* 不動 *
明るくて、ひょうきんなクラスの人気者。
抱き付き癖のあるその人は、
何故か今日も、私に構ってくる。
「おっはよー!今日も可愛いね」
「ちょっと菊丸、冗談はいいから!!」
「冗談じゃないよーん」
朝の挨拶も中途半端に、
その人は突然私の背中に飛び付いてきた。
クラスの視線が痛いけれど、
日常茶飯事というか、なんというか、
既に反応すら示さなくなった者も居る。
「ホントちっちゃくて可愛いー」
「馬鹿にしてるの!?ちょっと、は、な、し、てって!!」
無理矢理べりんと引き離す。
すると、ちぇっと残念そうな顔をした。
どうして、そんなにも私に構うんだろ。
席が隣になった。
その頃からだ、きっと。
また席替えしたら、こんな関係はなくなるのでしょうか。
時が経てば、こんな関係はなくなってしまのでしょうか。
「…ねぇ、菊丸」
「ん?」
「実は最近、変態に纏わり付かれてて困ってるんだ」
「マジ!?今流行りのストーカーってやつ!?」
ちょっとしたギャグのつもりで始めたこの話。
向こうは、妙なほどに意気込んでいる。
面白いからもう少し続けようかな、なんて。
「大丈夫、どんなことがあっても君のことは守るから!」
「あー、有り難う。…で、その変態ってのはね」
「うん」
また抱き付いてきた菊丸をそのままに、
私は話を再開した。
「毎日必ずやってきてぇ」
「ふむふむ」
「宣言もなしに、行き成り抱き付いてきて」
「うわ、ヤバっ!!」
「しかも全然離れてくれないし」
「……ちょっと待って」
「そうですねぇ、それはまさに今現在のこの状況の様な…」
「ストーップ!!」
ばばっと体を離すと、
両手を前に出して止まれのサインを出した菊丸。
クラス中が注目して一瞬沈黙した後、
眉間に皺を寄せて訊いてきた。
「まさかその変態って…オレ?」
「お、正解正解ご名答〜」
「にゃー!酷すぎるっ!」
私はぺろりと舌を出した。
そして、騒ぎまわる貴方を見て笑った。
冗談だよって、ちゃんと付け加えておいた。
こんな関係が、大好きだから。
少し困ることもあるけど、大好きだから。
だから、席が替わったって、何年経ったってなんだって、
こんな関係で、居続けたいと思うんだ。
クラスのみんなが大好きです。
2003/05/09