* 呆れた笑顔で *












「森君、今日誕生日なんだって?」


朝登校してきた森君に、

おはようの挨拶よりも先にそう訊いた。


「ああ、そうだよ」


一瞬驚いた顔をしていたけど、

すぐに返事を返してくれて森君は座った。


「よく知ってたな、今日だって」

「へへん。その辺の調査は抜かりないって!」


だって、好きな人のことだし?

とは、言えないけどね。えへへ。


「でもさ、4月生まれっていうと大抵の人より年上じゃん?」

「確かにな。でも、オレって頼りないから全然…」

「そんなことない!」

「――」


森君の言葉に切ってはいるようにした私。

向こうは目を大きく広げて驚いている。


「森君は、肝心なところで頼りになる!と思う!」

「…最後に付け加えられたのが気になるけど」

「違ーう!本当に頼りなくなくないんだから!……アレ?」

「それって…つまりは頼りないってことか?」

「ぉわ、間違えた!違う!そのまた反対!」

「…意味分かんねー」


森君は、楽しそうに笑った。

なんだか、ジタバタしてる自分が虚しくなったけど、

喜んでくれたみたいだからいいや、とか思ってみた。


「ま、暫くは私の年上として頑張ってくれたまえ」

「その割には偉そうだけど?」

「頑張ってくださいましv」

「それもなんか……」


談笑している間に、時はどんどん進んだ。

いつも通りの会話で。

いつも通りの接し方しか出来ないけれど。


それでも特別な、貴方の誕生日。


「あれ、私おめでとうって言ったっけ?」

「さあ…言われたような…」

「忘れたからもう一回言っとく。ハッピーバースデー!!」

「お前な…」


苦笑いに近い笑顔だったけど。

少し呆れていたようにも見えたけど。


 「サンキュ」


その言葉だけで幸せ一杯になれた、貴方のバースデー。






















森君お誕生日おめでとう。


2003/04/18