* 嫌いだよ。 *
「ねぇ、シュウ」
「ん?」
笑顔で振り向いた貴方に、
私はいつもには無い真面目な顔をして。
正面見据えて、言った。
「大キライ」
「嘘」
「……」
間髪入れず切り替えした貴方に、
私はただ眉を顰めるしかなくて。
「…よくそんな自信有りげに言えるね」
「でも、ホントだろ?」
「む……」
それ以上は何も言い返せなくて、
私は不機嫌そうなふりをしたまま
無言でシュウの胸の中に飛び込んだ。
「意地悪なシュウなんて嫌いだー」
「俺も、嘘吐きは嫌いだな」
顔を上げると、そこに見えるのは不敵な笑み。
私がどんな表情をしても、向こうは只管に笑顔で。
「……ゴメンナサイ」
「分かれば宜しい」
胸に顔を押し付けたまま、そう言った。
謝罪の言葉の返事は、
背中に回された手と一緒にやってきた。
好き。すき。スキ。
怖くなるほどのめり込む。
貴方の胸に、溶け込んでしまいたくなる。
いっその事、ホントの気持ちで
『嫌いだよ』なんて言えたらな。
そんなことを心の中でこっそり考えながら、
温もりを全身に感じてそっと目を閉じた。
いっその事嫌いになれたらいいのに、なんて考えたこと有りませんか?
(こっそり大稲設定)
2003/04/20