* 花嫁物語 〜永劫の探究〜 *












「それじゃ、行ってくる」

「行ってらっしゃぁー…あ、その前にいつもの!」

「はいはい」

「ハイ、行ってらっしゃいのチュー!!」

「ん」

「…んっ、それじゃ、頑張ってきてね!」

「ああ」


…俺の一日は、こんな感じで始まる。

少しバタバタした感じで、会社へ出掛ける。

“行ってらっしゃいのキス”を英二が忘れたことは一度もないが。


英二は俺より早く起きて朝食を作って待ってる、と張り切るのだが、
結局先に起きるのは俺で、英二は寝癖もそのままで
焦って朝食の準備を始める。

そして有難いことに、弁当も毎朝作ってくれる。

コンビニで買っていくからいいよ、朝は忙しいだろう、と言っても、
愛の篭った手作り弁当が良い!!と言って譲らない。

まあ、俺もそれはとても嬉しいのだけれど。

たまに焦げてたり、形が崩れてたりするお弁当が、
何故かとても美味しく感じられたりするのだ。

英二曰く、それは愛故らしい。

……愛か。

まあ、確かにな…。

なんて、惚気てしまう自分が恥ずかしい。

これでも、結婚してもうすぐ二年…。

もう新婚という感じではないと思うのだが。

でも、気分としては蜜月の頃からあまり変わっていない。

そう、変わっていない……。



「おはようございます」

「ああ、おはよう」


今日も、いつも通りに出勤。

俺は、会社の中で順調に地位を上げていった。

この生真面目な性格を買われたのだろうか。

仕事もミスが少ないと褒められたし…。

とにかく、仕事の出来具合に比例して給料も増えるわけで。

裕福とはいえないが、それなりにいい暮らしはしていた。

この間、マンションから一軒家に引っ越したし。

順風満帆というべきか……。


「大石くん」

「はい」

「この前の仕事、良く纏められていたね。
 これからも期待しているから、頑張ってくれよ」

「はい!有難う御座います」


…順調、なんだよなぁ……。





  **





気付けば、昼休みの時間。

今朝のドタバタした中英二が作ってくれた弁当を、開けた。


「………」


俺は目が点になった。

中身は、大きな大きなオムライス。

端からご飯が飛び出ているのもまたなんとも。

で、驚いたのは…真ん中にケチャップで大きなハートが書かれていたこと。


「今日のお弁当は平らにして持ってけってこのことだったのか…///」


今朝のことを思い起こしていると、
後ろから声が掛かった。

つい最近入ってきた、新入社員だ。


「あ、愛妻弁当ですか?妬けますね〜」

「いや、そんな…っ」

「僕は一応彼女が居るんですけど…結婚なんて雰囲気じゃないです。
 どうすればその気にさせられるんスかね〜」

「………」


その気、ね。


俺は手を合わせながら、そんなことを考えた。

そして、お弁当を食べ始めた。

形は悪かったけど、味はとても良かった。

……愛、なのだろうか…。




  −−−




「あ〜あ。秀ちゃん今頃何してるんだろ」


お昼ご飯の片づけをしながら、自分で呟いてみた。


秀ちゃん、もうおべんと食べたかな?

驚いてくれたかな?


「…えへへっ」


やっぱり愛だよね、愛!

あたし、秀ちゃんのこと大好きだもん!

秀ちゃんの為ならどんなことだってしてあげたい!

どんな、ことでも……。


「…さーて!洗濯物でも干すか!」


鼻歌交じりに、あたしは洗濯機へ向かった。



  −−−



「ご馳走様でした」


お弁当を食べ終えて、俺は手を合わせた。

そして、今頃英二はなにをしているのだろうか、などと考える。

……。

ところで、こんな俺だが、不満は…当然ある。

住んでいる家が嫌だとか、上司が嫌だとか、
そういう話ではない。

なにを隠そう、俺は………。


英二とセックスをしたことが、無い。


……。

結婚二年目にして、だ。

引っ越してきた家のダブルベッドに二人一緒に寝ること三ヶ月にして、だ。

未だ、そのような行為に至った事が、無いんだ…。


その気のない英二を突然襲ってしまうのは気が引ける。

という訳で、こうして今は必死に気持ちを抑えている訳だが…。

しかし、寝ているときにちらりと横を見ると、英二の綺麗な横顔。

そのうち欲望が自制心を上回ってしまうのではないかと、不安である。


……英二は、どう思っているのだろうか…?



