* 横目で鋭く射抜かれるとは *












あー…降り始めたわ。


掃除の時間にはまだ降ってなかった。
長引いた委員会の間に雨は降り始めてしまい、俺は激烈に萎えた。

さっさと終わらせてくれてれば雨にあわずに済んだのに。
しょーがねぇ、置き傘があるからそれを差して帰ろう。


げた箱までやってくると、
そこには今一緒に委員会を終えたクラスメイトが。


「げげー…」


昇降口のドアをくぐって、
まぬけにも口を開けて呆然としていた。
アホかコイツ。


「何お前、傘ねぇの?」

「ない!」

「得意げに言うなよ。天気予報で言ってただろ」

「ここまで降ると思ってなかった!!」


アホすぎだろ、コイツ。

俺は思わず吹き出した。
「笑うなー!」とは俺の肩を小突いた。



「入ってくか?確か方向一緒だよな」

「ホントに!いいの!?神ー!!!」



両手を上げるとぴょんぴょんとジャンプした。
リアクションデカすぎだろ…恥ずかしいやつ。


「ほらさっさと行くぞ」

「あんがとー」


俺が傘紐のマジックテープを剥がして傘を開く準備をしていると
は小走りで俺の横に着いた。

いざ、傘を開こうとしたその瞬間。



!」



お?

振り返ると、仁王立ちの人物がいた。


この人は俺も知ってる。
保健委員長の大石先輩だ。

あれ、ていうか確か大石先輩って…?



「秀ちゃん!どうしたの?」



は嬉しそうな表情で先輩に駆け寄った。
そうそう、大石先輩はコイツと付き合ってるんだったよな…。


「傘持ってないと思って委員会終わるの待ってたんだ」

「え!なんでわかったの!」

「今朝長い傘持ってなかったから。折りたたみ傘持ってないだろ?」

「さすが!正解!」


がアホすぎて、大石先輩が不憫に見えてきた。
先輩もコイツのどこがいいんだろうなー…。


…いやいや。
明るくて元気だし良いやつなんだけどさ。
彼女にしたいかと聞かれると…違くね?


「(大石先輩はコイツのどこを…)」


無意識にのことを凝視していたことに気付いて、
ふと目線を外して大石先輩を見ると…。



あっ…―――。



「俺、急ぐんで先帰ります」

「そうか?」

「突然どったの

「またな」



俺は急いで傘を開いて門を飛び出した。


ぱちゃぱちゃと足もとをはねかしながら小走りで学校から遠ざかる。
疲れてきて足を留めて振り返ると、
二人は見える範囲にはいなかったので胸をなで下ろした。


「…ふぅ」


さっき見た光景が頭から離れない。

そうか?とか言ってたけど、
大石先輩のあの目線。

………。


恨みを込めて睨まれたのか、
これ以上近付かないように牽制されたのか、
単純にチラ見しようとして目が細まってたのか、
理由はわからないけど。


「…こっえ」


横目で射貫くような鋭い目線は、
完全にいつもの優しい大石先輩の顔ではなかった。
それだけはわかった。



「(、愛されてんなー…)」



俺もそれくらいに思える可愛い彼女がほしいぜ!
今は誰も好きなやつとかいねぇけど!
誰かコクってくんねぇかな!

そんな不毛なことを考えながらどしゃ降りの中を帰った。
























モブ男目線という新しい試み!
男主人公だと言葉遣いがさつにできるから楽だし楽しい。

実はけっこう嫉妬深い大石萌えるよねって話(笑)
なんたって大石は「結構気にする人」!(何度でも言う)


2019/06/10