* 黄色い陽の下で *












「辰徳」



呼ぶと、困惑したように周囲を見渡した。
誰もいないことを確認して駆け寄ってきた。


「何やってんだよ」

「いや、急に呼ぶから」

「そりゃ呼ぶだろ」

「でも…ほら、下の名前、まだ慣れなくて…」


目を合わさずにそう言う。
気にせず歩き出すと、横に着いてきた。


俺たちが付き合うことになって、
部活がない日は二人で帰るようになって、
お互いを名前で呼ぶことにして、まだ二週間。

どれもこれも、俺が一方的に押し切ったような部分はある。自覚はしてる。
だけどコイツは嫌がらずにそばに居てくれている。
だから、まだ本気ではないにしろ、希望はないわけじゃなくて、
一緒にいるうちにもっと俺のことを好きになってもらえれば…
なんて女々しいことを考えている俺だ。

授業終えてすぐに下校してるには遅いけど、
部活をやってるやつらが帰るには早いこの時間。
道は空いている。
……。

手を、掴んでみた。


「わっ」


きょろきょろとせわしなく周囲を見回しだすから、
「誰もいないことぐらい確認してるっつーの」
と伝えた。
俺の口調のせいか、照れがあるのか、少し肩が小さくなった気がした。

掴んだ手がぶらぶらと揺すられる。


「…なんかコドモみたいだな」

「は?じゃあ“恋人つなぎ”すっか?」

「えっ、それもちょっと…」


あ、


困惑するその言葉を最後まで聞き取るより先にふっと手を離した。
え? とその顔が淋しそうに見えた気がしたのは俺の都合の良い解釈か。


曲がり角から、スー…と現れた自転車が通過していった。

一瞬後ろを振り返ってまた手を取ると、
「桜井はすごいな」
と言われた。

だろ?耳はいいんだ、俺。
でも、聞き返す。


「なんつった?」

「だから、桜井は…」


ん? という顔を見せると、
気付いたのか、合っていた目線が逸らされた。

日が沈むまではまだ時間があるのに、
夕焼けに照らされるみたいに、
その顔がみるみる赤に染まる。


別に男同士で名前呼ぶくらい普通。
アキラだって深司だって、いつもそうしてる。

でも。



「……雅也」



この顔の赤さが、
コイツが俺のことをどれだけ意識しているかを示している、
そう考えたら…。


「(やっべ、ニヤける…)」

「もう、恥ずかしいな〜…なんでお前そんな普通なんだよ…」

「普通?」


ばーか。


「ちゃんとこっち見ろって」

「え?」


ほら。

お前ほどじゃないけど、俺だって赤くなくはないだろ?

少し傾き始めた太陽ならわかる程度には。


「俺だってハズいよ。言わせんなバカ」


逸らした目線の端、笑顔が咲くのが見えた。
























まさかの桜森〜!(爆笑)
この前夢の中で桜井君が森くんのこと下の名前で呼んでて
「公式が病気(白目)」ってなった記念w(病気なのは私だった)

粗野なのに実は優しい桜井君ほんとすこだし
同人界で必要以上に受々しく描写される森きゅんも大好きだ(笑)
峰っ子〜!!!


2019/04/17