  −−−



「……」


洗濯物を干しながら、あたしは色々考えていた。


今の生活は、確かに幸せ。

毎日秀ちゃんと一緒に居られて…。

でも、何か物足りなさを感じてきてる。

不満じゃないんだけど、なんていうのか…。

欲しい、んだよね……。


秀ちゃんはどう思ってるか知らないけど……。



  **



『ピンポーン』

「あ、はいは〜い!」


チャイムの音で、私はドアに駆け寄った。


「お帰り〜!」

「ああ、ただいま」


ここで、またお帰りのチューvv

幸せ、幸せ……。


「……」

「どうしたの?秀ちゃん」

「あ、いや…なんでもないよ」

「あそ」


秀ちゃんがなんだか微妙な表情になった気がしたけど、
すぐにいつもの表情に戻ったから、気にしないことにした。




夕食をいつも通り向かい合って食べる。

いつも通りの会話。


「あ、そうだ!今日のお弁当、どうだった?」

「ああ、美味しかったよ」

「それだけ?」

「ビックリした…」

「それだけ?」

「……嬉しかったよ」

「合格〜☆」


何度も問い詰めると、やっと言ってくれた!

秀ちゃんのその表情が見たかったんだよね〜♪

ちょっと恥ずかしそうにして、顔を伏せる癖。

全部大好き。

全部、全部……。


もっと、もっと、欲しい――。






  −−−






夕食を食べ終えて、俺はのんびりとソファに座って新聞を読んでいた。

台所からは英二が洗い物をしている音が聞こえてくる。

鼻歌も交えて。

英二の鼻歌を口ずさむってことは、機嫌が良いってことだ。

今日は機嫌が良いのかな、と思いながら新聞を読み続けた。


でも、今日の歌は何か雰囲気が違って。

いつものリズミカルな明るい歌と違って、
暗い…って訳でもないけど、なんとなくしんみりとしていて、
かといってゆっくりなわけでもなく…。

問題は、歌詞だ。

俺は新聞を読むのを止め、耳を澄ませてみた。


 “今日という日に私は 全てをあなたに捧げます
  走っていくから受け止めて 避けずに抱き締めて

  大好きなあなただから もう何も怖くない
  お願い 私を強く抱いて oh my darlin'...♪”



「っ…!」


よく聞いてみると…な、なんだか過激な歌詞だな;

…そうでもないか?

俺の思考が可笑しい方へ持っていっているのか…?


俺は新聞へ顔を戻した。

でも読んでいる内容は頭に全然入らなくて。

ただただ、英二の歌声がぐるぐる回っていた。




  **




夕食の間も、先程の歌詞が頭から抜けなくて。

俺はなかなか英二と視線が合わせられなかった。

無言での、夕食。

英二が不審に思ったのか、訊いてきた。


「秀ちゃん、どうかしたの?静かだけど」

「え?あ、いや…別に」

「ならいいんだけど」


そういいつつも、俺は引き攣った作り笑いしかすることが出来なかった。

英二は、たまにこっちの様子をチラチラと伺いながら
無言でカレーを食べていた。


これほど会話の無い夕食は、初めてだったかもしれない。





  −−−





「ふぅ、いいお湯だった」


お風呂から出て、思わず独り言。

中で色々考えてたら、ちょっとのぼせ気味だよ。

その所為かな、この衝動。

抑えられない、熱い気持ち。

ただの、ほとぼりなの…?

いや、違う。

これは、もう覚悟を決めていたこと。


……秀ちゃん。




  −−−





「秀ちゃん、お待たせ〜」

「あ、出たか?」

「うん」

「それじゃ、寝るか」

「ぅ……うん」

「?」


なんだ?

今の英二の微妙な反応は…。

まあいい。

ところで、少し長風呂だった所為だろうか。

英二の肌が元々綺麗なピンク色をしているのが、
妙なほど艶めかしい紅色に見える。

少し上気していて、色っぽい。

って、何を考えているんだ俺は!?

今日は、ちょっと可笑しいな。

早く寝よう、そうしよう…。

と、思ったときほど…

「ねぇ、秀ちゃん…」

英二の話があるんだよな、そうだよな…。


「どうした?」


俺はまた少々引き攣った笑顔を作って英二の方を向いた。

英二は、困った表情というか、なんというか…。

なにやらモジモジとしている。


「あの、あのさ…」

「どうした、言いたいことははっきり言ったほうがいいぞ」

「うん…えっとね」


なにやら長くなりそうなので、
俺は布団から出て体を起き上がらせた。

すると、英二の言う言葉。


「あたし達さ、もう結婚二年目に入るけど」

「あ、うん」


不意に、心臓がドキンという。

これは何だろう。

英二の言葉に、もしかして期待しているのか?

