別に誕生日を祝う気なんて全くなかったのだけれど。

だけど、耳に入ってしまったら。

…やっぱり祝わないわけにはいかねぇじゃん?











  * 贈り物 *













「ねー桃、見て見てっ!」

それは部活が始まる前。
着替えてるオレに、エージ先輩が何かを見せてきた。

「なんスか、それ。猫のぬいぐるみ?」
「そ!海堂にプレゼントするんだ」

海堂にプレゼント?
…それを?

「わははっ!海堂にぬいぐるみ?似合わねぇっスよ!」
「えー、絶対喜んでくれると思うけどなぁ」

そういって、エージ先輩はぬいぐるみと睨めっこしていた。
まるで猫がいがみ合っているみたいで、
なんだか微笑してしまった。

「でも…どうしてプレゼントなんか?」
「そうそう、今日海堂の誕生日なんだよね」

仲良い人の誕生日は全員把握してるんだぞ、
とエージ先輩は自慢げに言った。

そっか、誕生日。

「じゃ、オレは先行くね」
「はい」

プレゼントをロッカーに戻すと、
エージ先輩はドタバタと部室を出て行った。

そうか、誕生日。

何故か、オレは心の中で復唱してしまった。
しかし…そうか、そうだったのか。


ま、アイツの誕生日なんか、オレには関係ないし。








部活では、レギュラー同士のラリー。
不二先輩に見事やられたオレは、
何気なく隣のコートを見た。
そこでは、大石先輩と海堂が試合をしていた。


「……フン」

『シャオッ!』

海堂が軽く放ったショットは、
急なカーブを描いて
鮮やかにコート上に決まった。

「凄いな、今日は一段とスネイクのキレがいいじゃないか」
「別に…いつも通りっスよ」

そう言うと、フシューと深い息を吐いていた。
海堂の集中してるときの癖だ。

…やるじゃん、アイツ。

海堂の後ろ姿を横目で見てから、
オレは顔を洗うために水道に向かった。



頭から思い切り水を被る。
顔から水が垂れていく。
キュッと蛇口を捻ると、顔を上げた。

するとそこに、海堂が居た。

顔を洗い終えると、タオルで拭く。
一瞬、目が合ってしまった。
それはすぐに逸らされて、海堂は歩いていこうとした。
オレはそれを呼び止めた。

「あ、海堂」
「ぁん?」
「どうだった、試合」

相変わらずの不機嫌そうな表情。
下を向くと、海堂は言った。

「…勝った」
「そうか。すげぇじゃん」

いくらダブルス専門の相手とはいえ…
大石先輩に勝ったのか、アイツ。
…やるじゃん。

考えていると、海堂はまた歩き出した。
その時、オレの頭の中にはエージ先輩のセリフが蘇って。
思わず再び呼び止めた。

「おい海堂、お前今日誕生日なんだってな」

言うと、海堂は随分と驚いた表情をして。
でも、また冷静さを取り戻すと低く放った。

「…だからどうした」
「いや、お祝いの言葉の一つでも掛けてやろうと思ってね。…おめっとさん」
「……貴様には関係ない」
「可愛くねぇ〜」

本当に、可愛くないと思った。
折角祝ってやってんだから、喜んでくれたっていいのによ?
…ま、実際にアイツが素直に喜んだら、
結構怖いものもあるかもしれないけどよ。


でもな、海堂。
特にプレゼントなんて用意したりしないけどよ、
それはオレの、心からもお祝いの言葉だってこと。

…憶えておけよ。






















桃海っぽくないですか?(いや、だって桃海だし)
素敵に中学生だと思う。
そして菊がぬいぐるみプレゼントするのはセンスないと思う。(笑)

『プレゼント』の前に起こった事件ですね。
そっちの話では回想になってますが。
折角だから書いてみたくなったわけです。

ところで大石って切ないキャラ。
分かってるよ。原作の中でシングルスで勝ったシーンがないのは
大石だけだってことぐらい!(ダッ/勝ってる筈なのになんで見せてくれないの!?)

とりあえず桃海でお祝いしてみたさ。
ひょんなわけで、薫ちゃんハピバv


2003/05/11