* この時代に解き放たれたことをこの日に祝う *












楽しかった一日が終わる。

楽しかった一時代が。



「今日は疲れたけど楽しかったなー」

「ああ、そうだな」


喋りながら、秀は布団に入る。
私は最後に髪をくしで梳いてからそのあとを追った。


ふぅー。

…今日は色々なことがありすぎて、疲れちゃったな。



「今までありがとね」

「おいおいどうした」

「いや、なんかさ、節目かなと思ってさ」

「そうだなー」


私の言葉に対して、息を多めに吐きながら秀も同意の声を上げた。


今日は、秀の誕生日だった。

そして、平成の最終日でもあった。


「俺たちも一緒になって随分長いこと経ったな」

「ね」


ただのクラスメイトとして出会って、
付き合うようになって、
同棲して、
結婚して…
あの頃の私たちはこんな未来のことなんて考えていなかった。

振り返ってみれば、私たちの記憶は全部平成時代だったんだ。


「誕生日祝いも何回目だったっけね」

には、毎年あの手この手で祝ってきてもらったからな。
 高2のときだっけ?あの時のは一番すごかった」

「ほんと、我ながら若さのパワーってすごいよね」


自分で答えながらも、
ちょっと悔しくなったりもして。


「…今年だってかなり頑張ったよ?」

「わかったよ、気合入ってるって」

「そっか、良かった」


だって、特別な日だから。
平成最終日が秀の誕生日。
今年のお祝いは、今年しかできない、って思ったから。

でもそれは、決して元号の変わり目だからとかじゃなくて…。


「私さ、毎年祝い方変えるじゃん」

「そうだな。いつも色々やってくれるから感心してる」

「それはね」


ただの気まぐれじゃなくて理由があるんだよ、って。
改めて伝えるのは初めてかもしれないね。
やっぱり、今日は、節目だから。


「物とか事だけじゃなくて、その瞬間その瞬間の気持ちもプレゼントにしたいなと思って」


だって、そうでなければ毎年祝う意味がない。
でしょ?


「そう思っていてもできない人もいるんだから、はすごいよ」

「そうかなぁ。そう思ってもらえると光栄だけど」


話しながら、首だけ傾けて時計を見る。



「あ、ほら、日付が変わるよ」



秒単位で調整されてる電波時計を見る。
5…4…3…2…1……


「わー令和始まったー!」

「明けましておめでとう…ではないのかな。なんて言えばいいんだろう」


そんなことを話して笑っていた、そのとき。


「あ!」

「ん?」

「今、蹴った」



私の言葉に驚いた顔をして、
笑顔になった秀が、
嬉しそうにお腹に手を当ててきた。


私たちが生まれ育った時代が終わる。


そして、さあ、新しい時代の幕開けだ。



今はただ、この世、この時代に、生まれ落ちたことに感謝する。

そして、これからの新しい世界に胸を馳せる。




ありがとう平成。

こんにちは令和。


よろしく、これからの私たちの人生。






















平成から令和にもなる時代ですから
大石と結婚してようがいいでしょうよ(何故か突然のキレ)

『君への酔いは待っちゃくれない』からフレーズ借りてきてますww
あの作品途中から誕生日祝いになってるからねw
完全にバレンタインってこと忘却してるからねww

はーーー大石お誕生日おめでとうございました。
この良き日に祝えたことには嬉しく思っています。愛。


2019/04/30