* 髪の毛切ったよ。 *
心機一転。
髪、切りました。
といっても、前髪はちょっと揃えただけ。
後ろも、ほんの少し短めにしただけ。
でも、自分としてはなんだか凄くすっきりした感じ。
鏡の前で、私は笑顔を作ってから出かけた。
よーし、進化後の私を見せてやる!
…とは言ったものの特に何も変わらず、
いつもの学校生活が始まった。
「おはよー」
「あ、おはよー」
クラスメイトとは何気ない挨拶を交わしたりして。
自分の机に鞄を下ろすと、早速友人の元へ向かう。
「おはよっ」
「あ、おはよ。ねぇねぇ、昨日のテレビ見た?」
「見た見た〜」
いつもの調子で会話は始まって。
そして喋り続ける。
何も変わらない日常。
私が髪を切ったという事実…。
誰も気付いていないようです。
そんなに微量しか切ってないかなぁ?
誰かしら気付いてくれてもいいと思うんだけど…。
『キーンコーンカーンコーン…』
「あ、また後でね」
「はいはい」
友人の元を離れ、自分の席に戻る。
そして、隣に座った男子生徒に声を掛けた。
「おはよ、森君」
「あ、おはよう」
「今日は天気がいいね」
「うん、そうだな」
…この何気ない会話だけど、実は幸せだったりする。
何を隠そう…私は森君に恋する乙女。
切っ掛けは覚えてないんだけど、いつの間にか好きだったのです!
友達に話すと、微妙な表情をされる。
確かに、森君って一見パッとしないタイプだけど。
でも、好きなものは好きなんだ!
人の価値観にケチ付けるなー!!
…と、いうわけで好きなのです。意味不明だけど。
ホームルームはそんなことを考えているうちに終わった。
…私の今日の目標。
誰かに、髪を切ったことを気付かれること。よし。
「ちょっと他のクラスに遊びに行ってこようかなー」
「行ってらっしゃい…あ、そうだ」
「?」
軽い足取りで机を発ったとき、呼び止められた。
振り返ると、森君は言ってきた。
「髪、切ったんだな」
「!」
私は、そのままフリーズした。
「…ん、切ってなかった?」
「いや、切った切った!いやーよく気付いたね」
言いながら、私は自分の席に戻ってすとんと座った。
「え、他のクラスに行くんじゃ…」
「いいのいいの!」
「……?」
不思議そうな表情を森君を他所に、
私は頬杖を突くと、にこにこ笑うのだった。
何でだろう。
大したことじゃないのに、好きな人に言われるだけで。
なんか、幸せだぁ。
特別な人に気付いてもらえると、些細な事もシアワセ。
2003/04/13