このときのためにこれまで勉強とイメージトレーニングを積んできたんだろ…!
焦ってぐちゃぐちゃにしてしまえば今までの努力がおじゃんだ。


「ゆっくり慣らすから。安心して」


そう笑顔で伝えて、短いキス。

これが大事なんだよな!
事あるごとに声を掛ける!キス!目を見る!
テキストにもそう載ってたからな!


宣言通り、ゆっくりと慣らした。
指の本数は増やさずに、ゆっくりと内側を撫でながら
唇、首、乳房に唇を這わせたり舌で舐めたりを同時進行でしていく。

色々と試していくと、
少しずつ滑りがよくなっていくように感じた。
は首元が感じやすそうだということもわかってきた。
その部分を重点的に攻めながら、指の動きを少しずつ速めていった。

…そろそろ、いけるか?

充分に蜜が溢れかえってきたそこに、薬指も浸した。
そして、少しずつ沈めていく……。
なんとか入った。


、指二本入ったよ。きつくない?」

「うん…始めより慣れてきたみたい」

「良かった」


しかし、指、二本。
結構ギリギリだな……。

…これ、本当に俺の股間が入るのか?
自分のが特別大きいとか言いたいわけではないが
さすがに指二本よりは太いぞ!?


いや、恐れるな!
先人たちもこの試練を超えてきているんだ!


もだんだん慣れてきたのか、
声が艶掛かってきたように感じる。
呼吸も荒い。
気持ち良くなってくれているのかな…?

そういう自分も、息が荒い。
俺もそろそろ我慢の限界だ…!


、痛い?」

「うぅん、だい、じょぶ……んっ」


痛くはない、のに、
顔はぎゅっとしかめていて声も苦しそう。
それはつまり、痛みを堪えているのではなく…?


「(中も気持ち良くなってきてるってことか!?)」


でも、そのような行為に慣れていない女性に、
執拗な言葉責めや無理矢理言わせたりは御法度、だったな。

つまりだ。


「気持ち良くなってきてるってことで、いいのかな」

「えっ、と……」

「(ここだ!このタイミングで…!)」


キス。
口を塞いで有無も言わさない。

十秒ほどして、チュッと音をたてながらゆっくり唇を離す。



「何も言わなくていいよ。俺のことだけ考えてて」



決まったーーー!!

これは決まっただろ!!!


心の中でガッツポーズ。
完璧だ…ここまではシミュレーション通りだ。


そのタイミングで、枕元に準備してあったゴムを手早く装着した。
一箱分練習したんだ。ぬかりはない。


「痛くないようにするから。安心して」


そう伝えて頬を手を添えた。
しかしの表情は晴れず、やはり不安なのか…?
とよくよく覗き込んだら。


あろうことか、その目には大粒の涙が。


え。



「今日の秀ちゃん…秀ちゃんらしくない」



えっ。
えええ!?!?


「こういうこと…慣れてるの?」


指で拭っても拭っても涙は溢れてくるようで、
ついにポロポロと泣き出してしまった。

そんな風に思わせてしまうなんて…!


は顔を手で覆うと、本格的に嗚咽しだした。
ど、どうしよう…。
こんなときどうしたら良いかなんて、本には書いてなかった。

考えろ。
考えるんだ大石秀一郎!



………。



結論は簡単だった。

正直に伝えるしかない。


、そんな風に思わせてしまってごめん」


背中の後ろに腕を回してぎゅっと抱き締めた。
細い肩は、しゃくり上げて時折震えた。


「必死なだけだよ。カッコ悪いとこ見せたくなくて」


こんなことを伝えること自体、なんてカッコ悪い。
でも、そんなことよりも、にこれ以上辛い思いをしてほしくない。
それだけだった。

しゃくり上げる声が治まってきた気がしたので、腕を解いた。
は顔を覆っていた手をどかした。
涙に濡れた瞳は、とても綺麗で、何よりも愛おしく感じた。

指の背で頬をそっと撫でた。
涙のせいか、少し冷たく感じた。


「こういうことって、女性の方が負担も大きいだろうし、
 に辛い思いしてほしくなくて…
 ………正直ものすごい勉強した」

「秀ちゃんらしい」


ぷっとは笑った。
俺も、釣られて笑った。


「私もごめん。泣き出したりして。なんか…不安になっちゃって」

「俺こそごめん。まさかそんな風に思うだなんて考えもしなかった」


不安にさせないために、
一生懸命慣れている風を取り繕っていたのに、
まさか自分の行動が裏目に出ていたなんて思いもしなかった。

伝えるしかない。
正直に。

それが一番不安を取り除くことになるのだろう。
きっと。


「本当のこというと、自信はないんだ。でも、
 なるべく辛くないようにしてあげたい」


本心だった。
始めから、本心はそれだけだったのだ。


「…大丈夫かな?」

「……うん」


は頷いた。微笑んで。


本当は、不安な気持ちが消えたわけではないだろうと思った。
でも、少しでも減らしてあげたい。


目を合わせて、
キスをした。

の足に割り入って、
先ほどまで指を差し入れていたその部分に、
自分の中心部を、当てた。


緊張で心臓の音が頭まで響いているようだった。
大きく深呼吸。



「…いくよ」

「………うん」



ゆっくりと腰を落としていく…
しかし、これは、入っているのか…?
わからないってことは入ってないよな…?


