* ジューンブライドに憧れて *












「やっぱり、結婚式は6月がいいかなぁ」


入籍の日取りも決まり、あとは式の日程を詰めたい段階の私たち。
いわゆる結婚情報誌をパラパラ捲りながらウキウキに呟いた私の一言に秀が冷静に答える。


「意外とそうでもないらしいぞ。関東は梅雨に入る頃だしな」

「そっか、梅雨かー…」


やっぱり、ハレの日はお天気も晴れでいてほしいもんね。
私も今まで出てきた友達の結婚式、振り返れば晴れた日ばかりだった。
日頃の行いだなぁって思ってたけど、
みんなそういう季節を選んでいたのもあるのかもしれない。


結婚式は6月に。
ハネムーンはハワイかオーストラリアへ。

もしかしたら今では少し古い考えかもしれない、
そんな先入観を持ち続けていた私。


「そうなんだねー……」


ジューンブライド、って、憧れるけど、
雨降りは出来れば避けたいなぁ…
そう思って情報誌を最終ページまでパラパラと捲りきった。

こんなの読んだってよくわかんないや。
ふぅと溜め息が出た。


「週末に式場見に行ったときに相談してみようか」

「…そうだな」


一旦、その話はお開きとなった。




  **




さて土曜日の今日、あいにくのお天気。
窓を閉じていても音が聞こえるくらいの土砂降りの雨。

式場探し、明日でよくない?…とか言いたい。
だけど秀はようやく取れた計画休暇で明日は仕事だ。
動かせない予定と同じで、お天気はコントロールできないからなぁ…。

確かに、こんな日だと式場に向かう足取りも重くなっちゃうのかな、本人も参列者も。
それでも素敵な式になるようにプランナーさんたちが全力で考えてくれるって聞くけども。

だけどやっぱり、一生で一度の大切なその日、
青空の下で迎えたいって、どうしても思ってしまう。

窓から視線を外して、スマホとにらめっこしている秀に声を掛ける。


「ね、今日何時に出かける?」

「なあ」


私の問いかけを遮るように、秀は声を上げて真剣な表情を向けてきた。
何を言うかと思いきや。


「海外で挙げないか?」



………ほ?


「え?」

「だから、海外で式を挙げるのも一案としてはありかなって。
 海を渡れば、その季節に晴れが多い地域もあるだろう」


わかる。
その理論はわかる。

でもどうしてそこまで…。


「お前も、ジューンブライド憧れてただろ?」


あ、、
気付いてくれてたんだ…秀。

さすがすぎるなぁ。
その気遣いが嬉しいよ。
でも別にそこまでこだわらないよ、って、
言おうと思ったのに。


「…いや、この言い方はズルかったな」


頭を掻くと、秀はいつもの癖の、八の字眉の笑顔を見せて。


「ジューンブライドにしてあげたいんだ、俺がお前を」


ここではない遠いどこか。


青い空。

青い海。

まばゆい純白の景色の中で、

柔らかく笑うアナタがいる。


「…それにする」

「早いな」


笑いに包まれながら、私たちはこれからの計画を立て始めた。


本当はね、どうだっていいんだよ。
天気とか、場所とか、どの季節だって。

一番の夢だった“幸せな花嫁になること”、
それを叶えてくれるアナタがいてくれるから、
どうやら私は、ずっとずっと憧れていたジューンブライドになれるみたいだ。






















テニラビMARINE DESTINYが最高すぎるねっていう話(そればっか)
はーーー大石と結婚したい人生だった。
無理なら元カノか体の良い愛人にしてくれ(しくしく)


2019/06/14