余分な緊張が、体を包む。


「もう二年目なのにさ…」

「なのに、どうした?」

「その、やったこと、無いよね……」


英二は赤い顔を伏せて、上目遣いでこっちを見てくる。

俺は、進んでいく展開をただ軽く促すことしか出来なかった。

だって、ここまできたら…そうだろう?

しかし、しらばっくれるほどの勇気しかなく。


「やるって…なにを?」

「…分かってるんでしょ」


英二は、俺に抱きついてきた。

脈拍が更に上がる。

脳まで直接にドクドクと響いて、思考が飛びそうになる。


「ねぇ秀ちゃん…」


英二の言葉は、

「いつになったら、私を貰ってくれるの……?」

少し、涙声だったように感じられた――。


「英、二…」

「ずっと待ってた…待ってたんだよ」


俺の胸に顔を埋めて、英二は泣いていた。

その時、俺は漸く英二に無理をさせていたことに気付いた。

何もわかっていなかったんだ、俺は。


「英二…!」


俺は、英二の顔を上げさせると、強く、
自分の唇をその唇に宛がった。

それはなんだか熱くて、溶けそうになった。

腕の中で、英二は目に涙を溜めたまま笑顔で言う。


「あたし…本当はずっと待ってた。
 秀ちゃんのこと…一緒になれるのを…」

「ごめんな、俺ばっか我慢してると思って、
 気付いてやれなかった…」

「ううん、あたしこそゴメン…」


そこで、目が合った。

いざとなると、何だか気恥ずかしくて。

顔が紅潮してしまう。


自分の顔が赤い気もしたけど、英二に訊いた。


「それじゃあ、本当に良いの…かな」

「うん。秀ちゃんの好きな通りに…して」


言われて、俺は一瞬躊躇ったけど、
英二の服のボタンに手を掛けた。

すると、英二はとてつもなく恥ずかしそうな顔をした。


「あ、英二、ゴメン!い、嫌かな、脱がされるのなんて…」

「そんなこと、無いよ」


英二はどさりとベッドに仰向けに倒れ込んだ。


「秀ちゃんにだったら…何されてもいいカラ…」


その英二が、なんとも色っぽくて。

俺はもう箍が外れた感じがした。

ボタンを一気に全て外すと、前を開いた。

そして、背中に手を回すと、下着も、外した。


「英二…綺麗だよ」

「秀ちゃん……んっ」


涙目の英二に、俺は深く口を付けた。

舌と舌も絡まりあって、甘い、溶けるようなキス。

口と口を離した瞬間に繋がった銀糸に、何だか身震いがした。




  −−−




深くて蕩けるようなキスをされて。

頭の中は真っ白。

ぽーっと、秀ちゃんの顔だけを見た。


「ねぇ、秀ちゃん」

「ん?」

「……あたし、何すればいいのか分からないんだけど…」

「大丈夫、ただ、俺にされるがままになっててくれればいいから」

「で、でも……ひゃっ!」


や、やだ……。

なんか、変な声が…出る…っ!


秀ちゃんが、私の胸を鷲掴みしてきたんだ。

更にその間にも、首筋にキスをされる。


抑えられない、声が出るの。


「あ…あ……」

「どう?英二、気持ちイイ?」

「ふぁ、秀…ちゃ……」

「英二……カワイイ」

「ヤダ、あっ、やぁ…っ」


何もかもが初めてで、新鮮で。

押し寄せてくる感情の波に、狂いそう。

頭の中は快感という情報で一杯になって、
ほかのことは一切考えられない。


秀ちゃんはあたしの肌に何度も吸い付いてくる。

それだけ、それだけなのに。

変な声が出ちゃうし、甘い吐息を抑えられない。

溺れそう…。


「秀ちゃ、んっ…ぁ」

「英二…」


………?

秀ちゃんは、動きを止めたみたい……!?


