* 実らない片想いがそこに *












好きな人と同じクラスになった。

両想いであれば、
そうでなくても、
両想いになれる可能性があれば。

それならば、夢のような状態だったであろう。
しかし、今の私にとっては。


「(……地獄か)」


私、は、
先日、好きな人である大石秀一郎君に、
恋破れたばかりなのである。



遡ることバレンタインデー、
手作りチョコレートと一緒に、想いを伝えた。


『返事はホワイトデーまで待つから』


そう伝えた私だったけど、
一週間と待たずに呼び出されることになった。



『一ヶ月待ってもらっても、俺の答えは変わらないから』



『ごめん。君と付き合うことはできない』



深く頭を下げての、断りの宣言だった。


こんなに早く呼び出されるなんてもしかして、
なんて期待してしまった自分が恥ずかしい。

悪い返事って言い出しづらいだろうに、
期限まで待たずに伝えてくるという、
誠実な彼らしい、誠意の示し方をしてきたに過ぎなかった。

そこから二ヶ月弱、いってしまえば四十九日ほど経った今日この頃…
私の心の傷は、まだ癒えていない。



「(いるんだ、このドアをくぐったら)」



大きく深呼吸して、教室に踏み入れた。

3年2組。
ここでこれから一年間過ごすんだ。


私の席は―…と教室を見渡す過程で、
もちろん意識しないはずがない。


「(…大石君)」


ズキン、と心臓が痛んだ。
今でも、苦しい、悲しい。
ズキズキと鳴り止まない心臓のまま自分の席に歩を進めた。


すると丁度、大石君も教室の奥から手前に向かって歩いてきて。


「(わ、このままだと、すれ違う)」


一つ列を避けようか、
でもこのまま進めば最短距離なのに不自然か。

とか考えてたら。



「おはよう」


「―――」



目は合わなかったけど、
その一言は、間違いなく私に向けられていて。



「お、おはよう!」



ドキン。

ドキンドキン。


さっきと同じように心臓が強く波打っていて、
だけど、どこか甘く、心地好い。



ズキンドキン。ドキン。



実らない片想い相手と同じクラスになった。

それが苦しくて、嬉しくて、悲しい。
























6分ジャスト作!

好きな人と同じクラスになれたら嬉しいけど、
それが実ることのない片恋相手だったらどうだろね、という話。

まあ、私自身の話をすると、
高校のとき同じクラスで好きだった人が親友と付き合い始めて
いつも3人でつるむみたいな感じだったけど楽しくやってたので
たとえ実らなくても嬉しい派だと思います(笑)


2019/05/05