* 六月の雨 *
ホームルームが終わったとき、
外にはパラパラと雨が降り注いでいた。
鞄の中に折り畳み傘が入っていたのを思い出し、
取り出しながら下駄箱へ向かう。
コツコツと爪先で地面を叩きながら、思う。
これから、もう梅雨の時期かなって。
湿気多いし、雨も沢山降るし、憂鬱だな…。
傘を広げながら学校を出る。
出てみると、雨はそこまでも強くはなく。
だからといって、傘なしで居るには強すぎて。
そんなことを傘を頭上から離して確かめていた。
その時、丁度私の横をすり抜けていった貴方。
傘は持っていないみたいだった。
天気予報では一日晴れだったし、仕方ないかな。
濡れていく髪や服を見る。
駆け寄って「一緒に入ってく?」なんていうのも考えてみた。
だけど、そんな勇気もないし。
自分一人が、傘を差して歩く。
すぐ後ろを歩いているのが何故か恥ずかしくて、
少し深めに被って顔を見られないようにしてみたり。
それなのに、ちらちらと後ろ姿を確認したりする。
少し照れくさいのだけれど、
後ろに居る私の存在に気付いてほしいな、なんて。
思いながら、ひたひたと雨の中歩いた。
曲がり角で別れるまで、私は両手で傘を握っていた。
傘越しに見つめる貴方の背中。
2003/05/14