「ひゃぅっ!」

「英二…すごい、濡れてる」

「や、やぁっ…触ら、ない…で!」


動きが止まったと思ったら、
秀ちゃんは今度は下着越しに、あたしの…秘部に触れてきた。


下着越しなのに。

直接じゃないのに。

身体が…ビクビク震える。


「やめ、やめ……っ!」

「どうして?」

「だってぇ………はぁん!」


――感じちゃってどうしようもないから。




  −−−




「秀ちゃ…お願…ぃ……!」

「ヤダ」

「どうし…っ!」

「英二、俺になら何されてもイイって言っただろ?」

「イジ…ワル……」

「そう、俺イジワルなんだ、ごめんな」

「ひや…あっ、あぁ…」


身悶えする英二に、俺はもう理性が飛んだ。

ズボンを下着ごとずらし、中に指を差し込んだ。


「やあぅっ!」

「英二…もうグショグショ」

「ヤダ、やめ、待って……!」

「待たない」

「うぅ〜…んっ!」


指だけで、こんなに感じるなんて。

でも、これから自分もこの中に入るのかと思ったら、

――武者震いがした。


「こんなに濡れてれば、もう二本入るかな?」

「イヤ、待って、ま……あぁっ!」

「大丈夫?でも、こうしておかないと…後が辛いから」

「秀ちゃん…痛っ…」

「もう少しで慣れてくるから…」


そう言って、指を中で掻き回した。

ぐちょぐちょと水音が響く。


…まずいな、俺も辛くなってきた…。

でも、もう少し。

傷付けちゃいけないから…。


「はぁっ…しゅう…ちゃ……」

「もう一本だけ、な…」

「まだ、入るの…?」

「…後のほうが、もっと大変だから…」

「うん……んんっ」


もう一本指を増やすと、英二は喉元を仰け反らせた。


……俺もそろそろ、限界。


中の指の動きを早めた。

そのとき…。


「…あっ!あっ!そこ…!」

「ここが、感じるのか?」


英二の声色が突然変わった。

俺は、指を中で曲げてその点を中心に攻め立てた。


「あっ!やぁっ!はん……やっ!」

「どう?イキそう?」

「秀ちゃん、待って!まだ、ぁ……やっ!」


指に強い締め付けが加わったかと思うと、
その後暫く痙攣のように収縮が繰り返された。

指を全てズルンと引き抜く。

英二は、目を閉じて、頬を赤く紅潮させ、
大きな快感の余韻に浸っていた。

その様子を見ているだけで、
俺の分身は大きく硬くなっていくのが分かった。


英二が、好きだから。


今すぐにでも手に入れたい。

共に快楽を求めたい。


俺は、ズボンを下ろすと、
英二の上に覆い被さった。

目を開けた英二は、少し泣いていたようだった。


「英二…大丈夫?」

「大丈夫……遠慮しなくて、いいから」

「……」

「あたし、秀ちゃんにだったら、ほんと何されても…いいから」

「英二…っ」


俺は、意を決して、
自分のモノを英二の秘部に宛がった。

そこは十分に濡れていたものの、
中に入るには抵抗があった。


「英二…力、抜ける」

「う、うん…」


俺は、英二の腰を掴むと、
ぐっと力を入れて押し込んだ。

少し、先が入る感触がした。


「あ、ああ…あ…」

「英二…大丈夫?」

「んっ、ふ……」


苦しそうな声を出す英二を見ると、自分の親指を噛んでいた。

痛みを押し殺しているのか。


「英二、俺の背中に、爪立ててもいいから」

「秀、ちゃん…あっ」

「……痛い?」

「ちょっと、だけ。ちょっとだけだから…」


英二はそうは言ったけど、それは俺に心配をさせないためだと判った。

初めてだし、やっぱり辛いのかもしれない…。


「英二、無理はするなよ…」

「大丈夫、大丈夫だから……う…」


背中に、爪が食い込むのが分かった。

それが、英二の痛みの強さを物語っていた。


「しゅう…ちゃ……うぅ…」

「本当に…大丈夫、か?」

「だい…じょう…ぶ、あぁぁっ!」


大丈夫とは言ったものの、
英二は俺が腰をほんの少しずらしただけで、大声を上げていた。


「英二…暫く、このままでいるから…」

「ん……」


とりあえず、俺は体を動かさないことに決めた。

今は、英二が痛みを感じなくなるようにすることが先着だ。


「英二、ゆっくり、息吐いて…」

「はぁっ、ハァ…はぁ……」

「そう…その調子」


息を吐くと同時に、ほんの少しだが、
俺を締め付ける英二の力が弱まった気がした。

余分な力が抜けたのだ。


本当は今すぐにでも身体を動かして、
気持ち良くなりたいという気持ちもあったが…。