は眉間に皺を寄せていた。
辛そう…。
ごめん、

でも、初めてはどんだけ慣らしても痛い人は痛いって聞くし、
それでもなるべく辛い思いはしてほしくない…。

だけど俺には経験がない。
本で得た知識しかない。

どうしたら、の不安を取り除ける?
辛い思いを少しでも減らせる?


「ごめん、辛いよな」

「う……秀ちゃん」

「もうちょっとだけ、頑張れるか?」


コクンと頷くのが見えた。
指と指を、絡めた。


少し、少しだけ、勢いを付けて腰を突き出した。


あ……
先が、突き抜けた感触があった。

入、った…!


そして体重を徐々に掛けていくと、
ずぶずぶと飲み込まれるように入っていった。


「あ、あああああ…!」

「ごめん痛いよな、…っ」


ええとええと女性が痛がるケースは前戯が足りていなくて
膣の入り口・内側が充分に濡れていない場合、緊張で体が
強張っている場合、刺激になれていない場合、初体験で
膣口に十分な広さが足りていない場合…最後のこれか?いや全部か!?
対処法としては、一度抜く、動かずに慣れるのを待つ、
強い刺激を与えない程度ゆっくりと動かす、
ローションなどを用いて滑りを良くする…えーとえーーーーと…


頭の中では様々な思考を巡らそうとするが。



「(気持ち良すぎて、爆発しそうだ…!)」



今、俺の本体ともいえる体の一部が、
の中に入っているんだ…
二人で一つになっているんだ…!

そう考えるだけで、快感と、充足感で、頭がおかしくなりそうだった。


…いや、ダメだ!
自分の快楽だけに押し流されている場合じゃない!

を見ると、眉を潜めて浅い息を繰り返していた。


、一旦抜こうか?」


しかしはイヤイヤと首を横に振り、
ぎゅっとつむっていた目を開けた。


「せっかく一つになれたのに…まだ抜かないで」


涙で濡れた瞳。

健気。

かわいい。

愛おしい。


限界。



「あ、ごめ……うっ!!!」

「え?」


あっ、あっ、あーーー……




…………大放出。




こんなはずではなかった。
まったくシミュレーション通りに行かなかった。嘆きしかない。


「………」

「……抜くよ」


おっとこういうときは根元を押さえてゴムごと抜くんだったな…。

ゆっくり抜く。
…自分でも驚くほどとんでもない量が出ていた。

賢者モードも相まって、一気に反省の波が来た。


俺は…に満足してほしくて…
それなのに尚更不安にさせて…
自分だけ気持ち良くなって…
一瞬で…
……………。


おそるおそるの方を見ると…


、どうした?」

「え、ふふふっ」


なんと、楽しそうに笑っていた。
これは…丸っきり童貞だったのがバレて笑われているのか…。


自己嫌悪に陥っている俺に対し、は笑顔でこんなことを言う。


「ついにエッチしちゃったんだねぇ、私たち」


それで、楽しそうなのか?
…本当に?


「ごめん、カッコ悪いとこ見せて…」

「そんなことないよ」


はゆっくりと体を起こした。
背中を支えて上げると、嬉しそうに微笑んだ。

そして、こう言った。


「カッコ良かったし、とびきり優しくて、私の大好きな秀ちゃんだった」


そのとき、ある衝動が沸いてきた。

この行動は、
本に載っていたからではない。
安心させるためでもない。

俺が、どうしてもそうしたかったから。


思いきりの体を抱き締めた。



、大好きだよ」

「私も、大好き」



シミュレーションとは少し違っていたかもしれない。
だけど、とびきり幸せな、初体験の思い出となった。

次までに、更にレベルアップできるようにイメトレを積まねば…。


そんなことを考えながらも、二人ゆっくりと、眠りにつくのだった。

























童貞ぽさを出さないために予習をするという童貞の極み(笑)
大石は童貞に限る!!!(そればっか)

ハウツー本をテキストよもやバイブル扱いする秀一郎な(笑)
でもそんな本で学んだことより何より本心をぶつけ合うことだよ、
という話でした。

あーあ、この大石なかなかに私の理想なんだよなーw(優しい童貞)(童貞から離れろ)


2019/06/27