* 春の終わりに淡紅色の花束を *












待ち合わせにはいつも必ず先に居る秀。
お待たせ、と声を掛けて駆け寄る。


「お誕生日おめでとう」

「ありがとう!」


開口一番お祝いの言葉を伝えてくれた。
そう、今日は私の誕生日。


いつもは寒色を着ることが多い秀が、今日はピンクを着ていた。

思わず顔と服を見比べる。


「珍しくない?ピンク」

「ああ、変かな」

「ううん、似合ってる」


伝えると、秀は安心したように肩を撫でおろした。
見慣れないけど、秀の優しいイメージに合ってる。


もしかして、私がピンク好きなの知ってて選んでくれたのかな?

んー……。


「…ありがとっ」

「えっ、なにが」

「なんでもなーい」


しらばっくれたのか、本当になんの意図もなかったのかわからないけど、
勝手に、ちょっと嬉しくなった。


どちらともなく歩き出して、道端に花壇を通り過ぎ際
幼い頃に覚えたその花たちの名前を指差して呼び上げる。


「チューリップ、パンジー、クロッカス、スイセン、ヒヤシンス」

「詳しいんだな」

「うん。花好きなんだ!もう桜は散っちゃったけど、
 この時期って色んなお花が咲いてていいよねー」


そんな他愛ない話をしながら歩く。
それだけのことが、何よりも幸せな時間。


何をするでなくても、一緒に居られるだけで楽しいな、
なんて思っている私の傍ら、
秀はやたらときょろきょろして落ち着かない。

なんだろう、と思いつつもしばらく歩いていると、
街角にベンチを見つけて秀が足を止めた。


「悪いんだけど、ここで少し待っててくれるかな。
 ちょっと寄りたいところがあって」

「私も行くよ。どこ?」

「いや!俺一人で行きたいんだ。ごめんな!」


そう残して、ほぼ有無を言わさぬ感じでぴゅうと駆け出していった。

あー…行っちゃった。
まあ、さすがに置き去りにされることはないだろうし
このままゆったりと待つかー…。


ベンチに腰かけて行き交う人たちを観察する。

毎年のことながら、今日はゴールデンウィークも最終日。
なんとなく、ゆったりと過ごしている人が多い気がする。
暑すぎず寒すぎず、一年でも過ごしやすい季節。
私は、自分の誕生日が好きだ。

あったかくって心地好くって、このままうとうとしてしまいそう…。
と思いながら人間観察を続けること20分ほど。


「お待たせ!」


いつも待ち合わせには先に来て待ってくれてる秀。
だからこのセリフを聞くのは珍しいなぁ、
なんて思いながら視線を上げたら。


「えっと…つまり、そのーあのーなんだ」


照れた顔で頭を掻くその姿。

珍しいピンク色の服、
照れたピンク色の頬、
後ろ手にはおんなじ色の花束が。


「(見えてるぞー)」


春真っ盛り、これからだんだん暑くなるなぁって
心が温度が上がった気がした。






















ヒョロワさんに大石夢絵を描いて頂いた感動で書いた。
ありがとうありがとうやったぜ!
お誕生日おめでとう自分!!!

「おしゃべりな時間割」チックだなーと自分で書きながら思ったw
(↑人生で初めて読んで感銘を受けた少女漫画)

今年も立夏が今日なんだなー(2039まで4年起きにくるらしい)


2019/05/06