それよりも、英二のことが、大切だから――…。




  −−−






消えそうな意識を保ってくれたのは、秀ちゃんの優しい声。

秀ちゃんの声を聞くと、安心する。

そこにいるって。

離れていってないって。

それだけで、あたしは随分救われた。

痛みは取れないけど、身体が少しずつ、
秀ちゃんの事を受け入れていくのが分かった。


「秀ちゃん…」

「ん?」

「いいよ、動いて…」

「…本当に?」

「うん。大丈夫…」

「…分かった」


ズッ、とあたしのなかの秀ちゃんが動く。

瞬間また激痛が走ったけど、さっきよりは随分ましだった。

秀ちゃんが、あたしの中に馴染みこんできてるのかと思うと…
なんともいえないけど、嬉しくなった。


「…っく……あ…」

「英二…大丈夫?」

「全然平気…いいよ、もっと動かして…」


全然平気なんて、ウソ。

本当は、凄く痛かった。

でも、早く秀ちゃんと気持ち良くなりたい。

一緒のものを感じて、一緒に幸せになりたいと思ったの。


痛さなんかよりも、繋がることの出来ないことのほうが、
辛いと思うんだ。


「ひぃゃ、は、あ……!」

「中、スゴイ熱い…エージ…」

「しゅぅ、ゃん…はっ…あぁっ!!」


気付けば、痛みの中にも快感を感じるようになっていった。

相変わらず結合部分からは切り裂くような痛みが来るけど、
どこかには、また気持ち良さがあったんだ。

もっと秀ちゃんを感じたい。

そう思ううちに、身体が無意識に締め付けを強くする。

痛みも来るけど、それ以上に気持ちが良いし、嬉しい。


「しゅうちゃ…ぁん、キモチ…イイ…」

「英二…痛く、ない?」

「もう…ほとんど平気…、だから…」


あたしが言い終える前に、秀ちゃんは腰の動きを早めた。

激しい刺激に、思わず背中が仰け反る。


「ひぁ!あっ!やぁ…しゅ、ぁん!あぁ!」

「エイジ…英二!」


上擦った声が治まらない。

抑える余裕なんてなかった。

とにかく…頭の中は秀ちゃんだけで一杯になった。


秀ちゃんと、幸せで、イッパイ。




  −−−




気付けば、身体が無意識に動いていた。

意識はちゃんと持っているつもりなのに、精神の抑制が効かない。

本能のままに動いて。

成るがままに英二を感じようと動いた。

身体の中の何かが、出口を求めて追いやられてくるのが分かった。


「英二…ぅっ、俺、そろそろ…」

「あっ、あたしも…もう、ふぁっ…」

「中に出して…いいのか?」

「いいよっ!秀ちゃんの…全部が…欲しい…やぁっ!」

「んっ…!」


瞬間、強い締め付けに反応して、俺は全てを放った。



心地良い開放感。

朦朧とする意識。

下を見ると…力無く萎えている英二。


「英二…抜くよ」

「うん……ひゃっぅ」


俺はモノを英二の中から抜き出すと、
英二の横に寝転んだ。

二人で天井をボーっと見上げて、話をした。


「…ついに……ヤっちゃった、んだね」

「ああ……」

「二年も同じ家に住んでたのにね…」

「そうだよなぁ…」

「……コドモ、出来るかなあ?」

「さあ、一回ではどうかな…」


そういうと、英二はごろんと身体を反転させて、
嬉しそうな表情でこっちを見てきた。


「それならさ!」

「?」

「また、……出来るよね?」

「!」


そんなことを言う英二を、俺は腕で引き寄せた。

そして、唇同士を合わせた。


「お望みなだけ」

「えへへ…」


幸せだ、と思った。

一つの幸せを、二人で感じているというのが。

幸せを感じることが出来るのが、幸せなんだ。



そんなことを考えながら、俺は目を閉じた。

嬉しい知らせを受けるのは、それから3ヵ月後――。
























花嫁物語第四弾!
結局裏々来ちゃったよ。(滝汗)
始めの二人の会話書いて、
「夫婦ー!夫婦ー!黄金夫婦ー!!!」
と叫んだ我。実際夫婦なんだからおもろいわな。 ̄▽ ̄*
桃リョも書きたいなあ…何しろやつらは結婚前に(以下伏せ)

ラブラブすぎて書くのも読み返すのも苦痛なほどだぜ。
まあ、そうでなきゃ大菊じゃないしな、うん。
微妙に初々しいのもなんとも言えず。
何気に秀一郎、奥手か?(笑)
いや、黄金ってチューまでは速そうだけど
何気にその後が遅かったりしてね、って話。
だって秀一郎がオクテ(以下略)

最後の一文はね、子を授かったってことですよ、うん。
何気にこれは〜風の行方〜の最後に二年経つまでの間の話らしい。


2003/04/22