* 玩具箱の中には *
『キーンコーンカーンコーン…』
「……ふわ?」
「あ、起きた起きた」
隣の席で寝ぼけた顔をしているジロー君。
それを見て、くすりと笑ってしまった。
「今…何時?」
「丁度2時間目が終わったとこ。先生睨んでたよ〜」
「…ま、いいや。別に」
まだ眠そうな半目の顔。
やっぱり面白いな、なんて思う。
稀に見れる、生き生きとした顔はもっと好きなんだけど。
「凄く気持ち良さそうだったね。夢でも見てたの?」
「…うー、キノコとテニスする夢…」
「なにそれー」
話が面白くって、笑ってしまう。
そう、それはまるで玩具箱のよう。
いつもは閉じているけれど、
空けた瞬間そこは夢の世界。
楽しさや驚きを、沢山運んできてくれる。
歌って踊れるぬいぐるみだったり。
立てて遊べる積み木だったり。
開けて驚くビックリ箱だったり。
玩具箱の中には、何が入っているんだろう。
「ところでさ、最近似たような夢を良く見るんだ」
「へー、どんな?」
目を大きく開けて、にこりと笑うとジロー君は言った。
「君が出る夢」
「――」
玩具箱は、いつでも私を楽しませて、
そして驚かせてくれる。
こどもの日、誕生日、玩具箱。
2003/05/05