* コンプレックス *
Q.優越感の対義語を漢字三文字で答えなさい。
予想外の問題を出されて、
私はテスト用紙を睨んで固まった。
「( な ん じ ゃ こ り ゃ 〜 ! ! )」
こんなもの、授業でやった覚えが全く無い。
つまり…実力でやれって訳ね。
人間としての能力を試されてる訳ね。
よっしゃ……。
そして悩むこと15分。
提出された答案用紙に書かれた単語は。
絶 望 感 。
ふふ、我ながら皮肉が効いてるぜ、
なんて思ってみた。
「うぁ〜テスト分かんなかったぁ!」
「比較的簡単じゃなかったか?」
「言ってくれるわね、裕太君」
私は隣の席でポケットに手を入れて座ってるそいつを見た。
不二裕太。
一年で転入してきたときからずっと同じクラスだ。
「なんだよその裕太君って…」
「そんなのはいいから。で、テストが簡単だったって!?」
「だって、どこにそんな難しい問題があったよ?」
「ほら、あの…優越感、だっけ?の対義語ってやつ」
言うと、不二は私から視線を逸らした。
溜め息を吐くと、低く言い放った。
「簡単じゃねぇか、そんなの」
「じゃあ何よ、答えは?」
「…劣等感、だろ?」
「劣等感…」
劣等感、ああそうか劣等感。
優越…劣等…そうか。そうだったのか!
「さすがだね、裕太少年!」
「分かるっつぅの、それぐらい」
不二は視線を床の方へ泳がした。
かと思うともう一度深い溜め息を吐いて、
天井を見上げてみた。
何かあるのかな、と少し気になった。
劣等感なんて、誰でも抱えてるものなのだろうけど。
「…ところでなんだよその裕太少年って」
「いや?えへへv」
「…で、そう言うお前はなんて答え書いたんだ?」
睨みを笑顔で誤魔化した。
すると、質問がやってきた。
自分が答案用紙に書いた答えを思い出す。
「ぜ、ぜつぼうかん?」
「…絶望感?」
「……うん」
一瞬の、沈黙。
そして。
「ぷっ、はははっ!なんだよお前それ!」
「なっ!笑うことはないでしょうが!!」
笑い、そして笑われて。
平凡だけど、こんなことが楽しくて。
劣等感なんて誰にもあるのだけれど、
笑っている間は何も感じずに済むのかな、と思った。
だから、貴方と過ごすときは、
いつでも笑い合えるような。
そんな関係になりたいと願った。
人と比べて劣るのが劣等、自分の内だけで希望が絶たれるのが絶望。
2003/05/08