* 寂しいね。 *












ふら付いた足取りで、自分の席に着いた。

どさりと座り込み机に突っ伏する。

袖に、涙がしみ込んで染みを作る。


「どうだった?」

「……」

「まあ、その様子じゃ訊かなくても予想は付くけど」


掛けられた言葉に返事を出来ない私。

大石は、隣の席の椅子を引くとそこに座った。


「あんまり気を落とすなよ」

「………」


優しく掛けられる言葉も、今では辛いだけ。

辛いばかりの、優しい言葉。


私は今日、菊丸君に告白した。

たった今終えてきたところだ。

結果は、哀しいことにノーだった。


どうしようもない。

どうしようもないのだけれど。

落ち込まずには居られない。

どうしようもないから、そうなのかな。



鼻を啜る私の隣。

大石は、無言でそこに座っていた。

話しやすい人で、いつの間にか仲良くなってた。

相談もしやすい人で、恋の悩みも聞いてもらった。


菊丸君が好きだってことを。


大石は一瞬戸惑った表情になりながらも、

すぐに笑顔になって、応援するよ、と言ってくれた。

言葉通り、色々と助けてくれた。

相談に乗ってもらったり、今日もシチュエーション作りをしてもらったし。


だけど、上手くいかなかった。

なんか申し訳ないなって気持ちもあるけれど、

それ以上に悲しくて、何も言えない。



「…沈んでる?」

「相当ね」


漸く口から出た言葉は、相当涙声だった。

きっと今、目も鼻も真っ赤なんだろうなぁ。


「それは良かった」

「!?」


飄々とそんなセリフを言う大石。

信用してたのに…一気に幻滅させられた気分。


「な、なによ…それ…!」

「あ、ごめん!そんなつもりじゃなくて…」


大石は慌てて否定すると、私の正面に回り込んで言ってきた。


「…落ち込んでいられるうちは、まだいいんだよ」

「――」

「空元気を作っているときの方が…本当は落ち込んでるんだ」


そのときの大石の表情が、凄く切なくて。

止まりかけてた涙がまた滲み出てきた。


「完全に滅入ってると、人に自分の弱さを見せることにさえも臆病になってしまうのかな」


大石は窓の外を見ていた。

私も、釣られて外に目をやる。

少しだけ黄色くなりかけている太陽がそこにあった。


「無理はしなくていいよ。辛いときは思いっきり泣けばいい」

「おお、いし……」

「本当は、それが一番なんだろうな…」


そう言った大石の表情は、やっぱり切なげで。

哀しさが滲み出ている、笑顔だった。

それを見ていて、私の涙はまたぶり返してきた。


大声を張り上げて泣いた。

涙はどんどん出てくる。

咽び泣く声も止まらない。

とにかく、ひたすらに泣き続けた。


「大石…、部活…は?」

「…今日だけは、ここに一緒に居るから」


場違いにも部活のことを心配する私を、

大石は腕を回してくれた。

胸に顔を埋めて、私は泣いた。


落ち着く頃には、夕日が半分地平線に沈んでいた。

目の周りを拭く私に、大石は笑顔で言った。

「思い切り泣いたら、少しすっきりしただろう?」って。

笑顔だった、笑顔だったのだけれど。


 やっぱりどこか寂しげだったのは、気のせいなのかな。























笑っているほうが、寧ろ傷付いてるし、辛いんだろうね。


2003/04/30