* 青空雨空 *
「あれ、雨?」
「ほんとだ。晴れてるのにな」
青空から降り注いできた、冷たい雨。
見てみると、東の空に大きな雨雲が。
「珍しいね、天気雨」
「狐の嫁入りってやつか?」
「おぉ、シュウってば博識!」
「普通だろ、このくらいは…」
笑いながら、私達は歩いた。
青い空の下、降り注ぐ雨の中。
微かに濡れながらも、それもまた楽しくて。
「なんか、こんなんじゃ傘差す気にもなれないね」
「そうだな」
一回足を止めて、掌を天に向け雨の降り具合を調べてみる。
シュウは、目の上に手をかざして空を見上げていた。
私も釣られて見上げる。
「…私ね、昔雨って空の涙なんだと思ってた」
「へぇ」
「結構ロマンチストでしょ?」
そう言ったら、シュウは笑うだけだったけど。
でも、昔は本気でそう考えてたんだ。
いや、今でもたまに考える。
空っていうのは、人の心を映し出してるんじゃないかって。
晴れのときは、元気なとき。
曇りのときは、気が塞いでるとき。
雨のときは、泣きたいとき。
雷のときは、怒ってるとき。
じゃあ、今日の空は――…?
「笑ってるけど、ホントは泣きたいのかなぁ…」
「え?」
「いや、こっちの話」
気にしないで、と付け加えて私はシュウの手を取った。
そのまま歩き出す私達。
青い空は、私達の上に広がって。
微かな雨は、私達を濡らして。
喋ってる間は、笑顔が絶えなかったけれど。
この乾いた笑顔を、空元気っていうのかな。
複雑な気持ちにしてくれた、今日の空模様。
ドイツは天気雨多いです。
(大稲設定っス)
2003/04/26