* プレゼント *
「………」
独り、机に肘を突いて一枚のコインを眺めては、
にこにことしている。
傍から見れば、よっぽど奇妙な光景であろう。
でも、幸せだから。
指で弾いて回してみたり。
止まったとき裏か表か当ててみたり。
掌に乗せたときの冷たい感触を味わってみたり。
たった一枚のコインで、こんなに幸せになれるなんて、不思議。
それもこれも、貴方に貰った物だから。
『悪い、100円貸してくれねぇ?』
『え?』
『頼む!必ず返すから』
『別にいいケド…』
そうして、私の手から貴方の手へと渡ったコイン。
翌日、今度は貴方の手から私の手へ渡ってきた。
『サンキューな』
どう致しまして、しか掛け返す言葉はなかったけれど。
渡される際に、不意に触れた手に心臓が高鳴ってみたりして。
その一枚のコインは、すぐお財布には入れず、
何故かポケットの中に入れられた。
たまに手の中で転がしたりして、存在を確認しながら。
冷静になって考えれば、
他のお金と交じらないために、
無意識だけど意図的に取った行動だったのかも。
未だに使う気にはなれなくて、
たった一枚だけ、大事に取ってある。
どんなものだって、貴方から貰えばプレゼント。
その瞬間から、大切な宝物になるんだ。
1ユーロコイン、お守りにされてます。
2003/04/06