* 失敗 *
「どーいうことよ…」
「え…えへへ?」
休み時間。
何故に私は、親友に壁際に追い詰められているのか。
「絶対バラさないでって言ったのに!」
「私バラしてないよ!!」
「でもあんた以外に教えてない。私は誰にも言ってない!」
「えぇー!?」
教室の隅で騒ぐ私たち。
クラスのみんなが我関せずという感じで
それぞれの時間を過ごしている。
私たちが口論しているのは、
好きな人をバラしたとか、バラしてないとか。
「絶っ対バラしてない!」
「でも知ってたって人はあんたから聞いたってよ」
「な、何故…」
記憶を探ってみる。
バラした憶えは…ない。
私はそんな血も涙もないような(?)ことはしない!
もし、他の人に喋ってしまうと言ったら…。
『なぁ、アイツの好きな奴って桃城なんだろ?』
…ん?
なんか、心当たりが浮かんできた…。
『なんでそう思うのよ』
『本人に聞いてきた。本当かどうか親友のお前に確かめてもらおうと思って』
…そうだ!
それだぁぁぁ!!
「…思い出した」
「やっぱりアンタだったのね…」
「待って、ちょっと言い訳を聞いておくんなまし!」
そうだ…それから、こんな展開になって…。
『マジで?態度で怪しいと思ったんだよなー』
『…はぁ?それってつまり……』
『情報サンキュ♪』
そうして…林大介は走っていったのだ。
そうだったぁー!!!
私ははっきりと理解してなかったけど、
やっぱりあれって騙されてたんだ!
私がバラしてたんだー!!!
「ごめんなさい!マジですみません!」
「まあ、今は別に好きな人でもないからいいんだけど…」
といいつつ、なんか顔が引き攣ってます。
というか、通り越してブルーな表情になってきました。
あいたた、やっちゃったよ。
…ゴメンネ。
「ごめんね…ほんと」
「はは…これが今の好きな人だったら大変だったけどね」
「ゴメン〜…」
ホント、私ってどうしてこうなんだろ。
廊下を歩いていると、前方に桃城と林のツーショット。
気になって走り寄ってみた。
林が桃城の耳に顔を寄せる。
…なんだか、嫌な予感が…。
「なあ、知ってるか?実は…」
耳元で喋ってたから、はっきりと聞き取れなかったけど。
でも、絶対バラしてます、この人。
「性格悪…」
「げ、いつからお前そこに」
「随分前から」
全く、この林め、バラしやがって…。
林だったら林らしく鳥に巣でも作られてろ!(?)
思ってたら、桃城が頭を掻きながら言った。
「あー、でもそれ、オレなんとなく気付いてたから」
「そうなん?面白くねー」
……やっぱり、態度でバレてるんじゃないですか?
ま、それに決定打を与えちゃったのは私だし…とほほ。
…こんな会話を聞いてて複雑な心境なのが、
なんと今の私の好きな人は、
桃城なんだよね……。
親友の前好きだった人が、私の今の好きな人。
…凄く複雑だ。
「で、結局アイツんことどう思ってんの、桃城クン」
「なんだよ林その話し方…。どうも何も、いいクラスメイトだぜ」
「そうかよ。その言い方、本人聞いたらどう思うだろねー」
「だって、過去の話だろ?なっ?」
「そ、そう言ってたけど…」
話を突然ふられて戸惑ってみたり。
でも、過去だからって、結構辛いよなぁ…。
…ほんと、ゴメンね。
そして、私はこれで余計貴方に
好きな人を教えられなくなった気がします。
親友に隠し事って、嫌だけど。
この想いだけは、大切にしたい。
「それじゃあ桃、お前は誰が好きなん?」
「オレが?今ぁ?」
「そりゃあ過去の聞いたってもう遅いだろ」
「……」
桃城は顎に手を当てて考えてる。
ここって、結構注目ポイントかも…。
うぁ、でも間接的にフラれかねないぞぅ?
「…お前」
「は、はいぃ!!」
「これ以上は聞くな、散れ」
「よ、喜んで!」
そして、私は走って逃亡した。
だって、聞きたくないもん、そんなの…。
失敗だったな、全部。
親友の好きな人をバラしてしまったこと。
そもそもそれを聞いてしまったこと。
(私騙されやすいから秘密は知らないほうがいいかも…)
それから、今の場面に居合わせてしまったこと。
自己嫌悪の溝に、はまりました。
そして次の日。
落ち込む私の前に現れたのは、
妙にニヤニヤした林だった。
ごめんね。これからは気をつけるよ。でもヒミツ。
2003/05/13