* 見知らぬ君と *












桜が散り始めた4月上旬。

私は、青春学園に入学しました。

受験して入ったこの学校。

辺りを見回しても、勿論知らない人ばかり。

ふわふわと浮いているような、

何となく落ち着かない気持ち。

心を宥めながら、私は自分の席に腰を下ろした。


一年二組という札が掛けられたこの教室。

ここでこれから過ごすのかと思うと、

二日目になった今もドキドキする。


どんなことをするんだろう。

どんなクラスになるんだろう。

どんな人が居るんだろう。

不安はあまりない。

期待ばかりに、私は今を膨らませている。


席が近くのことはちょっと話したりして

仲良くなれそうな子も勿論たくさん居る。

でも、昨日軽く自己紹介をしたものの

まだクラス全員の名前は覚えてない。


「(まずは名前を覚えなきゃなー…)」


そう思って、クラス中をぐるっと見回した。


話をしている男子。

本を読んでいる女子。

色々な人がいる。



 「――」



その中で、一人、目が合った。


澄んだ目に惹かれて、私はそのまま目が離せなかった。

視線を奪われたまま固まっていた。


昨日全員入学式が始まる前に自己紹介をしたはず。

でも、こんな人、居たっけ…?


あ、もしかして、昨日遅刻してきて居なかっ……。



 「っ!?」



私は、ガバっと体を前に戻した。

顔が軽く火照っているのが判る。


突然、ウィンクされた。

なんの前触れもなく…。


まだ、名前すら覚えていないのに。

顔すら見たことなかったのに。


焦って名簿を確認して、漸く名前を確認する。


絶対に忘れない。

もう忘れることなんて出来ない。



  越前…リョーマ君。




入学二日目、早くも芽吹いた小さな想い。

これからどんどん、育てていこう。



 見知らぬ君と、目が合ったとき。

 私の恋は、そこから始まった。























ウィンクはサインですよね、色んな意味で。


2003/04/09