* 一通の手紙 *












  好きな人が居ました。


「だぁーっちくしょう!!」



一枚の紙をびりびりに破く。

それはひらひらと舞い、地面に折り重なっていく。


「ああ、もう……」


視界がジワっと滲む。

床に散らばった白い破片がぼやける。


一通の、手紙を書いた。

好きな人に向けて。

想いを伝えるために。

返事は…期待していたものとは、違った。


「そりゃあさ、そんな上手くいくとは思ってなかったけど…」


だけど、現実に突きつけられると、こんなにも痛い。

心臓とか。目とか。全身が痛い。


「あんな返事のくせに、こんな手紙まで返してきちゃって…」


そんな手の込んだ芸当に、余計に苛立ってしまう。

手紙だけでは物足らず、私は封筒も引き裂こうと手を掛けた。

すると、ただの封筒とは思えない手応え。

引き裂かれる紙は、途中で止まった。


「……?」


見てみると、中にはもう一枚の小さな紙。

開けてみる。


 『なんちゃって。全部ウソ!』


読んだ後、暫くの間。

・・・・・・。


「あのヤロー!!」


思いっきり叫んだ。

力んで、結局その紙は破いてしまう。

あ、と呟いたけど、元に戻るはずもなく。


…しかし、騙されていたとは、アレだ?

ノーの返事だったはずの手紙。

嘘だったとすれば、返事は勿論…。


「…ありゃ?」


涙が通り越していった視界は、妙に爽快だ。

全てがはっきりと見える。


「なんだよ。そうなら初めから言ってくれればいいのに」


言いながら、私は自然と笑顔だった。

好きだ、とか。

その手の言葉はストレートに言えなさそうな

貴方を思い浮かべて微笑した。


床に散りばめられた沢山の破片。

手で掻き集めて、紙吹雪みたいにパッと飛ばした。



  好きな人が、居ました。

  大切な人が、出来ました。























恋人と好きな人って、少し違いますよね。


2003/05/19