* 階段を上って *
昼休みはもうすぐ終わり。
荷物を持つと、自分のロッカーへ向かう。
私のロッカーは、東階段を上ってすぐ。
職員室前の長い廊下を越えて、そこの階段を越えてすぐ。
いつもはそっちを通るのに。
何故か分からないけど、西階段を上っていた。
何故か分からないけど、そこを上らなきゃいけない気がして。
先に二階へ行ってから、廊下を通ることにした。
荷物を抱えて、階段を駆け上る。
踊り場で方向転換をして、また上る。
そして、上り終えた先に――。
「―――」
私は、思わず歩く速度を緩めてしまった。
そこに居たのは、海堂君だった。
目が合うと、一瞬だけ足が止まってしまった。
だけど海堂君は、何も言わずに通り過ぎていった。
特に会話があったわけでもない。
何か特別なことがあったわけでもない。
それなのに、嬉しくて仕方がない。
偶然通り道を変えた、階段の上。
自分の第六感を褒め称えたくなった、そんな瞬間。
たったこれだけで幸せになれる、そんな自分に微笑した。
阿呆と分かりつつも運命感じてみた。
2003/05/02