* 君への恋は待っちゃくれない *












「お母さんお願い!明日は5時半に起こして!!!」


そう言って手を合わせる私に、
お母さんは笑顔を以て承諾の意を示してくれた。


「明日って…もしかしてバレンタイン?アナタもそんな年になったのね」

「そういえば去年も誰かにあげてたわよね。同じ人なの?」


なんてセリフを添えて。


私だ誰かのことを好きであるということはすっかり母に認知されている。
真実であるのだから今更否定のしようがない。

だけど難しい、なんて返すのか。

反抗期だったら、「ちげーよ」なんて突っぱねるのかな。
母ともっと近い関係だったら「そうだよ、だけどね…」なんて相談できたのかな。


「そんなとこ。じゃ、よろしくね」


結局、詳細は伏せたままお願いだけをして、自分の部屋に引っ込んだ。


言えないなぁ、お母さんには。
去年も張り切って手作りのお菓子を準備したけど、
タイミングがなくて渡せなかった。
人の目があって机や下駄箱の中に入れるのは無理で、
直接渡そうにも常に誰かと一緒に居るし、
結局、部活が終わるまで待ち構えてたけど隙がなかった。

そこで今年は。


大石くんよりも早く登校して机にチョコを入れる!!!


大石くんより早ければ他に誰かがいてもいいのかって?
いやいや。
大石くんより早いイコール誰よりも早いということなのである。



テニス部の朝練で早起きし慣れてる大石くんのこと、
今は部活は引退しているとはいえ、早起き癖はついているに違いない。
だからちょっと早めくらいじゃダメなのはわかってた。
しかしまさか事前の調査で、7時ジャストくらいじゃ厳しいことが発覚してしまうとは…。



「(明日6時台前半には登校する、これは必須だ)」



もう一度確認して、布団の中で目を閉じた。

でも、胸がドキドキして落ち着かない。
これは、早起きできるかに対してと、
明日、チョコを渡す、想いを伝えるんだ…と思ったら。


元々、自分はそんなに時間に遅れる方ではない。
だから、久しぶりだ。
こんなにも強く意識して「遅刻してはいけない!」と思うのは。

絶対に遅れることのない彼の前では、
遅れは絶対に許されない。



「(6時に家を出れば間に合うのかなー…)」

「(6時半には遅くとも教室にいたい。
 朝練やってた頃は6:45にはテニスコートで音してたもん。)」



把握しきれていない現状と、経験的に算出されるとんでもなく早い登校時間。

立ち向かうは、私の体力、精神力、君への愛。


さあ果たして私の努力は実り、君の机の中にチョコレートを入れることができるのか。



…とりあえず、おやすみ。


勝負の日は、明日。






















『君への酔いは待っちゃくれない』を素面の状態で書き直したバージョンww
これでちゃんと言いたかったことは言えてるはず…
旧作は何故か後半バースデー祝いになってるもんな?w
(そもそもそれ以前の問題説)

実際問題、大石って結構チョコ渡す隙ある方だと思うんですけどね。
委員会とか副部長とか、他のみんなと離れて動くタイミング多そう。
でも机に入れようと思えばそりゃ大変だよな、て話ですw


2019/03/14