* 月の終わり *

-the night with no moon- part.2











 大石………。

 大石……。



 『大石!』

 「!?」


突然誰かに呼ばれたように思えて、俺はガバッと体を起こした。
そこは…とても静かな場所だった。
広い野原のような、しかしどこかふわふわしているような。
暫く考えた後、自分が立たされている状況を思い出した。
もう、ここへ来てから何日も経っているのに、未だ慣れない。

ところで、さっきの声…。
周りを見渡しても、誰も居ない。


「夢…?」

夢にしては、妙にリアルだった。
なんというか、直接胸に語りかけてくるような…。

「……もしかして」


英二……?

自分の思い違いかも知れないが、
他に、何も考えられなかった。

英二が、俺を呼んでいる気がする。

自惚れでもなんでもなく、確信に近いものがあった。
英二が、俺を呼んでいる…。

「英二……」

何となく呟いたとき、俺の意識は
どこか違う場所へ飛んだ。



  ***



ここは…どこだ?
俺は一体……。

……ん?
まさか、あそこに居るのは…。


「…英二」

間違いない。
見間違えるはずもない。
あそこに居るのは…英二だ!

「英二」
「!」

もう一度呼ぶと、気付いたのか英二はこっちに向かって走ってきた。

「大石!!」

そのまま勢いで飛び付かれた。
夢でもなんでもない、確かな感触。
有り得ないはず、なのに何故…。

でも、再び会うことが出来たのは事実。
しかし、英二がもう死んだのかというと…違うようだ。

英二は俺の胸の中に顔を埋めて、
なにやら沢山叫んでいた。
自分の腕の中に居る存在が、
なんとも懐かしくて、幸せだった。

だからといって、俺が英二を向こうの世界に連れて行くわけには、
いか、ない。

「大石…なんで黙ってるの?」

俺には何も言う資格がなかった。
ただ口を詰むんで、目を伏せるだけだった。

「オレのこと…嫌いになった、の…?」

英二が泣きそうな顔で言う。
俺は否定した。

「英二のことは…大好きだよ。本当に。
 でも…一緒にはいられない」
「どうして!」

泣き叫ぶ英二に対し、俺は別れの言葉を告げるしかなかった。
辛いけど。
向こうも辛いのかもしれないけれど。

「サヨナラ、英二」
「待って!サヨナラなんて言わないでっ!!」

後ろから英二の声がする。
本当は、俺だって振り返って笑顔で抱き締めたい。

でも、俺にはそんな資格、ないんだ。


「大石…待ってよ!オレを…独りにしないでっ…!!」


俺だって、独りにはなりたくないよ。
でも…。

振り返らないまま、俺は英二から離れていった。

























擦れ違い大菊v(こら)
菊編と大いにリンクしてます。
お気付きの方もいらっしゃるかと思いますが。
幸せになれるのはいつの日やら〜。


2003/04/14