* ノストラダムス *












「…ノストラダムスの予言って、結局外れたね」

「何を言い出すんだ、突然」


私の突飛な発言に、シュウは笑っていた。

唐突な思いつきは私の癖だって、分かってるからね。


「いや、なんか、外れたなぁって…」

「…当たってほしかったのか?」

「まっさか!」


ぐるんとシュウのほうに向き直った。

いつもと同じ、笑顔。


「当たってもらっちゃあ困るけど…でもなんか残念」

「…言ってること矛盾してるの、気付いてる?」

「うん」


矛盾。

確かに矛盾してる、分かってる。

分かってるんだけど。


「まあ、地球が破滅するなんて元々信じてないけどさー」

「…せめて小さい隕石が一つぐらい降ってきたら大騒ぎできたのに、とか」

「む?」

「震度4程度の地震でも起こってれば大ニュースだったのに、とか」


突然態度が変わったシュウの顔をまじまじと見詰めた。

やっぱり、いつも通りの笑顔だった。


「そんなこと、考えてたんだろ」

「…ご名答」


どうして、分かっちゃうかなー。

何でもお見通しなんだよね、シュウは。


「一日中そわそわしてたけど、結局なーんにも」

「でも、大爆発するよりはいいだろ?」

「その通りなんだけどぉ」


だけど、なんか悔しい。

外れるような予言、するなっつーの!

まあ、外れるからこそ予言なんだろうけど。

その予言の解読事態が嘘だったって噂も聞いたことあるけど。

だけど…でも……。


「やっぱり、外れてよかったかも」

「ん、どうして?」

「だって、当たってたらさ…」



 シュウに、出逢うことも出来なかったかもしれない――。



そう考えると、ああ、良かったのかもねって。

今の私は、幸せだからさ。


「…じゃあさ、今突然地球が大爆発するっていったら、どうする?」

「んー?」


シュウに突然訊かれて、私は考えた。

頭の中を色々な考えが巡った結果、一つの結論に辿り着いた。


「……シュウと一緒に居る」

「…そうか」


胸の中に、顔を埋めて。

もしも本当にそうなるとしたら。

溶け込んで、一つになって――…。

それで、バラバラになりたいと思った。



 一回でも、一緒になれて良かったと、思いたい。



笑顔を向けると、向こうからも返された。

シュウの特技、微笑み返し。


…いつも通りの笑顔だ、と思った。



 何も変わらず、地球は廻る。

 何も知らずに、地球は廻る。


 昨日も今日も、明日も未来も。



  ノストラダムスに、今の地球を予言することは出来たのだろうか。






















元々、予言なんてしてなかったんでしょうね。
(さり気ない大稲設定)


2003/04/23