* ラッキー *












私は、社会が嫌いです。

理由は沢山あるけど、とにかく好きになれません。

先生御免なさい。でも駄目です。

絶対好きになれません。


「それじゃあ、皆さん終わりましたね?」

「(終わったよ、色んな意味でな!!)」


先生の声に、そんなことを心の中で叫んでみる。

今は、社会の授業中。

丁度小テストを終えたところ。


「(あーもう赤点だろうが0点だろうがなんでもくださいまし〜)」


まさかそこまで低いとは思わないけど。

とりあえず良い点は期待できないわ。

そう思ってプリントを提出しようとしたとき…。


「採点しますので、自分の3つ右の人に回してください」


……は?

まさか、生徒同士で採点するってやつ?

これ嫌いなんだよね、他の人に点見られるから。

しかもなんで隣の人と交換じゃなくて3つ右かなぁ。

とりあえず回さないと……ん?


「なにぃ!?」

「なんだよ」


なんと…私の採点者というのは、

私の片想いの相手、宍戸君。


「さっさとよこせよ」

「うわぁ〜…」

「…なんだよ」

「なんでもない、なんでもない!」



 う わ 。


なんか、突然緊張してきたぞ…。

だって、私のあの可愛げのない汚い字で

思いつかなくて適当に綴った解答が書いてあるのよ!?

これは、マジでまずいって。


「…宍戸君」

「ぁん?」

「…大目に見てねv」

「……全部バツにしてやる」

「あ、酷い!!」


ふんと一つ鼻を鳴らすと、

宍戸君は解答用紙に再び向かった。

顎を突いて、なんだかやる気なさげにだけど。


っと、私も採点しなきゃいけないんだよね。

あーよいしょよいしょっと…。


「オイ」

「はい?」

「これ、どういう意味だ?」


指差されたところには、

分かりもしないところを振り絞って無理矢理に書いたところ。


「あ、それバツでいいから!どうぞ!!」

「…意味わかんねぇ〜」

「うるさい!」


う〜ん。

これは、テストの結果は期待できないね。

でも、これだけでもう十分だわ。


予想外なところで、関わりが持てたことでラッキー。


これは、もうテストのほうからツキが離れるかもね。

まあ、この際どうでもいいけどー。



「終わった」

「あ、ありがと」

「じゃあ、一応確認するけどよ」


そうして、採点について細かく説明してくれた。

宍戸君って、思ってたより…マメな性格なのかも。

そんな答え合わせの最中も、

並べられた肩の高さの違いにドキドキしてみたり。


なんか私って、ラッキー?



「じゃあそういうわけで」

「うん。ありがとー」


受け取った答案用紙を見て、何故か微笑んでいる自分が居て。


先生。凄いです。

私なんだか社会のことが好きになれそうです。

これからはもっとがんばろ。


ところで、点数は……


 あら?



「――」


ペラリと捲ったテストの表。

そこに書いてあった数字に、思わず笑ってしまった。


予想外に良かったとか。

平均は超えてるんじゃないかなとか。

そんなことを思う前に、ストレートに目に入ってきた数字。



 『77』



私って、なんかラッキー?


そう思うと、笑えずには居られなかった。
























私ってば、本当にラッキー。


2003/04/03